【軽き日本国憲法】(04) 長年放置されてきた“1票の格差”…政治が軽んじ続ける日本国憲法

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総務省が7月1日に発表した住民基本台帳に基づく人口調査に依ると、“1票の格差”が2倍を超える衆議院小選挙区は18選挙区(最大格差2.12倍)、参議院選挙区が31選挙区(同4.78倍)と前年より増えている。このうち参院選については、自民党が隣接する複数の選挙区を1つにする合区を2地域で導入することを柱とした公職選挙法改正案を、民主・公明両党は10地域での合区等に依る改正案を決めた。衆院選の“1票の格差”に関する最高裁判決を見ると、1976年の違憲判決以降、これまでに合憲5回、違憲状態(一般的には、投票価値の不平等が憲法の求める選挙権の平等に反する状態にあるが、是正する為に必要な合理的期間を経過していない状態)4回、違憲(合理的な期間を過ぎた状態)2回となっており、未だに“無効判決”は出ていない。現行の小選挙区比例代表並立制に移行してからは、1996年・2000年・2005年と“合憲”判決が続いたが、2011年・2013年は“違憲状態”となっている。一方、参院選における“1票の格差”を見ると、2009年の最高裁判所判決では、2007年の参院選における最大格差が1対4.86であったが、「前回選挙当時の最大格差1対5.13に比べて縮小した」ことや、当該選挙後に参議院改革協議会や専門委員会が設置されたこと、現行の選挙制度を大きく変更するには「相応の時間を要する」等の理由から、“合憲”と判断されている。しかし、2010年の参院選の“1票の格差”についての2012年の最高裁判決では、「投票価値の不均衡は、最早看過し得ない程度に達している」として“違憲状態”判決となり、2013年の参院選の2014年最高裁判決でも同様に“違憲状態”となっている。

このように、遅々として改善しない“1票の格差”に対して、どのような解決策があるのであろうか? 1つには、1人別枠方式を排除した並立制のままで、小選挙区の区割りを変更する方法がある。しかし、各都道府県の小選挙区の数を変更すると、相当数の小選挙区の区割りを変更しなくてはならない。例えば、東京都には25の小選挙区があり、これに幾つかの小選挙区を加えると、東京都全体の区割りを見直さなければ、新たに東京都内での“1票の格差”が生じることになる。候補者にとっては、これまで自分が選出されていた地域が別の選挙区に移ったり、これまで他の候補者が選出されていた地域が自分の選挙区に加わったりする為、死活問題となる。小選挙区制は、定数が1と定まっていることから増減することができず、選挙区の区割りを変更するしか方法がない。この為、衆議院議員の合意を得ることが難しく、常に小幅な修正に終始してきた。そこで、衆議院の選挙制度を抜本的に見直し、新しい選挙制度の提案をすることにしたい。その際、有権者にとって何が利点であるのかという視点から、望ましい選挙制度の基準を考える。基準として先ず、“民意の反映”が挙げられる。つまり、民意を反映する選挙制度とする為には、投票者に依る各政党に対する得票率と議席率を一致させることが何よりも要請される。次に、“政党”だけでなく“人”も選びたいという“人の選択”である。更に、区割りについての“恣意性の排除”がある。最後に、有権者に投票する意欲を引き出すような“投票のインセンティブ”がある。




選挙制度を考える際の“1票の格差”を計る基準として、人口や有権者数ではなく、投票数こそが適していると考える。その理由は、例えば人口50万人、有権者人口40万人のAとBの2つの選挙区があり、選挙区Aの投票率が80%、選挙区Bの投票率が40%であったと仮定する。結果、選挙区Aは32万票で1議席、選挙区Bは16万票で1議席となり、同じ人口・同じ有権者数であっても“1票の価値”に2倍の格差が生じることになり、“法の下の平等”に反することになる。憲法第15条に定められているように、投票は国民の権利であり、義務ではない。また、憲法第14条の“法の下の平等”で定められていることは、国民が平等な権利を持つことである。若し、日本が義務投票制であるならば“有権者数=投票数”になるが、そうでない以上、有権者数と投票数の間には乖離が生じることになる。従来の“1票の格差”についての議論は“投票する権利”に留まっており、投票後の“1票の価値”については議論されてこなかった。“投票機会”が平等であるばかりでなく、投票した票が平等に取り扱われるべき“1票の等価値”も重要である。そこで、投票数を“1票の格差”を計る基準とした上で、どのような選挙制度が望ましいかについて検討する。

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ここで、これまでの議論を基に、“1票の格差”を解消する衆議院の為の選挙制度として、各選挙区の定数が投票の結果に依って自動的に決まる『定数自動決定式選挙制度』を提唱したい(右表)。尚、この案は北海道・東京都等を除く府県単位である為、区割りの見直しは必要としない。表の3において、政党名だけの名簿を認める理由は、全国に支持者が分散している政党や無党派候補にも機会を与える為で、全ての都道府県に候補者を立てなくても選挙戦を戦うことができる。また、表の5で白票を有効票として案分比例する理由は、「投票したい候補者や政党がいないが、投票する権利を行使したい」という有権者に対する配慮である。更に、表の7において、各選挙区への議席配分を“最大剰余式”(ある一定の得票数を決めて、各党についてその得票数毎に1議席ずつ配分していき、残った配分漏れの議席を各党の配分漏れの得票数の大きいものから順に与えていく方法)ではなく“ドント式”(各党の得票数を整数1・2・3……で順に割っていき、その商の大きい順に定数になるまで議席を与えていく方式)で行うと、各選挙区間の定数格差が1対2を超える場合がある。従って、最大剰余式を用いることにした。この制度の長所は、“定数不均衡が無い”ことである。選挙区の得票数に応じて議席数が決まるので、常に自動的に見直しが行われる。定数是正が国会議員に任されている現状では、その是正に長い年月がかかっており、司法も国会への配慮から定数是正に消極的である。この為、一度是正を行った後に新たな不均衡が生じても、これに機敏に対応することができていない。従って、自動的に不均衡が是正されるような制度が望ましいと考える。 (慶應義塾大学教授 小林良彰) =おわり


キャプチャ  2015年7月28日号掲載


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テーマ : 憲法改正論議
ジャンル : 政治・経済

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