【墜ちた東芝】(03) もう辞めざるを得ません

7月14日、『東芝』東京本社38階の役員フロア。社長の田中久雄(64)は、相談役の西田厚聡(71)の部屋を訪ねた。「もう辞めざるを得ません」――。「田中が損失を先送りするよう実質的に指示していた」との第三者委員会の調査が、次々に報じられている。予て考えていた進退を決め、後ろ盾だった西田に打ち明けた。この時点での田中の判断は、「9月開催の臨時株主総会で退任」。再発防止策を自ら取り纏める強い意思を示していた。だが、進退に言及しない田中に、社内の空気は日に日に厳しくなる。7月14日には、監査委員会委員を務める取締役たちが東芝本社に集まっていた。一貫して田中を支持していた取締役の1人が態度を翻し、田中の辞任を求め始めた。第三者委の報告の受理後、直ちに辞任する流れができたのは、海の日までの3連休に入ってからだ。19日、亡くなった東芝元幹部の通夜が神奈川県内で開かれ、『日本郵政』社長で東芝相談役の西室泰三(79)と西田が顔を合わせている。2人をよく知り、遠目に見ていた幹部社員は、「ここで何かが決まった」と感じた。

20日夜。第三者委から調査報告書を受け取った東芝は本社で取締役会を開き、概要を報告した。「上司の意向に逆らえない企業風土」「トップが現場を追い込んだ」――。辛辣な言葉が並ぶ報告書に取締役は言葉を失い、僅か5分で終了した。副会長の佐々木則夫(66)は、早くから辞任を覚悟していた。田中にも、もう迷いはない。この日は出社しなかった西田も、自身が社長時代に部下に強いた圧力が調査報告書に記されていた。これで西田も腹を固め、3代社長が一斉に翌日辞任することが決まった。西田の2代前の社長だった西室は、多数の幹部が東芝を去ることで現場が混乱することを懸念していた。目を付けたのは、口数が少なくて敵を作らないと言われる会長の室町正志(65)。「絶対に辞めないでくれ。残ることも辛いかもしれないが、貴方に期待する」。辞めると言って聞かない室町を、数日前から懸命に説得した。20日、第三者委委員長の上田広一(71)は、300ページに及ぶ調査報告書を田中に手渡した。深々と下げた頭を起こした田中は、「室町を中心に再発防止に取り組みます」。2日後、「社長を兼務した室町が、事態の収拾と東芝再興に取り組む」という西室が描いたシナリオが動き始めた。 《肩書は当時・敬称略》


≡日本経済新聞 2015年7月30日付掲載≡


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