【広告戦争・デジタル空間の覇権を巡る人脈と金脈】(03) 0.1秒で世界の広告を売買! 金融化する広告テクノロジー

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6月中旬、本誌記者はニューヨークにいた。2008年、世界中を大混乱に陥れたこの国際金融の中心地で、新たな広告企業が続々と誕生していると聞き、その現状を実際に確かめようと訪れたのだ。足を運んだのは、金融街のウォール街から北に凡そ4km、超高層ビルが立ち並ぶミッドタウンの5番街と6番街の間に本社オフィスを構える『アップネクサス』。最先端のアドテクノロジー(広告配信・流通の自動化技術)を早くから手掛けてきたインターネット広告企業である。「オフィス内には、図書館からバスケットボールコートまで備えています」。アメリカらしい自由なベンチャー気質を感じさせるオフィスと言ったらそれまでだが、ここは多数のIT企業を生み出したシリコンバレーではなくニューヨーク。そこには、株価チャートのようなグラフが映し出された巨大モニターが各所に設置され、金融機関のトレーディングフロアさながらの風景が広がっていた。金融業界には、ロケットサイエンティストと呼ばれる金融工学の専門家が溢れ返っていたが、リーマンショックの影響で多くが失職。金融エンジニアたちが広告業界に新天地を求めて大移動し、システムを作り上げたのだ。今、アメリカを始めとしたインターネット広告の世界では、リアルタイム入札(Real Time Bidding=RTB)と呼ばれるテクノロジーが登場し、広告価格が常に変動する仕組みが浸透している。謂わば、株取引のような売買システムが根付いているのだ。そんなアメリカ発のテクノロジーは、タイムラグを経て今や日本にもじわじわ浸透しているが、実は日本でも独自に技術を磨き、アメリカ勢を迎え撃つ日の丸ベンチャーがある。起業家・本田謙が2010年に創業し、僅か4年弱で東証マザーズに上場した『フリークアウト』である。

ウェブサイトにアクセスすると、ディスプレイ型の広告が何げなく表示されていることに読者も気が付くだろう。しかし、その広告枠を巡って、一瞬のうちに広告主に依る激しい入札競争が都度繰り広げられていることを知る人は少ない筈だ。これがRTBである。仕組みは上図の通りだが、ウェブサイトを訪問している人物が“誰”なのか、瞬時に分析するのがポイント。広告主は、嘗てのようにメディアの“枠”を買うのではなく、DSP(デマンドサイドプラットフォーム)と呼ばれるツールを通じ、広告を目にする“人”に対して入札するのだ。例えば、広告主が大手航空会社としよう。予約が埋まっていない席からは1銭も入ってこないだけに、乗ってくれそうな“人”がインターネット上で見つかれば、何が何でも競り落とす。出発の期限に近づけば近づくほど、入札価格を高く提示することもある。驚くべきは、ユーザーアクセスから広告表示まで、僅か0.1秒(!)の間に一連のプロセスをやってのけることだ。瞬きの間に事が済む為、気付かないのも当然。ヘッジファンドのハイフリークエンシートレード(プログラミングを駆使した高速アルゴリズム取引)を想起させる。本田がフリークアウトを創業したのは、「RTBで出遅れた日本にも、この仕組みを何としても導入したい」との思いからだった。実は本田は、アドテクの世界では2度目の創業だった。2005年に本田が創業した『ブレイナー』は、コンテンツ連動型広告を手掛けるアドテク企業。コンテンツの文脈やキーワードを解析し、内容と関連性の高い広告を配信するというシステムを導入。今では有り触れているが、当時はグーグルが最先端のサービスとして開始したばかりだった。「『日本もグーグルに後れを取ってはなるまい』と思い、挑戦することにしました」。サービスは順調に伸び、ヤフーに目を付けられて2008年に会社を売却した。




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「アドテクは、グーグルやヤフー等の巨大企業同士が争うフェーズに入った」――。当時、本田はそう思ったという。ところが、その頃アメリカで誕生したRTBは、誰も日本に輸入できないまま時間だけが過ぎていった。RTBの存在を知った本田には、明らかに日本の広告業界を変える可能性を秘めているように映った。「金融の世界では、あっという間に機械に依るトレードに変わった。人間の仕事を否定する訳じゃないけど、『広告の世界を歪ませずに、あるべき方向に持っていこうという人が少ない』と思っていました」。RTBは、リアルタイムのデータがモノをいう世界だ。パソコンだろうとモバイルだろうと、その人が“誰”なのかを瞬時に特定すべく、データの精度を上げていくことが求められる。DSPと広告主が直に繋がればよく、嘗ての“関所”となってきた広告代理店の入る余地は無い。2度目の創業に当たっては、必要な人材のイメージを持っていた。市場原理を広告業界に導入する価値を理解しているだけでなく、「自分より10歳若いメンバーとやりたかった」。そこで真っ先に口説いたのが、グーグルの広告セールスチームで技術開発経験を持つ20代のホープ・佐藤裕介だった。更に2014年、強力なメンバーを迎え入れる。“赤髪のCTO”、明石信之だ。ヤフーのCTOとして1500人のエンジニアを率い、誰よりもアドテクを熟知している業界の“大物”である。今でこそ、こうしたスター選手も揃い、誰もが知っている大手企業を広告主の顧客として抱え、国内唯一の専業DSPとして盤石の地位を固めたフリークアウトだが、道程は平坦ではなかった。というのも、広告主の広告出稿を最適化するDSPだけではRTBは実現せず、接続先となるメディアが必要不可欠だったからだ。だが、当時は誰もRTBなど経験の無い時代。メディアの広告枠を束ねていたアドネットワークな等の広告事業者を説得して回るのは、決して容易ではなかった。

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振り返れば、2011年10月にグーグルと接続できた時が、「日本でもRTB市場が本格的に立ち上がった瞬間だった」と、COOに就いた佐藤は語る。グーグルのネットワークを通じ、クックパッドや価格.com等、誰もが見慣れたメディアに掲載されるようになったのだ。RTB市場は順調に拡大し、2014年にはフリークアウト以外にもSSPが1社上場を果たしている。この他、KDDI系やサイバーエージェント系・博報堂系といった名立たる企業が、今やRTB事業に参入しているほどだ。尤も、RTBには課題も山積している。最大の問題は、クリック率等の効率化の指標に代わる、新たな指標を見い出せていないことだ。謂わば、“株価”に代わる物差しだ。広告主には、大きく分けて“ブランド予算”と“販売促進費”の2つの財布がある。この内、RTB市場に流れてくる大半は販促費で、売り上げに直結する広告ばかりなのだ。一方、ブランド予算の流入は微々たるもので、実際、RTBを経由した日本のデジタル広告費は、まだ全体の9%に過ぎない。ブランド広告を評価できる新たな物差し――。「それを示すことで、広告業界は完全な金融市場になる」。本田の描く理想像でもある。

■追い掛け回すなら世界最強…フランスのIT企業『クリテオ』のターゲット力
世界第1級のエンジニア集団を抱えるグーグルですら唸るテクノロジー企業がフランスにある。リターゲッティングの代表格である『クリテオ』だ。リターゲッティングとは、ある広告主のウェブサイトにアクセスしたことのあるユーザーに対し、只管関連広告を表示するアドテクの手法の1つだ。例えば、ゴルフ好きのユーザーが楽天市場でスリクソンのドライバーを見ていたとする。取り敢えずは買わず、楽天市場から離脱してヤフーニュースに見に行くと、そのニュースページの広告枠に、スリクソンのドライバーと同じような、しかし違うメーカーのドライバーが安く表示される。つまり、見ていた商品と非常に近しい関連商品が、他のメディアに行った時に表示されるという仕掛けだ。「広告というより“情報”として見られることが多い為、成果が出易い」(『クリテオ』アジア太平洋地域最高青任者兼日本代表取締役・上野正博氏)のだという。クリテオの技術力の凄さは、その収益構造を見るとわかる。メディアに対しては、1表示・幾らという形で支払う。一方、広告主に対しては表示されただけでは課金せず、クリックされた時点で課金するのだ。つまり、クリックされなければ逆鞘で損をする為、如何にクリック率で高い精度を誇るのかがわかる。重要なのは、情報の量と質に加えて“鮮度”だ。特に、在庫情報や商品の値段は日々変わる為、少なくとも1日1回は商品情報を楽天等の顧客からアップデートしてもらうなどして、細心の注意を払っている。尤も、クリテオが狙うのはブランド広告費というより、eコマースの販促費に近い予算。実際、日本での主力顧客は楽天・リクルート・ヤフーの3社だ。

■これで全てわかる! 最先端デジタル広告用語集(監修/デジタルアドバタイジングコンソーシアム㈱ 徳久昭彦・永松範之)
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キャプチャ  2015年7月11日号掲載
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