【韓国ロビーの舞台裏】(上) 終わりなき世界遺産バトル――二転三転した世界遺産登録は始まりに過ぎない…終わりの見えない泥沼の外交闘争は第2の慰安婦問題に?

7月初め、『明治日本の産業革命遺産』の世界遺産登録が正式に決定した。国連教育科学文化機関(UNESCO)日本代表部の佐藤地大使はその瞬間、満面の笑みを浮かべたが、日本国内は祝賀ムード一色という訳ではなかった。遺産の登録を目指してきた自治体関係者の多くは、本誌の取材に箝口令でも敷かれたかのように、何故かノーコメ ントを繰り返す。重い口を開いたある自治体の担当職員は、こう漏らした。「正直、本意ではない。遺産の本質とは別のことばかりが注目されている」。“別のこと”とは、遺産を巡る日韓の外交バトルだ。植民地時代に今回の産業革命遺産で働かされた朝鮮半島の人々が“強制労働”だったのか、或いは自国民としての“徴用”だったのかが争点となっていた。

抑々、事の発端は今年5月。日本が登録を目指す産業革命遺産23施設のうち7施設で、戦時中に約5万8000人の朝鮮半島出身者を徴用し、犠牲者が出たとして、韓国政府が申請撤回を要求したことだった。6月の日韓外相会談で一旦和解した筈だったが、7月初めのUNESCO世界遺産委員会で韓国側は、「朝鮮半島出身者が“強制労働(forced labor)”させられたことを決議内容で明示すべき」という意見陳述を準備。「自国民としての徴用工であり、強制労働ではない」とする日本側との調整が難航した。結局、登録決定後に、日本側は朝鮮半島出身者の一部が「労働を強いられた(forced to work)」との表現で声明を出し、朝鮮半島出身者の被害を説明する情報センターの設置を検討すると譲歩して折り合った。ところが、今度は韓国政府の関係者が、「誰が見ても強制労働と解釈できる」と改めて主張を展開。先週、日本の外務省が6月の日韓外相会談で、“強制労働(forced labor)”の文言を使わないことを事前に韓国側と摺り合わせていたと発表する等、泥沼の様相を呈している。佐々江賢一郎駐米大使は、「日本が遺産の説明に書き加えることにした“労働を強いられた(forced to work)”という一文の解釈問題は枝葉末節」と発言したという。しかし、この問題は“第2の慰安婦問題”に発展する危うさを孕んでいる。




world heritage 01
慰安婦問題では、1991年末に当時の加藤紘一官房長官が「政府関与の証拠は見つかっていない」と言い切った直後に政府関与を示す資料が発見され、パニックに陥った宮沢喜一首相が訪韓時に謝罪を繰り返した。遂には“強制性”の裏付けが無いまま、“お詫びと反省”を盛り込んだ官房長官談話を発表。終わりなき慰安婦問題の出発点になった。韓国政府は、現在も日本に対して謝罪と法的責任を追及し続けている(賠償について、日本政府は1965年の日韓請求権協定で解決済みという立場)。戦時中の徴用工に対する賠償を巡っては、両国とも日韓基本条約と共に結ばれた日韓請求権協定で解決済みという立場だった。しかし、2012年に韓国の最高裁判所が「請求権は依然有効」という判断を提示したことで、三菱重工等の日本企業を相手取った訴訟が続発。高等裁判所では、既に賠償金支払いを命じる判決が出ている。日本政府にとって、元徴用工の賠償問題は“パンドラの箱”だ。数十万人とも言われる元徴用工の数は、慰安婦と比較にならないほど多く、請求される賠償金額は莫大になる。支払いに応じない場合、韓国の司法当局は日本企業の資産凍結に踏み切る可能性もある。そうなれば、日本経済に影響しかねない。一方で今回、「こうした状況に陥った原因は日本政府にもある」と指摘する声もある。今回の産業革命遺産は、1850年代から1910年までと期間を区切って申請した。1910年は、日本が韓国を併合した年だ。世界遺産登録を目指した産業遺産国際会議で専門家委員を務めた九州大学名誉教授の有馬學氏に依れば、日本初の鉄筋コンクリート製集合住宅が建築される等、“軍艦島”で知られる長崎の端島炭坑で遺産としての本質的な価値が生じたのは、1910年よりも後の時代。他にも、今回の申請には1910年以降に稼働した遺産も含まれており、そういった遺産は韓国から見れば“強制労働”の対象になる。「専門家委員会では、1910年で区切る話など無かった。『日韓併合以前の遺産だ』と強調したかったのだろうが、韓国に反論する材料を与えた」と有馬氏は言う。

日本政府の主張では、1910年は飽く迄も『日英博覧会』が開催され、日本の産業発展が一区切りを迎えた年だ。ただ、日本政府がどう弁解しようとも、韓国は対日外交で攻勢を強めている。韓国の尹炳世外相は、日本が表明した情報センター設置について、2017年までの報告と2018年までの実施を求めている。更に、韓国の矛先は徴用工とは関係のない“松下村塾”にも向いている。塾を主宰した吉田松陰が嘗て朝鮮半島の属国化を主張したからだ。竹島(韓国名・独島)・歴史教科書、そして慰安婦に続く新たな外交問題が生まれたのだとすれば――日本政府が今回の世界遺産登録を素直に喜ぶ訳にはいかないだろう。 (前川祐補)


キャプチャ  2015年7月28日号掲載


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