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【蹉跌・再生エネルギー】(01) 国民に6.5兆円の請求書

「福島を再生可能エネルギーの先駆けの地にするのが復興の基軸だ。この問題を乗り越えることが復興には欠かせない」。10月26日投開票の福島県知事選で圧勝した内堀雅雄(50)。就任後の政策を聞かれ、表情を引き締めたのは再生エネについて問われた時だった。内堀が言う“問題”の発端は東北電力にあった。9月末、再生エネの接続を一時的に中断する、と突然発表した。福島県は東京電力福島第1原子力発電所の事故からの復興が最優先の課題だ。原発に頼らない電力の確保はいわば県民の総意。代替策として県が推進してきたのが太陽光や風力など再生エネだ。内堀は副知事として2040年に県内の電力消費量に見合う再生エネを生み出す目標の決定に深く関わった当事者だった。県内の企業も投資計画の見直しを迫られた。

「いったい国は何を考えているのか」。会津電力(福島県喜多方市)の社長・佐藤弥右衛門(63)は会津盆地を見下ろす喜多方市の雄国山の中腹にできたばかりの出力1000kWの太陽光発電設備を前に、不満をまくし立てる。ここを含め20数ヵ所、3000kW分は東北電力と買い取り契約を済ませたが、来年以降に建設する3000kW分が保留になった。「高速道路がそこにあるのに突然通行を止められたようなものだ」。企業や家庭が発電した再生エネを高値で買い取る制度が始まったのは2012年7月。高値につられた企業の参入が殺到した結果、東北や九州など5電力が受け入れ能力を超え、新規の接続を中断する事態に追い込まれた。わずか2年余りで制度が行き詰まったのはなぜか。源流をたどると、東日本大震災直後の政治の混迷に行き着く。




「菅の顔だけはみたくないという人に言おう。それなら早く(再生可能エネルギー特別措置)法案を通した方がいいぞと」。2011年6月15日、当時の首相・菅直人(68)は再生エネ推進派が集まった集会でまくし立てた。菅政権は震災対応などで批判を浴び、退陣は避けられない状態だった。菅は法案成立を退陣の条件に掲げて抵抗した。それが当時野党として菅を追い落としにかかった自民・公明党との法案修正合意につながる。3党合意の結果、法案には「買い取り価格の決定にあたり、3年間は発電事業者の利潤に特に配慮する」との付則第7条が加わった。参入した企業の利益確保にお墨付きを与え、必要なコストを基準に価格を決めるはずだった本来の制度のタガを外す改定だった。

買い取り価格を決める政府の委員会で、高値を主張した1人がソフトバンク社長の孫正義(57)だった。「(太陽光は1kW時あたり)40円で20年間という価格では大半の候補地の採算が合わない」。再生エネ推進派が多数を占める委員会は孫が示したぎりぎりの線に沿い、2012年度の大口太陽光の買い取り価格を税抜きで40円と決めた。固定価格買い取り制度は電力会社に接続を申請した時点の価格が最長20年間続く。政府は2013年度以降、太陽光の買い取り価格を下げ、軌道修正を図ったが、すでに接続した企業には高値で買い取ってもらう権利がある。「付則第7条による上乗せ負担は20年間で総額6.5兆円」「大型案件の投資収益率は年12~15%で7年程度で回収が可能」。政府部内のある試算は高値買い取りの負担がいかに重いかを示す。そのツケを電力料金に上乗せされるのは国民だ。

「制度は一刻も早くやめるべきだ」「経済産業省はこうなると分かっていたのではないか。対応が遅すぎる」。10月29日、自民党の会議では、民主党政権の政治判断と、経産省の認識の甘さを批判する声が噴出した。一方、民主党は経産副大臣だった増子輝彦(67)を座長とする検討チームで問題を洗い出そうとする。ある幹部は「率直にいって年度末の駆け込みの応募は想定できていなかった」と振り返る。別の幹部は「受け取り拒否は今の政権のことだ」と突き放す。与野党が責任をなすりつけ合うだけでは問題は解決しない。今の買い取り価格のまま認定済みの事業者が全ての発電所を稼働させれば一般家庭の負担は年1万円を超す。今の約4倍だ。それだけ払ってでも再生エネを進めるのか。世論の合意を得られているようにはみえない。

               ◇

東日本大震災後のエネルギーの柱と期待された再生エネの蹉跌。なぜ失敗したのか。原因を探った。 《敬称略》


キャプチャ  2014年11月4日付掲載


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