【東京五輪・夢の重荷】(03) サッカーくじで皮算用

「昨年度の売り上げは、過去最高の1107億円を記録した」。13日、東京都内のホテルで開かれたサッカー籤『toto』の助成金交付式。主催者の日本スポーツ振興センター理事長・河野一郎(68)は、6日前に同じ会場で開いた新国立競技場の有識者会議から一転、余裕の表情を浮かべていた。好調な売り上げから、オリンピック選手の強化費や地域スポーツ振興に向けられた昨年の助成額は、総額199億6000万円。だが、これも来年以降は新国立の煽りを受けるかもしれない。「宜しく頼むよ」。新国立の工事契約が初締結された9日、文部科学相の下村博文(61)は衆議院議員の馳浩(54)に声をかけた。馳は五輪相の遠藤利明(65)と共に、籤改正を議論してきた超党派スポーツ議連のメンバー。その時点で想定された総工費2520億円の内、500億円余りしか財源が確保できていない状況で、下村が馳に託すのは、整備に充てる籤の売上割合を5%から10%に引き上げる法改正だ。「10%とプロ野球はセットだった」。3月から準備してきた馳は語る。当初はプロ野球を対象に加えることで、籤の売り上げの2割アップを目論んでいた。だが、八百長事件の記憶が消えない野球界は首を縦に振らない。「丁寧に進めるしかない」。当初の構想が崩れる中で、遠藤と馳は10%引き上げを先行させる腹を固めている。

「パイが限られる中で影響が出なければいいが」。日本オリンピック委員会の幹部は心配顔だ。籤の売り上げからは、先ず新国立財源が引かれ、更に配当金や諸経費を引いた収益の3分の1が国庫に納付され、3分の2がスポーツ振興に使われる。籤の売り上げが増えずに新国立に充てる割合だけ10%に引き上げれば、自ずとスポーツ振興に回る分が削られる。「現場との感覚のズレを感じる」。会員1200人の浦和スポーツクラブ理事長・小野崎研郎(53)は、新国立の迷走に失望を隠せない。文部科学省の音頭取りで全国に作られてきた総合型地域スポーツクラブに対する籤助成は、東京五輪決定以降に半減した。「2500億円もかかる競技場を造ることが、本当にスポーツ振興と言えるのか?」。15日、世論の批判を受け、政府は新国立の計画見直し検討に乗り出した。ただ、財源捻出の妙案は乏しく、籤頼みの空気は強い。「法改正は5%を10%に書き直すだけ。今国会で成立も可能だ」(文科省幹部)。皮算用が独り歩きしている。 《敬称略》


≡日本経済新聞 2015年7月16日付掲載≡


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テーマ : 東京オリンピック
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