【墜ちた東芝】(04) それでも現場は前を向く

「93行も参加していただき、東芝は大事にされていると改めて感じた」。24日、『東芝』東京本社。第三者委員会の調査報告を踏まえ、取引銀行向けに開いた説明会の終盤、財務部長の渡辺幸一(54)は涙を浮かべた。銀行と融資契約を結ぶ際、借りる側は財務諸表の正しさを証明するが、違反があれば早期返済を求められるリスクもある。決算修正が避けられない東芝の財務担当は、返済要求を留保するよう銀行への働きかけを続けている。会計不祥事に揺れた間も、現場の業務は滞りなく進んでいる。社長を兼務した会長の室町正志(65)は再発防止の取り組みに手一杯だが、何れ攻めに転じる。その時に備えて仕事を進め、技術の種蒔きを続けなければならない。27日、仙台市。東芝研究開発センターは、“理論上破られない”究極の暗号とされる『量子暗号通信』の実用化に向けた通信テストを実施し、問題が無いことを確認した。主任研究員の佐藤英昭(47)は、「予定通り実証を始められる」と胸を撫で下ろした。ノートパソコンやNAND型フラッシュメモリーを世界で初めて開発した“発明家のDNA”は、今も息づいている。

社長の田中久雄(64)が辞任してから1週間が過ぎた29日には、東芝再生の第一歩として設置した経営刷新委員会が初会合を開いた。取締役会のあり方や再発防止策を提言する。東京理科大教授で委員長の伊丹敬之(70)は、社外取締役として監査委員会委員長も務め、東芝再生の鍵を握る。伊丹は、「ガバナンス等の新体制のあり方が、信頼に大きな影響を与えることを肝に銘じて、議論を進めたい」と切り出した。真正面に座っていた室町は、伊丹の視線を感じると居住まいを正す。伊丹は、「“3つの信頼”を損なった」とも話した。資本市場・顧客、そして最後に「従業員からの信頼を失った」と説いた。歴代社長が一斉に辞任する事態に、社員は動揺を隠せないでいる。会社のブランド価値を毀損させたことへの怒りも大きい。ただ、田中から21日夜に届いたお別れのメールには、多くの社員が目を留めた。「東芝グループの信頼回復と再生に向けて、20万人の従業員が前向きに未来に向かって進んでいくことをお願いしたい」。東芝は輝きを取り戻せるか。再生への険しい道のりが始まった。 《敬称略》 =おわり

               ◇

多部田俊輔・川上穣・浜岳彦・伊藤大輔・伊原健作・斉藤雄太が担当しました。


≡日本経済新聞 2015年7月31日付掲載≡


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