【ゆうちょ銀行&郵便局の株式上場が必ず失敗する理由】(06) “ブラックな社風”はまだ改善されていない!――不可解なスキル評価に依る“恐怖支配”と“人件費削減”疑惑

ミスした社員を晒し者にする“お立ち台”の存在や、社員自らが年賀状を大量購入する自爆営業等、日本郵政の職場環境はブラックだと指摘され続けてきた。上場を控え、このような労務管理と労働争議・裁判の存在がネックとなっている。果たして、職場環境は改善されたのか? (取材・文 北健一)

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「年賀状の“自爆”(従業員が売り上げ確保の為に自社製品を買わされること)に象徴される、乱暴な労務管理と労働争議・裁判の数々。秋にも上場を控える日本郵政にとって、それは喉元に刺さった骨のようなもの」。日本郵政グループの労働問題に詳しい平井哲史弁護士はそう指摘する。「まるでブラック企業」と言われる日本郵便の体質を改めることは、親会社である日本郵政にとって待った無しの経営課題になっている。日本郵政経営陣も、問題意識を持ち始めている。昨年8月27日、日本郵政の西室泰三社長は定例会見で、年賀状の自爆営業について記者から質問されると、こう答えた。「(販売目標を達成)できなかったからペナルティーを科す、或いは何か某記事に依りますと……お立ち台に引き摺り上げて、それで責めるというようなこと、そんなことはあってはいけないんです、職場で」。筆者は本誌2014年9月号で、ミスした社員を“お立ち台”に上げ、晒し者にするパワハラの実態を、『ブラック郵便局 恐怖のお立ち台』とのタイトルで告発した。こうした報道や、パワハラを背景にした過労自死事件(さいたま新都心郵便局過労自死事件)が裁判になる中、遂に社長が「お立ち台を止める」と言わざるを得なくなったのだ。一歩前進は歓迎したい。しかし、である。西室社長がその会見で述べた「強制的に自分で自腹を切ってやらなくてはいけないような職場の雰囲気を作り上げたのは、やはりあったと思います、過去に」との認識は、はっきり言って甘い。社員を自爆に追い込む“職場の雰囲気”は、今も残っているからだ。それは、“スキル評価”を悪用した非正規苛めである。




スキル評価とは、郵便局等で働く非正規社員に対し“職務の広さとその習熟度”――要は、できる仕事の種類とレベルを評価し、時給に連動させる人事考課の仕組みだ。評価は大きくA・B・Cに分かれ、其々が更に“習熟度あり”と“習熟度なし”に分かれる為、“Aあり”“Aなし”から“Cなし”まで6段階評価である。それとは別に、身嗜み・遅刻・自分勝手な行為をしない等、“基本的な勤務態度”を見る“基礎評価”もある。兵庫県の郵便事業会社(現在の日本郵便)宝塚支店で働いていたAさんは某日、シフトを見間違い、1時間遅刻をしてしまった。すると、1回の遅刻でこの基礎評価の“無届けの遅刻・早退・欠勤は無かった”を△(できていない)と評価され、それと連動して、スキル評価も“Aあり”から“Aなし”に下げられてしまう。その結果、時給が100円ダウン。月収で1万2000円の賃下げになった。大阪・豊中支店のIさんは、軽微な交通事故(物損)を理由に戒告処分を受け、基礎評価を下げられ、合わせてスキル評価も“Aあり”から“Aなし”に変更。結果、時給で200円、月収も3万円下がった。Iさんらは、この処分と評価ダウンに依る減給に納得できず、裁判を起こしている(勝訴的和解で決着)。この裁判を担当した小野順子弁護士はこう話す。「元々、20万円ちょっとの月給から3万円もの減給では、生活を直撃します。『制裁に依る減給は、賃金の10分の1を超えてはならない』とする労働基準法に対する脱法的行為ですし、遅刻や交通事故といった勤務態度をスキル評価に連動させるのも可笑しい」。小野弁護士等の調査では、正社員がIさんと同じ戒告処分を受けると、昇給が止まって月800円の減給になる。非正規は月3万円マイナスだから、実に37.5倍になる。

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非正規労働問題に詳しい東京都労働委員会元委員の水谷研次氏はこう見る。「短期間の有期雇用契約にしておいて、“次の契約”で時給を下げるというのは、やり方が巧妙。ただ、日本郵便の非正規は正社員と同じ仕事をしているのに、賃金が異常に低い。それ自体問題なのに、“罰”にまで差別があるのはどう考えても可笑しい」。評価の客観性にも疑問符が付く。日本郵便に10年勤める非正規社員のMさんは、「『営業せんかったらスキルが下がるじゃないか』『上司に嫌われたらスキルを下げられるのでは』……。そんな不安が拭えない。結局、恣意的評価を武器に非正規をビビらせ、ものが言えんようにしとる」と憤る。この問題に対し、日本郵便は以下のように回答した。「正社員・期間雇用社員共に、其々の職務に応じた評価を行っており、適正と考えている。評価に当たっては、管理社員に対しマニュアル等を配布し、適正な評価をするよう指導している。“基礎評価とスキル評価の連動”については、現在は行っていない」(広報室)。遅刻や交通事故等、勤務態度の基礎評価とスキル評価の“連動中止”は、Iさんらの裁判の成果と言える。だが、郵便物の誤配でスキル評価が下がって大きな減給になったり、また一旦下げられると中々上がらないといった問題は残る。「スキルを下げることで人件費を抑えている」(日本郵政関係者)との指摘さえある。

冒頭で触れたように、この問題は株式上場とも切り離せない。今年3月に東京都内で開かれた日本郵政の株式上場を問うシンポジウム(郵政ユニオン等主催)で、東京証券取引所の関係者はこう指摘した。「政府・金融庁は今、コーポレートガバナンス(企業統治)改革を進めていますが、その中に“ステークホルダー(利害関係者)との適切な協働”という原則があります。従業員の約半数が非正規で、その処遇や労務管理が疑われる実態は、この原則と矛盾しています」。「職場にあってはならない」(西室社長)のは“お立ち台”だけではない。自爆やパワハラを生む社風そのものを改めるべきなのだ。 =おわり


キャプチャ  2015年7月号掲載


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テーマ : ブラック企業
ジャンル : 就職・お仕事

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