【韓国財閥・きしむ世襲経営】(下) 創業一族に冷めた視線――富の一極集中、投資家は監視

「とばっちりを受けなければいいんだが……」。韓国財閥3位の『SKグループ』の幹部が気を揉んでいる。植民地支配からの解放70年を迎える今夏、朴槿恵政権は服役中の経済人の特別赦免を検討しているとされる。対象者にSKの崔泰源(チェ・テウォン)会長の名も上がるが、ロッテ騒動の余波で財閥批判が高まれば、ご破算になりかねない。 (ソウル=小倉健太郎)

崔泰源氏は横領等の罪で有罪が確定、2013年に収監された。SKだけではない。『現代自動車』や『CJ』等、カネに纏わる犯罪で有罪判決を受けたことがある財閥トップは枚挙に暇が無い。何故か。創業者一族で世襲する為に、莫大なカネが必要だからだ。多くの財閥は、創業2世から3世への世代交代期を迎えているが、グローバル展開に依って経営規模は格段に大きくなった。経営権確保に必要な金額は、先代の事業継承時とは比較にならない。例えば相続税。最大財閥『サムスン』の場合、中核の『サムスン電子』の時価総額は約18兆円。10年で2倍以上に増えた。李健熙(イ・ゴンヒ)会長の持ち分3%強を引き継ぐだけで、単純計算で3000億円以上かかる。如何に少ない負担で事業継承するか。創業者一族は知恵を絞る。後継者が出資する会社にグループの事業を集め、企業価値を高めてから上場させる等、あらゆる財務のテクニックを駆使する。一歩踏み外せば犯罪だ。

サムスンも世襲の最中にある。「新しいサムスン物産に生まれ変わります」。7月20日、韓国の主要紙1面に広告が載った。17日の臨時株主総会で、サムスングループの事実上の持ち株会社『第一毛織』との合併を決めた。合併に反対するアメリカのファンド『エリオットマネジメント』との激しい委任状争奪戦を制した安堵感が漂う。第一毛織の筆頭株主は、創業3代目の李在鎔(イ・ジェヨン)氏だ。サムスン物産はサムスン電子の大株主。今回の合併で、李氏のサムスン電子への支配力は高まる。エリオットは、「合併比率が不当に第一毛織に有利だ」と指摘。「合併は創業家の事業継承を進める為だ」と批判した。何とか総会を乗り切ったサムスンだが、「今回は愛国心で賛成票を投じるが、次はこんな合併比率ではダメだ」と憤る株主もいた。何故、そこまで世襲に拘るのか。ある大企業幹部は、「韓国では、オーナー経営者でないと信頼されない」と説明する。迅速で大胆な意思決定、石に齧りついてでも成功させるという責任感――。韓国が最貧国から“漢江の奇跡”と呼ばれる経済成長を成し遂げ、先進国になったのは、オーナーの強力なリーダーシップに依るところが大きい。だが、時代は変わった。所得格差の拡大を背景に、富が集中する財閥と創業者一族に対する冷めた見方は増えている。法令順守の重要性も高まり、ファンド等の投資家の監視も強まる。変化を迫られている財閥はロッテだけではない。


≡日本経済新聞 2015年8月10日付掲載≡


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