【学校給食に中国食材】(後編) 栄養士・調理師が選んだ「本当は使いたくない」ワースト15

毒ギョウザ事件をはじめ、何度も危険性が報じられてきた中国産食品。それが食育を掲げる小中学校の給食で全国的に使われていた。子どもの身をどうやって守ればいいのか。プロへの調査で最も避けるべき食材を明らかにするとともに給食の構造的問題を解明する! (奥野修司+本誌取材班)

前回までに紹介したように、学校給食には中国産食材が想像以上に使われていることがわかった。その中には、学校給食に携わる栄養士や調理師が「本当は給食に使いたくない」、あるいは「これだけは子どもに食べさせたくない」と思っている食材も少なくなかった。それを複数の栄養士と調理師に聞き取り調査をしてまとめたのが下の表である。ここに挙げた15品目は、栄養士や調理師が「自分の家庭でも使いたくない」という危険な中国産食材および食品ばかりだ。

中でも、栄養士や調理師が「二度と使わない」と口を揃えるのが中国産のアサリである。「とくに水煮のアサリは臭い。水が白く濁っているときもあります。身の部分が小ぶりなので、ヒジキの炒め煮によく使われますが、独特の刺激臭があって洗わないと使えません。でも、洗えば水煮に含まれた栄養素は流れ落ちます。ヒジキの炒め煮なんて、使われるアサリとヒジキと大豆が全部中国産のこともある。学校給食のワーストメニューと言っていい。中国産のアサリが臭いから、じつは子どもたちも大嫌いなんですよ」(元調理師)。他にも、これまでにも紹介したゴミだらけのヒジキやごま・薬臭いマッシュルーム・漂白剤と着色料で色鮮やかになった山菜ミックスなど、調理の現場に携わる人々の間では、中国産食材に対する拒否感は非常に強い。それなのに、なぜ中国産食材の使用は無くならないのか。




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これまでの調査をふり返ってみると、“東京・神奈川68全市区”では計33市区での使用が確認された。次に、地方都市ならばさすがに中国産食材の使用は減るだろうと“全国政令指定都市20市”を調べると計17市での使用が判明。意外にも、使っている自治体も、使われる食材数も増えていたのである。全国的に見ても63%というズバ抜けて高い食料自給率の新潟市でも、たけのこ缶・春雨・アサリレトルトといった中国産食材を使っていたのは驚きだった。

食の専門家や栄養士・調理員で組織する『全国学校給食を考える会』顧問の野田克己氏が解説する。「学校給食のしくみは複雑です。そもそも学校給食は市区町村などが設置者として独自に担う“地域自治”の範疇にあります。ですから献立・食材の購入方法・調理方式・給食費などは地域によって異なるのです。たとえば調理システムは大きく分けて各学校ごとに調理する“自校方式”と、複数の学校分を一括して調理する“センター方式”があり、食材購入の規模が違ってきます。どちらの場合も、献立を立てて食材購入の窓口になるのは栄養士です。でも、だからと言って中国産問題を現場の栄養士の責任と結論づけることはできません。自校方式でも、食材購入は現場の栄養士ではなく自治体としてまとめて行うケースがある。一方、センター方式では、大量調理・運搬のため調理時間が制約されるなど、食材吟味がそもそもしづらいという事情があります」。首都圏の学校栄養士も内情を明かす。「中国産は使いたくないと思っていても、予定した献立に使用する食材について、業者が中国産しか納入してくれないこともあります。とくに経験の乏しい若い栄養士の場合には、『じゃあ、国産の他の食材で代替しよう』といった柔軟な判断ができないので、業者にうまく丸め込まれ、中国産をつかまされがちです」。ただ、システムや状況が各学校・各地域で異なるにしても、全国的に中国産が入ってきてしまう背景には、共通する構造的問題があると考えるべきだろう。

私が今回取材を進めるなかで最も根源的な問題であると感じたのは、多くの地域、とくに地方の学校給食で盛んな“一括購入・一括調理”というやり方だった。「地方では種類豊富な食材は手に入りにくく、物流も大都市のように多くない。すると、さまざまな食材を総合商社的にまとめて扱っている業者は非常に有り難い。最たるものが学校給食会です。各都道府県や政令指定都市などにあり、一括購入でさまざまな食材を大量に揃えられるので、手間がかからない」(学校栄養士)。また、給食センターは都市圏よりも地方に多い。人口が希薄な北海道には小規模の給食センターがあちこちにあるし、山形県では、何万食もの給食を一箇所で調理する大規模給食センターが稼働している。「学校の単位が小さい地方では、センターで複数校分の給食を一括調理したほうが効率的なのです。また、大量の食数を一括調理するには、食材も大量に一括購入したほうが楽です」(同前)。これまでのアンケート調査でも、各自治体は中国産を使う主な理由として、「給食費の制限があるため(中国産は安い)」とともに、「国産食材だけでは安定的な調達は困難(中国産は大量に同一規格のものを揃えやすい)」を挙げていた。食材の一括大量購入・一括大量調理が進むほど、中国産食材は入りやすくなるのだ。

では、この方式はいつから普及したのだろうか。前出の『全国学校給食を考える会』顧問の野田氏は、「学校給食は教育の一環として市区町村ごとに実施されてきたが、一方で誕生時点から国策に大きく翻弄されてきた歴史がある」と指摘する。「戦後の学校給食は、アメリカの余剰小麦を輸入して作るパンと脱脂粉乳のミルクから始まりました。その後もパン食の普及を国が主導してすすめたのです。牛乳が給食に出るようになったのは、1954年に酪農振興法ができたから。ようやく1976年から米飯給食が始まりましたが、これも、主たる目的は減反政策の実施などとあわせて当時の日本のコメ余り対策の一環なのです」。そして、今の学校給食の構造的問題に大きな影響を与えたのが、中曽根内閣時代の1985年に出された、新自由主義を背景とする“合理化通知”である。「このとき、①非正規調理員の採用②自校方式からセンター方式へ③給食の民間委託への移行、といった方針が出されました。この一番の狙いは、給食への“民間活力”の導入でした。その結果、起きたのは民間業者に委託された調理現場のレベルの低下です。また、学校給食センターは1960年代半ばから始まり、1985年時点ですでに全体の半分近くを占めていました。つまり合理化通知は、この流れに国が太鼓判を押したことになるのですが、センター化で顕著になったのが、まさに一括購入と一括調理でした」(同前)

33年間栄養士として給食現場の変遷を目の当たりにしてきた食育アドバイザー・宮島則子氏が証言する。「統一献立で食材が一括管理されると、栄養士や調理師は、食材の原産国がどこか知ろうとしなくなります。また、給食センターの調理員がパートだと、食材が中国産かどうかなど気にしません。決められた食数を作ればいいんですから」。コストダウンを追求した結果、学校給食は外食産業と同列になったともいえる。本誌では、食材の大量一括購入で大きな役割を果たす『学校給食会』に対して、中国産食材に関する調査を行った。全国47都道府県の学校給食会それぞれに、過去2年間で仕入れ実績のある中国産食材・食品を質問したものである。すると、冷凍野菜のような冷凍食材に加え、若鶏竜田揚げやタチウオフライといった加工品までが、安易に取り扱われている実態が浮かんだ。また、れんこん出荷量日本一で市場の5割を占める茨城県の給食会で、中国産のれんこんを取り扱うなど、安さ重視の仕入れも判明した。

前述したように、各自治体が中国産食材を使用する大きな理由の1つは「給食費が安いから」である。現在、給食費は全国平均で1食238円(小学校低学年)から278円(中学校)。これは人件費や光熱費を除外した食材だけの費用だが、たしかに安いとは言える。「時代とともに、給食費の値上げは行われています。でも物価の上昇カーブに、給食費の値上げカーブが必ずしも比例しているわけではありません。自治体は給食費を上げると保護者が過剰反応するのではないかと恐れている。給食をこう良くしたいというポリシーが出てこないから、保護者の顔色ばかり窺うのです」(野田氏)

だが一方で、給食費が本当に安いのかという疑問も残る。現在の給食費のままで、地場産を中心にした国産食材でまかなっている自治体もあるのだ。代表的成功例のひとつは新潟県三条市である。きっかけは、2001年に国内で狂牛病(BSE)が発見されたことだった。「それまで中国産を使っていましたが、信頼できる食材を使おうと国産に切り替えた」と三条市福祉保健部健康づくり課食育推進室長の田村直氏は言う。「なぜ中国産を使わないか? だれがどんな方法で作ったかわからない中国産なんて怖いじゃないですか」。2003年からはパンや麺を減らし、2008年4月に完全米飯給食に移行。結果として献立は和食が中心になり、マッシュルームやきくらげなど中国産食材を使う必要がなくなったという。

給食費は1食250円(小学生)から300円(中学生)だ。「給食では約60品目の農産物を使いますが、今は半分が三条市産です。地元産でないものは牛乳・魚・海藻・鶏肉・牛肉などわずか。以前は八百屋さんが市場で買ったものを仕入れていましたが、それではだめだということで、今は市場を通さずに農協から生産者に依頼して作ってもらっている。八百屋さんには農家からの集荷と学校への配送をお願いしました」(同前)。和食にしたおかげでデザートメニューは減った。子どもたちから文句が出なかったかと尋ねると、田村氏は「子どもの希望に合わせて献立を作るつもりはない」ときっぱりと答えた。三条市の食数は小学校で5000食、中学校で3000食。センター方式から自校方式に転換しつつある段階だ。「地産地消といっても簡単ではありません。たとえば三条産の卵を使いたいと思っても、鶏卵業者が少ないから数を毎日揃えられない。そこで卵を使う日を地域ごとに変えています」。2006年度以降、三条市の小学校では肥満児が3.3%減少したという。

一方、地産地消から一歩進み、校区内生産・校区内消費を目指しているのが、愛媛県今治市だ。今治市は1983年にセンター方式から自校方式に切り替えたが、学校に調理室ができると、今治の食材で学校給食を作ろうという動きが始まった。その中心になったのが、大学時代に有機農業を学んだ今治市役所玉川支所長の安井孝氏だ。約30年に渡って学校給食に携わるなかで、「学校の隣の畑でできた食材を給食で使う」という、他の自治体では不可能とされていたシステムを築いた。今治の給食費は小学生で1食220円~255円、中学生で1食250円~275円だ。地場産のみでは無理だが、主食だけはパン用の小麦まで今治市で栽培することにこだわってきた。今治市の場合、給食改革が地域おこしにもなっている。安井氏は言う。「米は特別栽培米で100%今治産です。小麦は80%、豆腐は100%、野菜・果物は57%。それ以外は県内産で、外国産も多少使っています。大事なことは、食材調達権を業者に渡さないこと。業者にゆだねると、どこのどんな材料で作られたのかわからなくなる。まして外国の加工品だと、危険か安全かもわからなくなります」

しかし、地場産や国産にこだわると仕入れルートが煩雑になって仕事が増え、「面倒だからやりたくない」という栄養士もいるだろう。どうすれば意識改革ができるのだろうか。「市長や区長が給食に興味を持つことです。そして親がもっと勉強して、市長に訴えたりしたら給食は変わります」(安井氏)。学校給食は、やる気さえあれば、自治体の裁量でなんでもできる分野である。行政の責任者が「中国産で何が悪いんだ」と思えば中国産が増えてしまうし、子どもの健康を心配すれば、三条市や今治市のように地場産にこだわった給食にもできる。学校給食とは典型的な地方自治なのである。家庭での食事が壊れかけている現在、学校給食が果たす役割はますます大きくなっている。

年間に100人以上のがん患者を診ている鹿児島の堂園晴彦医師は言う。「今、40歳から50歳の日本人にすい臓がんと胆管がんがすごく増えている。乳がんと前立腺がんも多い。原因は1970年代以降の日本の食生活の変化が考えられます。食べ物は将来の健康に直結することを、小学生から教えるべきです」。農林中金総合研究所が1980年・1989年の2回にわたって『学校給食は、成人後の食生活にどういう影響を及ぼすか』というテーマで調査した研究がある。それによれば、母親の6割は子ども時代の給食メニューが成人後の食生活に影響があったと回答。また、母親の9割がわが子の食生活に学校給食のメニューが影響を与えていると回答したという(『学校給食を考える』荷見武敬・根岸久子著)。

一方、米オレゴン大学は“高塩分・高糖分・高脂肪”の食事を摂り続けた子どもは、成人しても高カロリーで栄養バランスの良くない食事を好むという研究を発表している。幼少時にジャンクフードを食べれば、大人になってもジャンクフードを好む。子どものときに覚えた味覚は一生その人の健康に影響を与えるのだ。ところが、全国400校の学校給食を食べ歩いた給食研究家の吉原ひろ子氏はこう指摘する。「私は各学校のカレーを食べ比べているんですが、手づくりのカレーが少なく、ほとんどがルウを使っています。市販のカレールウには“アミノ酸等”と称する化学調味料がいっぱい入っています。そして子どもたちは化学調味料いっぱいの濃い味が好きです。いま、全国の学校では“食育”の授業で添加物排除の教育をしているのに、これでは教育としてどうかと思います」

中国産食材を食べ始めた子どもたちは今、前出の堂園医師が指摘する以上の、予測できない危険にさらされているといえる。もしわが子の給食がおかしいと思ったら、親が糺すしかない。学校給食衛生管理基準には、《学校給食用食品の購入に当たって【略】栄養教諭等・保護者その他の関係者の意見を尊重すること》と書かれている。わが子を守るため、親が声をあげれば学校給食は変えられるのである。


キャプチャ  2014年10月30日号掲載


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