【墜ちた東芝】(02) 復元された社長のメール

不適切会計の全容解明へ、5月15日に発足した第三者委員会。デジタルフォレンジック(通称デジタル鑑識)作業の担当スタッフが声を上げた。「田中さんのメールがやけに少ない」。フォレンジックは“法医学”“科学捜査”の意味。デジタル鑑識は、キーワードを使う等して、膨大な数のメールの中から重要なものを抽出する最先端の技術だ。証拠隠滅でメールを消しても、サーバー等のデータを復元して調べるので逃げられない。第三者委では、会計士とフォレンジック専門家合わせた76人で計32万2000通を解析。中でも、社長の田中久雄(64)や副会長の佐々木則夫(66)ら歴代経営陣のメールに重点を置いた。“メール魔”で有名だった田中の分も大量に復元。誰に何をどう伝えたのか、虱潰しに調べていった。そして、インフラ部門の損失を巡るやり取りが見つかった。「第3四半期に計上すべきです」とする部下に対し、田中は「第4四半期にずらせないか」等と返信。損失計上の先送り指示と受け止められかねない内容だ。これが後に、組織的な会計操作への経営陣の関与を裏付ける有力な証拠となった。

皇居近くのオフィスビル。入居する『丸の内総合法律事務所』に『東芝』の幹部社員が順繰りに呼び出された。「この時、何故こう言ったのか?」「反論できなかったのか?」。現場に強引な業績改善を求める“社長月例”等の議事録やメールを示し、当時の思いや行動を1つひとつ確認する。社員ら210人への聴取で得られた生の証言とデジタル鑑識が、経営陣をじわじわ追い詰めていった。第三者委の調査のヤマ場は7月8日だった。小雨がぱらつき始めた午後1時前、丸の内総合法律事務所が入るビルの地下駐車場に、大型の黒塗り車が滑り込んだ。降りてきたのは副会長の佐々木。第三者委の委員長・上田広一(71)始め委員4人が勢揃いして、佐々木と田中を聴取する最後の日だ。組織的な不適切会計への関与を示す材料を次々と突きつけられた2人。「(損失先送りを)直接指示したという認識は無い」。こう口を揃えたが、既に外堀は埋まっていた。話が新体制に及んだ時、佐々木はふと漏らした。「もう私はいないと思いますけどね」。歴代社長の辞任、経営陣刷新という大きな流れが出来始めていた。 《肩書は当時・敬称略》


≡日本経済新聞 2015年7月29日付掲載≡


スポンサーサイト

テーマ : 経済・社会
ジャンル : ニュース

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR