【広告戦争・デジタル空間の覇権を巡る人脈と金脈】(01) デジタル広告の巨人『Facebook』――「いいね!」帝国、日本市場の大誤算

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6月下旬。東京都港区六本木にある『Facebook』日本法人のオフィス。世界14億人のユーザーを繋ぐネットワークを支えるIT企業の日本拠点だ。明るく開放的なフロアでは、“オープン&コネクテッド”という社是の下で約70人が働いていたが、彼らにはどうしてもオープンにできない秘密があった。オキシジェン――。英語で『酸素』を意味するこの単語は、水面下で交渉中のある重大なプロジェクトに付けられたコードネームなのだ。それはズバリ、日本最大の顧客数を誇る通信キャリア『NTTドコモ』との包括的な業務提携だ。彼らが狙っているのは、ドコモが抱える約6659万人のユーザー。自動的にFacebookユーザーへと“塗り潰す”為の秘策が練られている。新規のスマートフォンに予めアプリを埋め込んでもらえれば、これまで手が届かなかった50代より上のシニア・シルバー層を、毎年100万人単位で取り込める筈だ……と算盤を弾く(iPhoneは対象外)。「Facebookはドコモへの“手土産”として、彼らの音楽やアニメコンテンツをFacebook上で共有してもらうという新機能を既に約束しています」(業界関係者)。それだけではない。実は、赤ん坊からお年寄りまであらゆる世代に接点を持つ『リクルート』とも、若年層のFacebookユーザーの増加を目的に、就職活動サイト『リクナビ』等との提携に乗り出しているのだ。2004年にマーク・ザッカーバーグが創業したFacebookは、競合企業に先んじて、スマートフォンという新しいデジタル空間へサービスを移行することに成功した。スマートフォンの小さな画面上に流れてくるタイムラインは、今や多くのグローバル企業たちが挙って買い求めるデジタル広告の一等地に変貌した。2014年通期の売上高は約124億ドル(約1兆4880億円)となり、直近の時価総額は日本円換算で30兆円を超えている。一見すると順風満帆だが、日本に目を向けると違う姿が浮かび上がる。6兆円を超える世界第2位の広告市場において、思いも寄らぬ3つの誤算に見舞われているのだ。

1つ目が、国内で2000万人を超えた辺りから急速に勢いを失っている、ユーザー数の伸びだ。公式の月間ユーザー(MAU)数は現在2300万人と発表されているが、人口に対する普及率は20%程で横這い状態。しかも、昨年秋に放映したテレビCMが惨敗だったことは、社内でも共通認識になっている。四半期毎に20%近い高成長を続けてきた広告売上高も、この4~6月期は約120億円と大幅に目標値を下回ったようだ。「このままのユーザー数なら、今後は一般企業と同じような成長スピードになる」と、業界関係者は危惧する。2つ目が、組織の軋みだ。2013年5月に初めて日本代表の座に就任した岩下充志氏が、今年1月には休暇を取得し、営業担当幹部と共に3月末に会社を去った。「風通しの良さを重視している会社のカルチャーに合わず、最後は本社から降格を迫られた」(同社関係者)のが原因というが、十分な挨拶回りも無い急な“更迭”に、取引先には動揺が走った。3つ目が、“ナショナルクライアント”と呼ばれる大手企業や、そこに寄り添う大手広告代理店との信頼関係の悪化だ。過去、Facebookは「企業側が『いいね!』を多く集めることで、ファンとコミュニケーションが図れる」と説明してきた。その為、企業側は「いいね!」を集める広告に投資をしてきた。ところが、昨年からアルゴリズムの変更に依って、企業に依る投稿の表示頻度が激減、時間とカネが水泡に帰した一部企業は不信感を抱いた。見誤ってはいけないのは、ありとあらゆる個人データを大量に蓄積しているFacebookは、極めて良質なデジタル広告を出稿できる随一のプラットフォームであるという点だ。年齢や性別・興味・関心等に選り分けてターゲッティングをした場合、狙った通りの人物像に広告が届けられる精度は96%超と驚異的な正確性を誇る。シリコンバレーの本社には世界トップクラスのエンジニア集団が揃っており、アドテクノロジー(広告技術)の分野では誰もが注目する先端企業である。ただ、それだけで勝者が決まらないのが広告産業の複雑さだ。国毎のメディアの特性・国民の趣味嗜好、そして商習慣を無視すれば、最先端のテクノロジーも無用の長物だ。人々のライフスタイルも目まぐるしい速さで変化する。当のFacebook自身も、「3年後には、傘下のInstagramの国内利用者数が、本家Facebookを超える」と試算しているのだ。デジタル空間の覇権は誰の手に渡るのか? 王者すらも“酸素(オキシジェン)吸入”に頼らざるを得ない今、明日を読めぬ世界が広がっている。




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日本のインターネット広告費は、2014年に初めて1兆円を超えた(電通調べ)。新聞・雑誌・ラジオの広告費の合計を疾うに追い抜き、将来的には約2兆円のテレビ広告を抜くと見られている。とはいえ、デジタル広告業界には新旧プレイヤーを織り交ぜた複雑な商流が絡み合い、その業界構造を把握することすら簡単ではない。それをひ紐解く上で、業界人が手放さない“地図”がある。それが、2010年にアメリカのコンサルティング会社『LUMA Partners』が発表した『カオスマップ』だ。毎年更新されている上、今では日本版を含めた複数版が広まっている。中身を見れば複雑怪奇、“混沌”の言葉をそのまま表しており、とても一筋縄で捉えられるものではない。そこで、本誌はカオスマップを冒険地図代わりにして、そこに犇めく企業や経営者等に1つひとつインタビューをして回った。真の業界地図を描くにはどうすればよいのか。右図に示すのが、本誌なりの簡潔な“解”である。先ずは、広告の発注元である広告主を左端に置き、最終的に掲載される掲載媒体を右端に置く。カネの流れは左から右に向かい、表記こそしていないが、その対価として膨大なデータが提供される。聳え立つ総合広告代理店やインターネット専業代理店。更に『メディアレップ』と呼ばれる、複数の媒体の総口となって代理店側と広告の交渉をする業者もいる。アドテクノロジーの発達に依り、デジタル広告は複数のサイトに纏めて出稿することができるようになった。例えば、ヤフーやグーグルで広告を出せば、そのネットワークを通じて複数の媒体に広告が次々と表示される。『リターゲッティング』と呼ばれる、顧客データを基に追跡型の広告を打つ業者もいる。こうした広告枠を超高速で売買できる取引システムがある。聞き慣れない言葉だろうが、広告発注側のシステム『DSP』と受注側のシステム『SSP』というプレイヤーである。“出口”となる媒体も様々だ。FacebookのようなSNSから、『スマートニュース』のようなスマートフォンのニュースアプリ・動画サービス等がある。犇めき合う無数のプレイヤーは、どんな素顔をしているのか? 本誌は、其々の分野でキラリと光る主人公たちに光を当て、混沌とした業界で奮闘する人々の物語を紡いでいきたい。


キャプチャ  2015年7月11日号掲載


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