【ゆうちょ銀行&郵便局の株式上場が必ず失敗する理由】(03) 『かんぽの宿』問題でケチがついた社長人事――民間出身者に嫌われる“社長の椅子”、政治介入が招いた日本郵政の“人材難”

『三井住友フィナンシャルグループ』元社長・元大蔵官僚・元大蔵官僚・『東芝』元会長――。これは、『日本郵政』の歴代社長の前歴である。民間に嫌われるから官僚で、官僚だと見栄えが悪いから民間で……。財務省と政治家の思惑に振り回され続ける社長人事の舞台裏。 (取材・文 承山京一)

49回――。2006年1月、日本郵政の初代社長に就任した西川善文氏(三井住友フィナンシャルグループ元社長)が2009年10月に退任するまでの間に、参考人として国会に呼ばれた回数である。その3分の2は、2009年に入ってからの6ヵ月間に集中している。呼ばれた理由は言うまでもなく、『かんぽの宿』問題の為だ。鳩山邦夫総務相(当時)は同年1月、日本郵政が計画していた『かんぽの宿』79施設の『オリックス不動産』への一括売却について、認可拒否を宣言した。2400億円を投じて建設された施設の売却額が109億円であること、オリックスグループ最高経営責任者の宮内義彦氏が、郵政民営化を検討した『総合規制改革会議』の議長を務めていたことを問題視した為だ。騒動は、その後も続いた。総務省は鳩山氏の命令を受けて、日本郵政が提出した段ボール箱17個分の資料を検討した結果として、日本郵政に業務改善命令を出す。オリックス不動産への売却手続きが、不公平且つ不透明だったとの理由に依るものだ。また、民主党・社民党・国民新党は、東京地検に西川氏ら郵政幹部3人を告発し、これが受理された。最終的には「嫌疑無し」の結果が出ているが、その間の捜査は2年に及んだ。果たしてあの時、『かんぽの宿』売却を撤回したことは日本郵政にとってプラスだったのか?




同社は今年2月、『かんぽの宿』のうち9ヵ所の営業を8月末で終了すると発表した。残る施設は51ヵ所だが、今後も更に宿泊事業の見直しを加速させるという。「それは即ち、オリックス不動産への一括売却を撤回して以降も、かんぽの宿が赤字を垂れ流し続けてきたことを意味している。結果論だが、あの時に売っておいたほうが商売の上では明らかにプラスだった」(経済ジャーナリスト)。一方、『かんぽの宿』騒動は人材確保の面でも、日本郵政の足枷になっているとされる。西川氏は2009年の早い段階から退任説が取り沙汰され、鳩山氏は財界首脳に後任探しを働きかけていたとされる。無論、容易く見つかる筈がなかった。「日本郵政の社長の給料は、有名どころに比べて格段に落ちる。その上、大赤字の日本郵便を抱えて、永田町や霞が関と折衝を重ねながら民営化の舵取りをするのだから、骨も折れれば手腕も問われる。モチベーションが大事なのに、政治の振れ方1つで“罪人”呼ばわりされるなんて、民間人なら“真っ平御免”と考えるのが普通だろう」(同前)。民間で見つからないとなれば、官僚出身者に頼る他ない。そうして西川氏の後任となったのが、大蔵省(財務省)時代に“10年に1人の大物次官”と呼ばれた斎藤次郎氏だった。斎藤氏を登用したのは当時の亀井静香郵政担当相だが、事前情報の殆ど無い“サプライズ人事”だった。そして、あっと驚く大物が登場した裏には、民主党政権の手綱を握る財務省の思惑があると囁かれた。

post office 06
近年、財務省にとって最大の懸案は、増税実行と国債の安定消化の2つだと言える。日本の債券マーケットでは、償還期間が5年未満の国債はコマーシャルバンクが、20年~30年の超長期国債は生保等が買いの主役であり、利回りが長期金利の指標となる10年債の買いはゆうちょ銀行の独壇場だ。ただ、それは郵政が国の事業である時代に築かれた構図であり、民営化が進展すればどうなっていくかわからない。日本郵政の100%株主でもある財務省は、政権中枢に座った大物OBと気脈を通じ合わせながら、ゆうちょ銀行に対する影響力を維持し続けようとしているのではないか――そのような観測が流れたのである。そして、日本郵政は安倍政権が発足する直前の2012年12月、こうした見方を裏付けるような挙に出る。自民党に何の相談もないまま、斎藤氏の後任として、やはり大蔵省OBの坂篤郎副社長を駆け込みで社長に昇格させたのだ。官房長官となった菅義偉氏は早速、民営化に後ろ向きな坂社長を辞任に追い込んでいくが、またもや後任が見つからない。東芝元会長の西室泰三氏が社長を引き受けるまで、半年もかかっている。

そうこうするうちに、今度は永田町で微妙な空気が漂うようになった。野田聖子前総務会長や古屋圭司前拉致問題担当相等の郵政民営化“造反組”の発言力が増し、全国の郵便局票に頼ろうとする議員が増え出したのだ。「西室氏がもうすぐ80歳と高齢であることを考えれば、早晩、後任人事の必要が生じてくる。今度もまた、迷走するのは避けられないのではないか」(同前)。日本郵政は抑々、嘗ては堂々たる中央省庁『郵政省』として君臨していたのであり、民間排除は同社の“本来の姿”であるとも言える。『クロネコメール便』問題では、郵便ポストにカタログ等を届けるメール便に、信書に当たる手紙等を同封すると法に違反し、顧客である荷物の発送者にも刑罰が下る可能性のあることを、ヤマト運輸が重視。この3月で同サービスを廃止した。宅配便の荷物に入った実は、こうした問題は1984年から存在していた。「宅配便の荷物に入った“添え状”が信書に当たる」と、旧郵政省側がヤマトに警告。同社会長の小倉昌男氏が逆に、「郵政相が独占禁止法に違反している」として公正取引委員会に申告したのだ。今後は、日本郵政も民間企業と同じ立場で、こうした論戦の土俵に立つ。それを乗り切り、或いは上手く丸めて良好なビジネス環境を作る等、民間出身者でなければ到底できはしないだろう。


キャプチャ  2015年7月号掲載


スポンサーサイト

テーマ : 郵政民営化
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR