ブラック企業“ニッポン”、留学生30万人計画の愚――ブローカーに騙されて借金漬けで食いものにされるベトナム人たち、朝な夕なに彼らが配るのは『朝日新聞』だった…

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福島第1原発事故の影響等で一時減少していた外国人留学生の数が、再び増加に転じている。独立行政法人『日本学生支援機構』に依れば、2014年5月時点で留学生数は前年から9.5%増加し、18万4155人を数えた。統計から1年が経過した現在は、20万人を突破している可能性が高い。政府は“留学生30万人計画”を2020年に達成しようと、留学生の増加に努めている。同計画は、安倍政権の“成長戦略”の1つでもある。その達成が視野に入ってきた感じだ。留学生の増加に異を唱える人は殆どいない。移民や外国人労働者の受け入れには反対の人たちも、“留学生”と聞けば納得する。“爆買い”で有名になった中国人観光客の如く歓迎されている訳だ。留学を通じて外国人の若者が日本語を習得し、日本の文化にも親しむ。大学卒業後は、日本企業の戦力となって貢献してくれる――そんなイメージで受け止められているようだ。しかし、留学生の目的が“勉強”ではなく“出稼ぎ”だとしたらどうだろうか? 「“留学”すれば日本に長期滞在して働ける」と考え、発展途上国の若者が留学費用を借金して来日する。だが、日本語も全くできずに来日する彼らができる仕事は限られる。人手不足だとはいえ、日本人が敬遠する最底辺の仕事ばかりだ。賃金は最低レベルで、想像していたほどには稼げない。嫌になって日本から逃げ出したくても、借金を背負ったままでは国には戻れない。かといって、日本に居続ける為には毎年の学費が重く伸し掛かる。結果、“奴隷労働”から抜け出せない。“留学”を出稼ぎに利用するつもりが、逆に日本で都合良く使われてしまうのだ。まるで、現代の“蟹工船”である。それでも尚、留学生を増やしていくべきなのだろうか――。

それにしても、何故“30万人”なのか? “30万人計画”のモデルになったのが、1983年に自民党の中曽根政権下で作成された“留学生10万人計画”だ。中曽根康弘首相の肝煎りで、当時1万人程度に過ぎなかった留学生の数を、2000年までに10万人へと増やすことが決まった。「経済大国となった日本は、もっと留学生を受け入れて国際貢献すべきだ」という考えからである。“10万人”は、約12万人の留学生を受け入れていたフランスが参考にされた。フランスだった理由は、同じ非英語圏の先進国という程度に過ぎない。しかし、2000年時点で留学生数は6万4000人程度に留まった。すると、政府は留学ビザの発給基準を緩め、強引に計画を達成しようとした。以降、中国人留学生が押し寄せ、2003年には10万人を突破した。この頃の中国は現在よりもずっと貧しく、出稼ぎ目的の“偽装留学生”が急増したのである。それから5年を経た2008年、福田康夫政権の下で“30万人計画”が作られる。今度の題目は、“日本のグローバル化”である。そして、“30万人”の根拠も“10万人計画”と同様、フランスだった。フランスでは、高等教育機関で学ぶ学生の約12%を留学生が占めていた。ならば日本も、「約300万人の学生のうち、10%程度は留学生にしよう」と考え、“30万人”という数字が弾き出された。つまり、“10万人”にしろ“30万人”にしろ、殆ど思いつき程度に過ぎない訳だ。“30万人計画”が作られた2008年当時、留学生数は約12万人だった。計画達成には2.5倍に増やす必要がある。“10万人計画”と同じく、ハードルは高い。しかも、2011年から留学生数は減少し始めた。大きな原因が福島第1原発事故である。放射能の影響を恐れた外国人が、日本への留学を避けるようになった。また、中国や韓国との関係悪化も減少に拍車をかけた。2010年には、留学生全体の6割以上を占めた中国、14%の韓国からの留学生が次第に減っていく。中国に関しては、自国の経済発展で出稼ぎの必要がなくなったこともある。




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中国と韓国からの留学生は、現在まで減少が続いている。一方、日本の大学や大学院に在籍する留学生も同様、2011年以降は増えていない。にも拘らず昨年、留学生数は10%近くも伸びた。特定のアジアの国から、日本語学校へ留学する若者が急激に増えたからだ。日本語学校の留学生は、2012年の約2万4000人が、2013年には約3万3000人、2014年には約4万5000人へと膨れ上がっている。大学に在籍する留学生は約6万6000人だ。このままいけば、1~2年のうちに留学生数で日本語学校が大学を逆転するだろう。実は、日本語学校で学ぶ外国人は2010年まで“留学生”に含まれていなかった。大学等への留学生には“留学ビザ”が発給されるが、日本語学校の場合は“就学ビザ”で、呼び方も“就学生”と区別していた。それが2010年、“留学ビザ”に一本化され、日本語学校で学ぶ外国人も“留学生”として数えるようになった。穿った見方をすれば、“30万人計画”達成の為の“水増し”である。一方、留学生の国籍で際立つのが、べトナムとネパール出身者の急増ぶりだ。べトナムからの留学生は前年から9割以上増えて2万6439人と、1万5777人の韓国を抜いて第2位となった。ネパール人も8割近く増えて1万人を突破した。日本を訪れる観光客数では第1位の台湾は6231人、アメリカは2152人、フランスは957人、13億の人口を抱えるインドは僅か727人だ。如何にべトナムとネパールが多いか、わかってもらえるだろう。とりわけ、べトナム人留学生は2010年の3597人から猛烈なペースで増えている。その大半が、日本で先ず日本語学校へと入学する。“30万人計画”の達成は、日本語学校とべトナム人頼みとも言える状況だ。元々、べトナムはアジアきっての親日国家だが、現在は“日本留学ブーム”が起きている。“留学”といっても、留学ビザを使っての出稼ぎが目的だ。それを煽るブローカービジネスも大繁盛している。

「日本に留学すれば、アルバイトで月20万~30万円は簡単に稼げる」――そんな甘い言葉をインターネット等に流し、ブローカーは若者たちを勧誘する。そして、若者も簡単に誘いに乗ってしまう。因みに、ブローカーには日本人経営の会社もある。べトナムの失業率は2%以下と低い。但し、国民の過半数は農民で、普通に仕事をしていても月1万~2万円程度しか稼げない。いくら物価が日本の10分の1程度だとはいえ、生活は楽ではない。若者にとっては夢の描き難い暮らしでもある。そんな彼らにとって、海外への出稼ぎは人生を一変させる機会となる。出稼ぎ先は台湾や韓国・日本等が多い。日本の場合は“外国人技能実習制度”に依る受け入れだが、最長3年までしか日本で働けない。しかも、実習生の月収は手取りでやっと10万円を上回る程度だ。「“留学”で月20万~30万円」と聞けば、若者たちが殺到するのも当然だろう。留学して稼げる国など、日本以外にはないのである。だが、彼らは来日して間もなく、厳しい現実を思い知る。「会社(ブローカー)に騙されたんです……」。東京都北部の日本語学校に通うフーンさん(20歳)は、拙い日本語で呟くように言った。べトナム南部のニャチャン出身の彼女は、昨年7月に来日した。両親は農家を営んでいて、兄妹は兄2人と姉がいる。兄の1人はパキスタンの建設現場で出稼ぎ中だ。フーンさんが日本に“留学”したのも、出稼ぎが目的だった。彼女を日本へと送り出す為、家族は田畑を担保に入れて150万円の借金をした。日本語学校の初年度の学費が70万円、他には渡航費やブローカーへの手数料等である。家族が多額の借金を厭わないのも、娘からの仕送りを期待してのことだ。日本語学校への入学には、日本語能力試験『N5』に合格する必要がある。『N5』は最低レベルの試験で、ひらがなが読める程度で合格できる。しかし、フーンさんは来日前に試験を受けていない。合格証明書は3万円程度でブローカーが用意してくれた。勿論偽造の品だが、それでもビザは簡単に発給された。受け入れ側の日本語学校も、全く日本語ができない留学生だろうと大歓迎だ。中国人留学生の減少に依って、経営が厳しくなっているからである。

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フーンさんは来日してから半年問、日本語学校の寮に住んでいた。古いアパートを学校が借り上げた物件で、トイレもシャワーも無い6畳の部屋に3人で暮らした。部屋には粗末な2段べッドが2つあるだけで、机すら無かった。アパートは埼玉県にあって、駅から歩いて20分ほどかかる。日本人の借り手など見つからなさそうな物件だが、フーンさんたちは1人につき月3万円を払っていた。しかも来日前、半年分の18万円を前払いした。寮費も日本語学校の収入源になっているのだ。学校側からは、アルバイトの“紹介料”として2万円も取られた。紹介された先は、コンビニ弁当の製造工場だ。仕事は週3日で、勤務時間は夕方5時から翌朝3時までの夜勤である。時給は22時までが900円、以降は深夜手当がついて1120円。実働9時間で1日約9000円だが、1ヵ月働いても11万円程度にしかならない。ブローカーが言っていた“月20万~30万円”には程遠い金額である。月11万円でも生活はできるが、借金の返済もある。加えて、翌年分の学費も貯めていかなければならない。フーンさんは、2つ目のアルバイトを探すことにした。留学生のアルバイトには、法律で“週28時間”以内との規定がある。だが、守っていれば日本で留学を続けることは難しい。フーンさんに限らず、借金を背負い来日するべトナム人留学生たちに共通する悩みである。今年に入って、2つ目のアルバイトが見つかった。職場は宅配便の仕分け現場である。夜8時から翌朝5時まで、週3日働くことになった。収入は月20万円を超えたが、週6日も夜勤をしていれば勉強に身が入る筈もない。

それでも、首都圏で暮らすフーンさんはまだ恵まれている。アルバイトの少ない地方都市の日本語学校に入ったべトナム人留学生たちは、更に悲惨だ。人材派遣会社のバスに乗り、アルバイト先まで1~2時間かけて通うケースも珍しくない。筆者は、過去1年間に亘ってべトナム人留学生たちを取材しているが、宇都宮や岡山といった都市でそうした光景を目撃した。日が暮れた頃、20人以上ものべトナム人留学生が同じバスに乗り込み、アルバイト先の工場へと運ばれていく。途上国出身の留学生の暮らしぶりを象徴する光景である。留学生の大半がべトナム人という日本語学校も珍しくなくなった。フーンさんのクラスメイトも、15人のうち2人の中国人を除いて、全員がベトナム人だ。徹夜で働いている為、殆どの留学生は授業中、机に突っ伏したままである。彼女が通う日本語学校は、元々中国人留学生を対象に作られた。経営者は中国人で、日本語教師も中国人が務める。中国人が教師でも構わないが、“学校”とは呼べないような状況だ。しかし、留学生が授業で寝ていようが、学費を支払っていれば退学になることもない。フーンさんは、来年3月には日本語学校を卒業する。だが、家族への仕送りはおろか、借金返済の目処すら立っていない。そんな彼女らを待ち受けるのが、日本人学生の集まらない専門学校だ。日本語学校と同様、日本語など全くできなくても、学費さえ納めれば入学できる学校は幾らでもある。こうしてフーンさんらは、日本語学校と専門学校に通う4~5年間、借金と学費の為に“奴隷労働”を続ける事になる。ブローカーや日本語学校に「騙された」と気づいた時には、もう手遅れなのだ。

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新聞では最近、外国人実習生に対する“人権侵害”を取り上げた記事が目立つ。今年度中にも見込まれる実習制度の拡充に絡む動きだ。実習生の受け入れは、建設関係や農業・水産業等の約70の職種に限られていたが、拡充に依って“介護”等が加わる。実習制度は、途上国の為の“技能移転”や“人材育成”が目的だ。しかし、それは建前に過ぎず、実際には法律で禁じられた単純労働者を受け入れる手段となっている。未払い残業等の問題も後を絶たない。そんな状況を、新聞各紙は揃って批判する。だが、実習生への“人権侵害”には敏感な新聞も、留学生の“奴隷労働”には全く触れようとしない。留学生が多く働くのは実習制度からも漏れた職種で、労働環境も実習生よりずっと酷い。しかも、留学生は多額の借金まで背負って来日するにも拘らず、新聞は留学生の労働問題には無関心だ。何故か? それは、自らの配達現場が留学生の違法就労に依って支えられているからである。“新聞配達”は今、人手不足が最も深刻化した職場の1つだ。とりわけ、都会ではその傾向が強い。嘗て、配達現場を“新聞奨学生”として支えていた地方出身の苦学生が、確保できなくなっているのだ。そこに急増しているのが留学生である。きっかけを作ったのは朝日新聞だ。朝日奨学会は現在、首都圏だけで年200人を超すべトナム人を新聞奨学生として受け入れている。東京都内には、配達員全てがベトナム人という販売店まである。奨学生以外にも、来日後にアルバイトとして雇われる留学生もいる。他紙も含めれば、首都圏だけでベトナム人を中心に1000人以上の留学生が新聞配達をしている筈だ。1人300部を受け持っていれば、30万部以上がベトナム人留学生の手で配られていることになる。勿論、留学生が新聞を配ろうと問題ない。だが、彼らは法律の上限を超えて働いている。これまで、筆者は新聞配達経験のある60人以上のベトナム人留学生に取材してきた。その全員が、留学生に許される“週28時間”以上の仕事をやっていた。新聞販売店の経営者に頼み、留学生の仕事に丸一日密着したこともある。また、多くの販売店関係者にも話を聞いたが、口を揃えて「販売店の仕事は週28時間などでは終わらない」と認めていた。最早、新聞配達の現場はべトナム人学生らの違法就労無しでは成り立たない状況だ。

そんな中、新聞が留学生の“奴隷労働”問題を取り上げれば、自らの配達現場にも火の粉が及びかねない。それを恐れ、新聞各紙は留学生を巡る問題には知らんぷりを決め込んでいる。ベトナム人留学生が日本で“奴隷労働”をさせられようが、大半の日本人にとっては関心のないことだろう。新聞は毎朝、決まった時間に配達されるほうが便利だし、コンビニ弁当だって少しでも安く買いたい。宅配便にしろ、さっさと仕分けして早く届けてもらいたい。仮令“騙された”としても、留学生は自ら望んで日本にやってきた。しかも、留学を出稼ぎに利用しようと企んだ結果である。“奴隷労働”も自己責任だと言えるかもしれない。但し、留学生の増加が治安の悪化を招いているとなれば、話は違ってくる。最近、外国人犯罪が増加傾向にある。留学生や実習生等、来日外国人の検挙者数は昨年、1万689人に達した。1万人を超えたのは3年振りだ。その原因が、べトナム人に依る犯罪の急増である。ベトナム人の犯罪と言えば昨年暮れ、岐阜県内の公園で除草用に飼われていた山羊を盗んで食べた事件が話題となった。逮捕された3人には、留学生として来日していたベトナム人も含まれていた。また、ベトナム人の“ユニクロ窃盗団”もニュースで大きく報じられた。昨年3月には、ユニクロの盗品をべトナム航空の客室乗務員が“運び屋”として本国へと持ち帰っていた事件も発覚した。この事件でも、実行犯の一部は留学生だった。外国人犯罪全体では、在留者数の最も多い中国人等、他国出身者の検挙は軒並み減っている。その一方、ベトナム人だけは昨年、約4割も増加した。在留外国人に占める割合では7%に過ぎないべトナム人が、全体の15%の犯罪行為をしている。とりわけ目立つのが“万引き”で、5割以上がべトナム人に依る犯行である。ベトナム人留学生の暮らしぶりを見れば、犯罪が増えるのも当然だ。日本語学校から姿を消し、不法滞在者となってしまう留学生も目立っている。学費の支払いを逃れ、入管当局に見つかるまで出稼ぎに励むつもりなのだ。何れも、“留学30万人計画”が齎した負の現実である。とはいえ、ベトナム人留学生の流入が止まる気配は無い。

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4月22日、六本木ヒルズの一角にあるホールで、新たに来日したベトナム人留学生を対象にしたオリエンテーションが開かれていた。主催は、一般財団法人『日本語振興協会』という日本語学校関連の団体である。参加したベトナム人留学生は、午前と午後の部を合せて800人にも上った。スピーチを行った在日べトナム大使館の担当者には、会場の留学生からベトナム語でこんな質問が相次いだ。「仕事は直ぐに見つかりますか?」「どうすれば、ベトナムに残した妻と一緒に暮らせますか?」「家族を呼び寄せるには、どうすればいいのか?」――そんな光景を眺めながら、ベトナム出身の先輩学生として会場にいた青山学院大学大学院生のドュアン・ホン・チャンさん(23歳)は、溜め息が出そうになった。どう見ても、出稼ぎ目的の“留学生”ばかりなのである。「質問の内容からして可笑しいですよね。留学生には、30歳近い人や既婚者も大勢いました」。会場に選ばれた六本木ヒルズは、日本でも有数のお酒落な場所だ。そこでオリエンテーションを受けたべトナム人たちには、軈て徹夜の“奴隷労働”が待ち受ける。その落差が何とも物悲しいではないか。チャンさんは『在日べトナム学生青年協会(VYSA)』のメンバーだ。ベトナム人留学生が中心となって作られたVYSAは、ベトナム大使館が日本で唯一公認する学生団体である。VYSAの主な活動は、同胞たちの学業や就職を支援することだ。しかし、最近になってFacebook等で募金を呼びかけるケースが増えている。日本で亡くなるべトナム人留学生が相次いでいるのだ。昨年後半には神戸、今年2月には岡山、3月には東京で日本語学校に通うべトナム人が亡くなった。何れも、多額の借金を残してのことだ。チャンさんが言う。「亡くなった人たちは皆、突然死でした。夜勤のアルバイトをやり過ぎて、過労死した可能性もある。ベトナムの家族は貧しく、借金の返済などできません。担保に入れていた家や田畑を失ってしまうことになる。それを防ぐ為、私たちが日本にいるべトナム人に募金を呼びかけるのです」

今後、ベトナム人留学生は次々に日本語学校を卒業し、専門学校等へと“進学”していく。そんな動きを先取りして、彼らの受け入れに動き始めた大学もある。“留学生10万人計画”の達成過程で問題となった“サテライトキャンパス”が復活しつつあるのだ。サテライトキャンパスとは、大学が本部とは別に利便性の高い場所に作るキャンパスを指す。“10万人計画”の頃には、日本人の学生が集まらない地方の短大等が次々と都心に設けた。“東京”を売り物にして、出稼ぎ目的の中国人留学生を受け入れる為である。授業は形式に過ぎず、留学生もビザ取得の為だけに利用していた。同じことが現在、ターゲットを中国人からベトナム人に替えて起き始めている。九州に本部を持つN大学が都心に設けたキャンパス等は、明らかにこのケースに当たる。同キャンパスの学生は9割以上が留学生で、少し前までは中国人が大半を占めたが、この1~2年はベトナム人が急増中だ。「学費が他の私立大学よりもずっと安く、都心にあってアルバイトが探し易い。大学なのに日本語ができなくても入学でき、専門学校よりも長い4年間のビザが手に入る」と、べトナム人留学生の間で“評判”になっているからだ。4月8日、N大学の入学式を覗いてみた。聞いていた通り、400名以上の新入生の大半は留学生で、『君が代』が流れても会場は静まり返っている。式の途中では、安倍晋三首相と下村博文文部科学大臣の祝電が高らかに読み上げられた。安倍政権もお墨付きを与えているのである。少子化の影響は甚大で、私立大学の半分で定員割れが起きている。出稼ぎ目的の留学生受け入れを狙ってのサテライトキャンパスは、今後も増えていくに違いない。日本語学校を入り口にして専門学校、更には大学までもべトナム人を食い物にしていこうとしている。これが今、“30万人計画”で起きている実態である。

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それでも安倍政権は、同計画が「日本のグローバル化に貢献する」と言い張るのだろうか? 現在増えている留学生の大半は、出稼ぎが目的の“偽装留学生”なのだ。いくら日本に滞在しようが、日本語能力は向上しない。言葉など要らないアルバイトを徹夜でやって、日本語学校では寝ているのだから無理もない。単純労働者としては重宝しても、日本企業の海外進出で戦力となる人材など育成できる筈がない。安倍政権になって以降、とりわけべトナム人へのビザ発給が緩んでいる背景には、中国への意識もあるのかもしれない。ベトナムは歴史的に反中感情が強い国で、日本と同様に中国との間で領土問題も抱えている。そんなべトナムに留学ビザの“大盤振る舞い”で恩を売り、更に日本へと引き寄せようとしているように映る。しかし、それが政策判断なのだとすれば、寧ろ逆効果を生んでいる。留学生たちは“奴隷労働”を続けるうち、実は自分たちが食い物にされている現実に気づく。そして、日本に憧れを持って来日した若者たちが、次第に“反日”へと変わっていく。その結果が、ベトナム人犯罪の増加にも繋がっている。「人手不足で単純労働者が必要だ」と言うのなら、真正面から受け入れの是非を議論すればよいことだ。それもせず、“留学”と称して途上国の若者を受け入れ、“奴隷労働”に扱き使う。一方では、日本語学校や専門学校、そして大学でもがビザと引き換えに学費を控取する――いつから日本はこんな“ブラック企業”のような国になったのか? 安倍首相のモットーは、世界に誇れる“美しい国”作りだった筈だ。だとすれば、将来の国益の為にも、“留学生30万人計画”の旗など一刻も早く降ろすべきである。


出井康博(いでい・やすひろ) フリージャーナリスト。1965年、岡山県生まれ。早稲田大学卒。英字新聞記者を経て独立。著書に『襤褸の旗 松下政経塾の研究』『首長たちの革命 河村たかし・竹原信一・橋下徹の仕掛けた“戦争”の実像』(共に飛鳥新社)等。


キャプチャ  2015年7月号掲載


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