【東京五輪・夢の重荷】(05) “特権”がのしかかる

6月最後の日曜日、買い物客で賑わう東京都港区六本木の『東京ミッドタウン』で歓声が上がった。全日本空手道連盟が開いたPRイベント。模擬試合で前歯が欠ける真剣勝負を披露した植草歩(22)は、「今回は本当にチャンスなんだと感じる」と人垣のできた会場を見渡した。国際オリンピック委員会(IOC)から東京に認められた追加種目の提案権。9月の決定に向け、最終選考に残った8競技の期待は膨らむ。中でも、五輪入りが悲願の空手の鼻息は荒い。プロモーションに5000万円を投じ、JR車内や渋谷のスクランブル交差点に面した大型ビジョンにCMを流した。来月の全日本少年少女大会の参加賞で作製したTシャツ2500枚は東京組織委員会からレッドカードが出てお蔵入りとなったが、世界空手連盟事務総長の奈蔵稔久(69)は「これから各国の大使館も回りたい」と意気込む。尤も、この熱意を選ぶ側が100%受け止めてくれるかは読めない。今月1日、組織委との会合で来日したIOC副会長のジョン・コーツ(65)は改めて強調した。「追加種目はIOCが定める選手数1万500人、種目数310の上限枠の外だ」。ある組織委幹部はこう受け止める。「IOCは1銭も負担してくれないということ」

営業開始から半年で15社と契約したマーケティングは五輪史上最高額を更新する絶好調ぶりだが、招致時より大幅に膨らむ見込みの大会運営費に組織委上層部の危機感は強い。4月からは、職員の名刺もコピー機で印刷するようになった。コスト意識は追加種目選びでも例外でない。種目が増えれば、会場や輸送、宿泊などが上積みされる。先月3日、東京都内の講演で組織委会長の森喜朗(78)は、「野球・ソフトボールは間違いなく切符が売れる。しかも、スタジアムも造らなくていい」と得意のリップサービスで踏み込んだ。追加種目が直接、組織委の収入に繋がるのはチケット売り上げだけだ。野球の日本戦なら4万~5万人の動員が確実、加えて野球人気の高い韓国や台湾からも集客が期待できる。「招致の際に『約束してないものまで背負わされた』と言えるかも」(組織委幹部)。新国立競技場計画の迷走も影を落とし、開催都市の“特権”と見られてきた追加種目選びも、微妙に様相が変わりつつある。 《敬称略》 =おわり

               ◇

山口大介・岩村高信・舘野真治・戸田健太郎・鱸正人・大元裕行・吉田啓悟が担当しました。


≡日本経済新聞 2015年7月18日付掲載≡


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テーマ : 東京オリンピック
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