【変見自在】 正しい罰

真珠湾攻撃と同時に、日本軍の一部がマレー半島のシンゴラに上陸した。そこから南に1000km、イギリスのアジア支配の拠点・シンガポールの攻略が目的だった。イギリス側は、日本軍の侵攻はとっくに承知していた。間もなくハルノートを出す。「ぶち切れた日本が攻めてくる」と、もう3ヵ月前にアメリカの大統領が伝えてきた。それで、最新鋭の戦艦『プリンス・オブ・ウェールズ』が真珠湾攻撃の1週間前にシンガポールに入った。マレー半島にも要塞線が幾重も作られ、6万の英印軍が配備を終えていた。3層の防御壁を持つジットララインを視察したイギリスの司令官・パーシバルは、「3ヵ月は持ち堪える」と胸を張ったものだ。しかし、イギリス側の予測は皆外れた。日本艦隊を蹴散らす筈のプリンス・オブ・ウェールズは、開戦から2日日に96式陸攻の攻撃を受けてあっさり沈んだ。装甲戦艦が航空機に沈められるなど、誰も予想していなかった。彼らの大艦巨砲思想は、日本に依って呆気無く葬られた。上陸した日本軍も凄かった。4日日には100km南のジットラに着き、すぐさま600人の中隊が要塞に取りついて、夕刻までに落としてしまった。3ヵ月どころか、1日も持たなかった。

イギリス軍はクアラルンプールを守る防衛線をスリム川に敷き、インド第11師団と2個旅団を配備した。奥行き30kmの堅陣だ。イギリス側は、よせばいいのにまた「数週間は持つ」と読んだ。昭和17年1月7日、日本軍は15台の戦車を先頭に夜襲をかけた。イギリス側は500もの遺棄死体を残して潰走した。ここもまた1日と持たなかった。この激戦地に、マレーシア政府の“第2次大戦戦跡”碑が建つ。「ここで日本軍がイギリス軍1個師団と2個旅団を全滅させ、多くを鹵獲した」と碑文にある。第5師団の中島慎三郎は、「敵は戦車、装甲車のほかシボレーのトラック500台を残していった。缶詰やウィスキーやチーズもあった。将兵はチャーチルからの贈り物だといって感謝した」と記録している。実を言うと、このスリムでの戦いの時点で、イギリス軍が盾にしてきたインド兵もグルカ兵も全て消耗し尽くしていた。バーシバルはニューデリーに「急ぎインド兵を送れ」と要求、インド第45師団が送られてきた。彼らは、最後の拠点であるバクリに配備された。ここが落ちたら、次はもうジョホールバル、対岸はシンガポールだ。だから、インド軍の後詰めに初めてオーストラリアの白人部隊2個大隊が出た。1月18日、バクリに日本軍が突っ込み、インド師団は蹴散らされた。後詰めのオーストラリア軍は直ぐに東の丘陵地に逃げ出す。日本軍がそれを追う。脱出時に4000人いた将兵のうち、950人だけがシンガポールに帰り着いた。結局、パーシバル以下の白人部隊だけが残った。彼らは日本軍が上陸すると、1週間で手を上げた。これは、バンドン要塞でもフィリピンのコレヒドール島でも同じ。白人だけで戦うと、何故か皆1週間で降伏している。




「黄色いのと戦って怪我したら損だ」とでも思っているのか。終戦までのんびり過ごす意図が見えていた。しかし、日本軍は親切だった。彼等はきっとタダ飯を食い続けるのに気が引ける筈だ。で、飯代代わりに少し働いてもらう。なに、そんな大事じゃない。泰緬鉄道を作る鉄道連隊の手伝いをしてもらっただけだったが、どうもそれが彼らには面白くなかったらしい。彼らは戦後、降伏した日本兵を炎天下、裸にして手で草むしりをやらせた。報復の拷問だ。その写真を嬉しそうにフォード工場の記念館に飾り、そのうち何人かを絞首刑にもした。それでも飽き足らないのか、戦後70年目、鉄道連隊の兵士がロンドンに呼ばれて、とどのつまりは「日本は残虐」と言わせられた。彼らは労働を罰と考える。それを日本人如きにやらされたのが悔しいらしい。そうではなく、“ヒトを盾にした罪”に対する罰と考えたら納得しないか。


高山正之(たかやま・まさゆき) ジャーナリスト・コラムニスト・元産経新聞記者・元帝京大学教授。1942年、東京都生まれ。東京都立大学法経学部法学科卒業後、産経新聞社に入社。警視庁クラブ・羽田クラブ詰・夕刊フジ記者を経て、産経新聞社会部次長(デスク)。1985~1987年までテヘラン支局長。1992~1996年までロサンゼルス支局長。産経新聞社を定年退職後、2001~2007年3月まで帝京大学教授を務める。『高山正之が米国・支那・韓国・朝日を斬る 日本人をますます元気にする本』(テーミス)・『アジアの解放、本当は日本軍のお陰だった!』(ワック)等著書多数。


キャプチャ  2015年8月6日号掲載


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