【学校給食に中国食材】(中編) 杉並区は中国産使用を中止、調査は全国へ!…全国政令指定都市を独自調査

前号発売翌日、朝刊各紙には「給食の中国産食材、東京・杉並区が使用中止」の文字が躍った。本誌報道を受け、東京・神奈川では学校給食での中国産使用を見直す自治体が相次いでいる。ところが調査対象を全国に広げると、中国産使用率は地方ほど高かったのだ。 (奥野修司+本誌取材班)

前号では、東京都と神奈川県68全市区の「学校給食で使われる中国食材」に関する独自調査の結果を発表。学校給食でいかに多くの中国産食材が使われているかを詳しく報告した。この本誌の警鐘を受けて、中国産使用の見直しを検討する自治体が出てきている。真っ先に動いたのが、東京都の杉並区だった。前号の発売当日の10月8日、区立小中学校65校の学校給食で「当面、代替可能な食材については、中国産食材を使用しない」と発表したのである。そもそも杉並区教育委員会は、アンケート取材に「食材の産地を把握していない」と回答しなかったが、本誌調査で17品目の使用が判明していた。杉並区の田中良区長は教育委員会の怠慢についてこう述べる。「各学校の校長は把握しているが、教育委員会事務局としては、全ての詳細は把握していないと言いたかったのでしょう。言葉足らずだと思います。ただ、給食は各学校の校長の責任の下で栄養士が中心になって献立作成・食材調達を行っており、私自身も個別的な実情は把握しておりません」

だが今回の素早い決定は、本誌報道を目にした区長の「食材の安全を確保するとともに、保護者の不安感を払拭するべく、冷静かつ早期の対応が必要との考えを教育委員会に伝えました」というトップダウンの意向が働いたという。一方、学校給食を管轄する杉並区教育委員会学務課は電話取材にこう答えた。「国産に替えられるものは替えていきますが、完全にやめるのは無理です。今回の決定は、保護者が過剰な反応をしないようにするのが目的。保護者に説明して不安を払拭したら、中国産使用を再開する方針です」。食の専門家や栄養士・調理員で組織する『全国学校給食を考える会』顧問の野田克己氏は、憤慨する。「杉並区の対応が見せかけだとすればひどいですが、トップの決断の可能性を示したという点では興味深い。やろうと思えば、一時的にはすぐにでも学校給食を国産化できるということです。自治体のトップや責任者次第では予算を増やすこともできる」

では、杉並区以外の自治体の反応はどうか。あらためて調査した。




前回、煎りごまや味付きたけのこ・いちごジャムなどを使用していると回答した神奈川県小田原市は「やむを得ず外国産の食材を使用する際には、中国産物資の納品や使用を控えるよう、栄養士や納入業者に通知した」と回答した。いちごボールゼリーの使用が本誌調査で判明した東京都立川市も、「今回指摘された“いちごボールゼリー”は10月8日より中国産食材が除かれたことをメーカーに確認した」。一方、中国産食材は不使用と回答したが、本誌調査で青ノリ・アサリ・かんぴょうなどの使用が発覚した東京都大田区。「当面、代替可能な食材については、中国産を使用しないこととした」と回答した。他にも野菜を中心に10品目以上使用していた神奈川県南足柄市、9品目を使用していた東京都足立区など、本誌報道後に“中国産を使用しない”方向に舵を切った自治体は13市区あった。残念なことに反省の無い自治体もある。新宿区・世田谷区・町田市は、本誌調査で中国産食材の使用が15品目以上確認されたにもかかわらず、「原則、国産のものを使用している」と今回も主張した。

こうした自治体の動きを、東京都の舛添要一知事はどう見ているのか、定例会見で尋ねてみた。

――学校給食に多くの中国産食材が使われている現状をご存知ですか?
「中国から入ってくるものがすべて毒にまみれているというのはどうかと思う。それぞれの区市町村が適切に検査して対応していただければいい」

――中国産食材の使用を制限する予定はありますか?
「中国産食材で食中毒が起きたら問題だが、食の安全は区市町村がしっかりやるだろうから信頼したい」

木で鼻を括ったような答弁は、中国産食材の危険性に対して責任を持って取り組むつもりがないからではないか。また、横浜市を筆頭に、多くの自治体で中国産食材を使っていたことについて、神奈川県の黒岩祐治知事は電話取材にこう語った。「今、神奈川県は、最先端の医療・技術の追求と“未病を治す”を融合させようとしています」。“未病を治す”とは、将来、大病にならないように、病気になる前から体調に気をつけようという考え方。「未病を治すために大事なのは食です。それには子供の頃からの食習慣が大切ですから、学校給食は地場産の食材を目指しています」。もっと県下の給食の実態に目を向けるべきだろう。学校給食に関しては各市区町村の教育委員会が所管している。舛添都知事も黒岩県知事も「各自治体で適切に判断すべき」という姿勢にこだわった。しかし、自治体の首長であれば、関係所管を飛び越えて対応を指示するような責任ある態度を取って欲しい。

では、全国で学校給食に使われる中国産食材はどれほどあるのか。今回は全国政令指定都市20市に広げて、アンケート調査を実施。表中の《使用している中国産食材と代表的なメニュー》《中国産食材を使用する理由》《中国産食材に関する安全管理の取り組み・検査体制》は、いずれも自治体の担当課からの回答である。今回も前回同様、編集部で各自治体や学校のHPなどを調べ、《編集部調べ》としてまとめたが、さいたま市を除けば、アンケート内容と大きく変わらないところが多かった。さいたま市以外の政令指定都市では、栄養士が献立を立てても、食材は教育委員会などの主導で一括購入しているケースが多いからだ。

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この表を見て驚くのは、前回調査した東京都・神奈川県よりも中国産食材、しかも冷凍食品の使用が多いことだ。大都市はともかく、地方に行けば田園が広がり、食材も豊かなはずだから、当然、中国産食材の使用率も減るだろうと思っていたのに、一体どういうことか。各自治体はその理由として、「給食費の制限があるため」と「国産食材だけでは安定的な調達は困難」の2点をあげた。つまり、目の前に食材があっても、国産は値段が高く、同じ規格で一定数をつねに揃えられないから、やむをえず中国産を使うというのだ。前出の野田氏は言う。「中国産食材使用の背景には、国産食材のコスト高の他にも、合理化による人員不足、施設設備の老朽化などがあります。また地方は、複数の学校の調理を一括して行う給食センターが多い。食材を大量に購入する必要があり、手づくりのようなキメ細かい調理や目配りができないので、加工品が増え、中国産率も高くなる」

全国政令指定都市20都市中、中国産食材を最も使用していたのは福岡市で、実に37品目にのぼる。使用頻度の高い順でいえば、緑豆春雨は『甘酢和え』『麻婆春雨』『太平燕』などに、乾燥きくらげは『牛肉のオイスター炒め』『中華スープ』などに使われる。マッシュルームは『ハヤシライス』『チキンライス』に、イカは『シーフードカレー』『中華炒め』などに使われる。福岡県の元給食調理員は、「ウチは食中毒を恐れて桃のようなフルーツまで熱湯消毒する」のに、これほど中国産を使っていることは知らなかったという。「産地がどこなのか、私たち現場には知らされません。ただ、中国産は味も違うのですぐわかります。ヒジキなんてひどい味だから、みんなで『中国産やね』と言いながら調理していました。あきらかに中国産とわかるのはごまです。ほこりやゴミなどで汚れがひどく、ぬるま湯で洗わないと使えないんです」

食材でとくに驚いたのは『味付け鶏レバー』だ。福岡市の担当者によれば、「中国の養鶏場で育った鶏肉を中国の加工工場で加熱・凍結させたものを、宮崎の会社で味付けして」いるという。食材の選定をする給食物資選定会の元関係者に尋ねると「えっ?」と声をあげた。「鶏レバーは味付けが好評で、保護者からの問い合わせも多いんです。宮崎産と聞いていたのに。福岡市は基本的に地場産でまかない、難しいものは九州産か国産という方針ですから、中国産は緑豆春雨だけだと思っていました。ショックです」。中国の土壌に多い重金属や有機塩素は、まず穀類や野菜などに吸収される。それを鶏に食べさせると、脂肪組織が多い解毒器官の肝臓で濃縮されていく。中国産の鶏肉は抗生物質が残留している点だけでも問題なのに、レバーはさらに重金属などで汚染されているのだ。そんな危険なものを平気で学校給食に使うとは、あまりにも能天気すぎる。

静岡市は中国産食材の使用品目は福岡市のほぼ3分の1だが、きくらげは『中華丼』『中華サラダ』に、緑豆春雨は『中華サラダ』『春雨スープ』にと、中華メニューの材料になることが多い。その中で意外なものがあった。アサリである。2年前の3月、静岡県で中国産アサリの水煮から、除草剤のプロメトリンが残留基準値(0.01ppm)を超えて検出された。八宝菜などの材料として使われたというが、わかったときはすでに静岡市内の小中学生と教員1万8400人お腹の中だった。その中国産アサリが今も使われていたのだ。担当者は「基準値を下回ったという報告を受けたので再開した」という。

それにしても、新潟市や札幌市、それに仙台市でも中国産食材が使われているとは、ちょっと信じがたい。政令指定都市のほとんどが食料自給率10%以下のなか、新潟市はずば抜けて高く63%(平成17年)である。新潟県になるとほぼ100%だ。また、札幌市と仙台市は食料自給率は低いが、北海道全体では191%、宮城県全体では69%と高い。輸入せずとも国産で十分食べていける地域である。それなのに、「価格を度外視すれば国産にできるが、なかなか難しい。春雨のスープなどをやめれば国産にできるかも……」(新潟市教育委員会)という声があがる。しかも札幌市は、中国産アサリを使って他県の郷土料理『深川めし』を出している。逆に仙台市は、郷土料理の『ずんだ』にまで中国産を使っていた。

表の《代表的なメニュー》を見ると、不思議なことに中華メニューが多い。なにしろ堺市などは「中華献立を実施するため」に中国産食材を使っているほどだ。学校給食の栄養士として長年勤務した食育アドバイザーの宮島則子氏は言う。「中華メニューは、肉・野菜をバランスよく摂取でき、加熱処理で食中毒のリスクが減るので好まれます。でも、学校給食は日本の食文化を継承することも大事な役割のはずです。以前、中国産しいたけを乾燥させて干ししいたけにする実験をしたことがありました。いつまで経っても乾燥せず、半生の状態のままなんです。こんなものを子どもが食べることの意味をよく考えるべきだと思います」。食育とは、人の命や健康にとって食べ物がいかに大切かを教えることだ。同時に“食”はその地方の文化でもある。その文化を教えず、なぜ季節感のない中国産食材を使って、他県の郷土料理や中華料理を作るのだろうか。次号では、子どもたちの健康をあずかる学校給食でなぜ中国産を断てないのか、構造的な問題に切り込む。


キャプチャ  2014年10月23日号掲載


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