【私のルールブック】(14) 仕事の“凄さ”や“大変さ”を口にしない

先日、とあるバラエティー番組で、大御所の俳優さんが役者の仕事の難しさ・大変さを滔々と語られた。当然、出演者の多くは芸人さんやタレントさんであり、大御所の俳優相手に言い返せる筈もなく、微妙な空気の中、独演会状態。しかし、私だけは同業の役者で、先輩と雖も芸歴も大差ないことから、やんわりと突かせて頂いた。「役者が役者の大変さを謳うことほど見苦しいものはない」「大変ではない仕事などない」と……。全然やんわりじゃないですよね。ただ、どうしても我慢ならなかったので、言わずにはいられなかったのです。我慢がならなかった理由は2点。例えばプロ野球選手に、「プロ野球選手は大変なプレッシャーの中で、日々プレーをしているんだ。僕らは大変なんだ!」と声高に叫ばれても、視聴者の多くは引くだけでしょうね。だって、好きなことをやれてるんだから。好きなことをやって生活できてるんだったら、大変なことがあっても大変なんて思っちゃダメだし、況してや大変さを口にするなんて以ての外。好きな職業に就ける人なんて限られてる訳だから。抑々、大変じゃない仕事なんてないんですから。

そしてもう1点は、これは私が役者だからこその感じ方なんですが、「バラエティーのほうがよっぽど大変でしょ」と思っているからなんです。役者にはセリフがあります。そのセリフに対して監督からの指示が出ます。勿論、従うばかりではなく、飽く迄も共同作業なんですが。一方で、バラエティー番組はざっくりとした流れはあったとしても、基本はアドリブ。アドリブということは自分の言葉。自分の言葉ということは、ある意味、脚本家は自分自身ということであり、ディレクターさんからの指示も“できれば”レベルなので、一見、“ノリ”に任せて的な受け止め方をしてしまいがちですが、とんでもございません。こっちが「こう話そう」と決めていても、相手が予測していた方向とは真逆のリアクションを取ることなど日常茶飯事で、その都度その瞬間、不測の事態に対応しながら言葉を選び、且つ、笑いが取れたら言うことなし……みたいな環境の下、闘いは繰り広げられているのです。言うなれば、究極の即興アドリブ芝居ですよね。




私は昔から、後輩の役者を飲みに連れて行くと、「もっとバラエティー番組を観て、お笑いの人たちから盗んだほうがいい」と言ってきました。何故ならば、考えてもみてください。芸人さんのほうが芝居に対応できる方が圧倒的に多いでしょ。逆に、バラエティー番組に自力で適応できる役者は少ない。勿論、全員が全員ということではないんですが、芸人さんは会話の間合いを心得ており、しかも不測の事態に強い。そして何より、“自分を下に置く”潔さと勇気を持っている。この“下に置く”作業ってヤツがね、中々できるもんじゃないんですよ。ついつい、プライドが邪魔してしまう。“プライド逃げ”してしまう。けど、プライドを持ち過ぎてしまうと笑いは取り辛くなっちゃいますからね。芸人さんて、凄いですよね。だから、私は口が裂けても「役者業は大変だ」なんて言いたくないんです。“凄さ”や“大変さ”は自ら口にするのではなく、第三者から言われてナンボのものと思っているので。何よりしつこいようですが、大変じゃない仕事なんてないんだから!


坂上忍(さかがみ・しのぶ) 俳優・タレント。1967年、東京都生まれ。テレビ出演多数。子役養成に舞台の脚本・演出等、多方面で活躍中。


キャプチャ  2015年8月13日・20日号掲載
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