【1億総貧困時代】(02) “大阪府と生活保護”の研究――失業・離婚・独居老人・日雇い労働者…大阪が暗示する“ニッポン総貧困”の未来

生活保護受給率34.2‰――凡そ29人に1人が生活保護を受ける大阪府は、47都道府県の中で最高の保護率である。何故、大阪はこれほど保護率が高いのか? 数字を分析していくと、大阪の現状が日本の未来を暗示しているようにも見える。 (本誌編集部)

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2014年度の日本の生活保護予算は約3.8兆円(国と自治体の負担割合は3:1)。2005年度は約2.6兆円であり、この10年間で約1.5倍に膨れ上がっている。政府は制度の見直しに取り組み、保護費の圧縮に努めているが、国及び自治体の財政を圧迫しているのが実情だ。生活保護を受けている人の割合(=保護率)には、都道府県で大きなばらつきがある。保護率は、地域性と密接に関連していると言えるだろう。北陸や中部地方の内陸県が低いのに対して、関西の府県や北海道・高知・福岡等が高い。最も高いのは大阪で、保護率34.2‰(1000人当たりの受給者数)は全国平均16.7‰の2倍以上である。大阪府の保護率を高めているのは、府の人口の3割を占める大阪市だ。大阪市の保護率は55.3‰(2015年3月現在)で、市民の18人に1人が生活保護を受けている。大阪市の保護率は、何故ここまで高いのか? 保護率が高い主な原因として、市の福祉局生活福祉部保護課は次の4点を挙げる。先ず、失業率が高い点。全国が4.0%であるのに対し、大阪府は4.8%だ(2013年平均)。背景には、大阪経済の地盤沈下がある。大型の公共事業は、約10年前の関西国際空港2期事業が最後となっているし、大阪に単独本社を置いていた上場企業が本社機能を東京に移したり、複数本社としたりするケースも後を絶たない。離婚率(人口1000人当たりの離婚件数)も高い。全国が1.84であるのに対し、大阪市は2.35(2013年)。自ずと母子家庭等への保護は多くなる。高齢者世帯も多い。単身又は高齢者夫婦の世帯の割合は、全国が19.4%に対し、大阪市は21.3%だ(2010年)。その内、単身世帯は全国が9.2%に対して大阪市は13.5%で、とりわけ単身世帯の多さが保護率を高めている。4点目に指摘されているのは、日本最大のドヤ街“あいりん地区”の存在だ。日雇い労働者の高齢化は著しく、生活保護が増加している。あいりん地区について留意すべきは、大阪出身者ばかりでなく、全国の日雇い労働者の受け皿となっている点だ。労働者の出身地別構成は、大阪市38%・大阪府下14%・他都道府県48%(2013年度、越年対策事業調査)。あいりん地区の問題は、大阪だけではなく、日本の問題なのである。あいりん地区のある西成区の保護率は235.2‰と突出している。実に、区民の4人に1人が生活保護の受給者なのだ。一方で、超高層マンションが林立する福島区の保護率は全国平均以下。大阪市は、地域に依って極端に表情を変える都市でもある。




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保護率が高い原因に、「失業率の高さ・離婚率の高さ・高齢者世帯の多さ・あいりん地区の存在がある」というのは市の公式見解だが、他にも大阪特有の事情があるようだ。市行政の事情通が言う。「大阪では、日常会話で生活保護のことがよく話題に出る。例えば、病院で診療を済ませた人が会計をしないで帰ったりすると、会計待ちをしている者同士で『あの人、生活保護やろ?』なんていう会話になる。そんな風に生活保護が身近だから、受給に対する心理的ハードルは低い。受給資格を得る為の指南をする者も沢山いる。当然、不正受給も多い。市は生活保護の適正化を大きな目標に掲げているけど、大阪の気風があるから改善は容易ではない」。勿論、市も手を拱いているばかりではない。受給者が自動車を所有しているというような通報があれば、確認は取っているようだ。『生活保護法』第29条に基づき、預貯金残高や給料・年金等の調査も行っている。尤も、不正受給者には反社会勢力と関係のある者も少なからず存在し、市の一職員として不正防止に正面から取り組むのは難しい側面もある。因みに、保護申請があった際は、大阪府警へ暴力団員に該当しているかどうかを照会しており、暴力団員であることが判明した際は却下している。但し、急迫状態は除くことになっているので、抜け道が無い訳ではない。現在、市は府警との連携に力を入れている。一例は、2014年7月1日より実施している『留置施設等収容情報通知制度』だ。従来は、生活保護受給者が逮捕・勾留されて留置施設等に収容された場合、各区保健福祉センターはその事実を把握することができず、翌月の生活保護費を支給することがあった。そういった本来必要とされない支給を止める為に設けたのがこの制度で、府警は被留置者のうち、「生活保護受給中である」と認められる者の収容情報を市に通知するようになっている。不正受給防止に活躍しているのが、2012年4月に全区に設置された不正受給調査専任チームだ。ポイントは警察官OBを含んでいることで、調査力は大きく向上している。悪質な不正事案については刑事告訴で対応するという姿勢は、抑止力となっている筈だ。2013年の逮捕者は14名。逮捕の理由は、自立して生活していける収入がありながら、生活保護が必要であるかのように装い、生活保護を詐取する“就労収入の無申告”が多いが、現役の暴力団員でありながらそのことを偽り、6ヵ月分・60万円余りを受給したという事案もある。

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様々な取り組みに依って、大阪市の保護率は2012年度の57.1‰をピークに、僅かだが減少に転じている。雲間から光が射してきた状況と言えるのかもしれないが、更に適正化を進めるには、国政レベルでの抜本的な改革が必要だろう。「現状の生活保護は、『働くくらいなら受給者のままでいい』と考える者を認める制度だ」と話すのは、前出の市行政事情通だ。「働く能力を持っていても仕事に就かず、生活保護を申請する者に市は就労支援を行っている。ところが、転職を繰り返したり、元々あまり仕事をしてこなかったというような者は、どこで働いても長続きしない。自立する気持ちの無い者に就労支援をしても、結局は無駄。色々と理由をつけられたら不正受給として扱うこともできず、支給する他ない。こういうケースは、若い層に多く見られるのが大きな問題だ。尤も、これは大阪だけのことではないのだろうけれど」。高齢化社会が進み、他方、ニート等の労働に適応できない若年層も増えている日本。大阪市の生活保護問題を“特殊なケース”と捉えることはできないだろう。生活保護は“国民に健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度”だが、今や制度は国そのものを飲み込もうとしている。


キャプチャ  2015年8月号掲載


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テーマ : 貧困問題
ジャンル : 政治・経済

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