【ゆうちょ銀行&郵便局の株式上場が必ず失敗する理由】(01) 「国が株を持ち続ける限り、ゆうちょ銀行に未来は無い」――元財務官僚・高橋洋一が怒りの警告!

小泉純一郎内閣の下で郵政民営化法案が成立してから10年。その間、政権に就いた民主党が当初の民営化案を“改正”、再び政権の座に就いた自民党もこれを容認し引き継いだことで、郵政民営化の姿は当初と比べて大きく変貌した。郵便・貯金・簡保の3大事業を展開する巨大企業が、世界にも類を見ない親子上場を果たすことで、国民にどんなメリットを齎すのか? 元財務相官僚で郵政民営化の制度設計に携わり、当初案とは変質した民営化に異議を唱える、嘉悦大学の高橋洋一教授に話を聞いた。

私が現在の郵政民営化に反対しているのは、民主党政権時代に中身が変わった“民営化案”にノーと言っているのであって、変更前の民営化計画に反対しているのではありません。小泉政権時代に私が纏めた郵政改革の設計プランの骨組みは、4分社化です。日本郵政株式会社を持ち株会社にして、その下に郵便事業会社・郵便局会社・ゆうちょ銀行・かんぽ生命をぶら下げる。国は郵便事業会社と郵便局会社の株式は保有しますが、ゆうちょ銀行・かんぽ生命の2社の株式は2017年9月までに完全売却する案だった。しかし、私が描いたこの設計図は、民主党が民営化反対を党是に掲げる国民新党と連立して政権を握ってから、変更されました。日本郵政の下に、郵便事業会社と郵便局会社を一括りにした『日本郵便会社』を作り、ゆうちょ銀行・かんぽ生命と共にぶら下げる体制にしました。4分社化から3分社化に変わった訳です。子会社が4社から3社になったのは、致命的ではありません。日本郵便は政府が間接的に株を持つので、経営上の問題が多少ある程度です。一番大きな問題は、ゆうちょ銀行・かんぽ生命2社の株を政府が間接的に持ち続けるという点にあります。ゆうちょ銀行・かんぽ生命の株式を全て売却し、2社を完全民営化する当初の案と180度変わってしまった。

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「ゆうちょ銀行・かんぽ生命の株式は今度上場されて、国の保有ではなくなるじゃないか」と思う人がいるかもしれない。しかし、2社は日本郵政の子会社で、日本郵政の株式は、現在の民営化法では国が3分の1以上の株式を保有することになっている。しかも、ゆうちょ銀行・かんぽ生命の株は日本郵政が当面50%程度持ち続け、前述のように、日本郵政の株式は国が持ち続ける二重構造になっている。また、ゆうちょ銀行・かんぽ生命の株に関しては、「その全部を処分することを目指し、できる限り早期に処分する」と法律の文言にはあるが、完全売却の期限は切られていない。つまり、金融2社は上場しても国の支配下にあり続ける可能性が高く、株式を公開しても民間企業になったとは言えないのです。考えてもみて下さい。国が銀行の株を持つというのは、どういう場合ですか? 国から公的資金を貰う時でしょう。公的資金を注入されるのは、銀行が破綻に瀕した時だけです。ゆうちょ銀行の株式を国が持ち続けるとしたら、それは国営銀行です。民間の金融機関ではない。抑々、“民営化”という言葉自体が自己矛盾しているのです。今回のゆうちょ銀行の上場では、国民に対する金融サービス向上には決して繋がりません。ゆうちょ銀行は上場企業になれば当然、投資家から株主利益向上を求められる。すると、ゆうちょ銀行は成長戦略を展開すべく、業務拡大できるよう声を上げるでしょう。しかし、リスクを抱えながら業務を展開している民間金融機関が、国を後ろ盾に潰れる心配の無いゆうちょ銀行の業務拡大に猛反対するに決まっています。上場しても、民間とゆうちょ銀行の鬩ぎ合いが延々と続くだけで、利用者にメリットのある商品やサービスは提供できないでしょう。




私は小泉内閣の時、竹中さん(平蔵氏・経済財政金融担当大臣=当時)から「世界に通用する民営化案を作ってくれ」と言われて、郵政事業の民営化を検討しました。郵便局がゆうちょ銀行・かんぽ生命の代理店になり、郵便局はこの2社に代理店手数料を支払う立て付けにする。この方式だと、利用者は今まで通りのサービスを受けられる。制度は変えるが、使い勝手は変わらないという訳です。そして、ゆうちょ銀行・かんぽ生命2社の経営が安定する10年後に2社の株式を全て売却し、完全民営化に移行する青写真を描いたのです。現在の郵政民営化が続けば、日本郵政グループの中核であるゆうちょ銀行は何れ破綻する。繰り返しますが、国が日本郵政を通じてゆうちょ銀行の株式を保有し続ければ、民間金融機関から“肥大化阻止”の声が上がり続け、いつまで経っても企業貸付等の新規業務を展開することができない。そうなると、高度な資産運用のできるファンドマネジャーがいないゆうちょ銀行は、集めたお金を国債で運用することしか利益を上げる方法は残されていないのです。ところが、国債は世の中で一番金利が低い商品。そんな低い収益の国債だけの資金運用で、どうして儲けることができますか。長期に亘って儲けることはできないのです。貸出への業務拡大ができなければ、投資家からソッポを向かれる。国債の運用だけではジリ貧になる――。そうなると業績不振に陥り、軈てゆうちょ銀行は破綻するしかない。いつ破綻するかはわかりませんが、論理的にはそうならざるを得ない。

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私が設計した“民営化”に戻せば、ゆうちょ銀行の未来も拓けるとは思いますが、それは政治マターの話になる。今の政治家で、この問題に取り組む人はいません。真の民営化をライフワークにするには、政治家として膨大なエネルギーが必要なのです。そんな票にも繋がらないことをやる政治家がいるとすれば、小泉ジュニアだけでしょうね。“親の仇を討つ”ではないですが。彼は民営化をよく理解している。民営化で、郵便局のサービスも随分良くなった筈です。切手を買って領収書を出すようになったのは、民営化後からですよ。昔は無かった。「何で出さないといけないのか?」と反発がありましたが、私は企業として当たり前のことだからと譲りませんでした。上場株は買うべきか? 短期的には“買い”かもしれませんが、長期保有はお勧めません。何せ、将来の展望がありませんから。手を出さないほうがいい。ゆうちょ銀行・かんぽ生命の株は、ファンドや銀行・生保等の機関投資家が保有し続けるでしょうから、浮動株は少ない筈です。だから、下手をするとババを掴まされる。しつこいようですが、政府が株を持っている民間銀行は世界にありません。あったら教えてほしいですね。


キャプチャ  2015年7月号掲載


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テーマ : 郵政民営化
ジャンル : 政治・経済

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