プーチンと習近平が目論む“世界新秩序”――“ユーラシア大陸制覇”という中露の思惑が交錯し、そこに割って入るドイツの親和外交…日米首脳も憂慮する事態の行く末は?

intelligence 01
よく尋ねられる質問がある。「情報を入手するコツは何ですか?」。最近はそれに加えて、「プーチンは何を考えているのか。習近平もわからない。世界は不安定なのか。情報が欲しい」という問いも増えた。コツという言葉には、どこか“巧いやり方”というニュアンスがある。細やかな信念の1つとして、「巧いやり方はしない。できれば王道を往きたい」。その王道は3つあると、情報の現場で考んている。第一に、「どうなりますか?」と聞かない。「こうすべきだ」と議論する。例えばインテリジェンス――即ち、情報機関の当局者も軍の情報将校も、行政や政治の決定に与る人々も、重い守秘義務を背負っている。「どうなる、どうする」と聞かれて答える筈がない。答えるのなら偽者か、撹乱情報だ。だが、彼らも別角度の情報は欲しい。情報とは水面下の事実等に限らない。事実を根拠とする異見なら、情報に含まれる。私は共同通信の地方支局で、新人記者として末端の刑事の家を夜回りする時から、東京本社の政治部記者として総理に私邸で向かい合う時まで、非力ながら常にこの原則を己に課してきた。その発展型を手探りしつつ、現在の独立系シンクタンク社長としての情報収集がある。相手が胸の内で考えに考えている勘所を突く議論をすれば、本物の情報を持つ人なら必ず応戦する。その応戦ぶり・主張に、情報がたっぷりと盛られている。彼らは評論家ではなく、実務者だから。第二に、謂わば敵方からこそ情報を取る。世界を敵味方に分けることは決してしないから、正確には「意見の違う情報にこそ接する」ということになる。例えば、新聞は朝日新聞を最も長く購読している。そして、一番時間をかけて熟読吟味する。何れも、外国の工作で作られた偽情報である“従軍慰安婦”や“南京大虐殺”の記事も熱心に読む。すると、総理官邸や外務省・防衛省・警察庁の誰への取材がこの記事の元になっているか、わかる時がある。その人物に電話する。議論になる。意見が違うから、相手は懸命に反論する。そこに、中韓の水面下の動きが立ち現れることがある。意見の合う人と群れあっていても、情報は入らない。同じ所をぐるぐる回っているだけだ。第三に、小さなニュースにこそ目を向ける。特に、“短信”というやつだ。最近では、安倍総理がロシアの下院議長と5月21日に会談した短い記事がそれだ。メディアの公開情報を付き合わせただけでも、異例の展開がわかる。そこに若干の非公開情報を加えれば、事実はこうだ。

先ず、このナルイシキン下院議長は単なる議会人ではない。プーチン大統領の側近中の側近だ。それが、安倍総理とたった15分しか話していない。通訳を挟むから、事実なら正味7~8分だ。ところが、ロシア側は“50分”と発表している。会談の中身の発表が食い違うことは日常茶飯事だが、会談時間そのものがこれほどかけ離れるのは珍しい。背景は、ナルイシキン議長がアメリカとEUからウクライナ問題を巡り入国禁止措置を受けていることだ。日本に入っただけでも外務省は心配し、総理が会うことに強く反対した。ロシア側は諦めず、森喜朗元総理に働きかける等して、最終的には安倍さん自身が決断し、会った。この日、総理は官邸からホテルニューオータニに入り、パプアニューギニアのピーター・オニール首相との昼食会に臨んだ。そのホテルの一室にナルイシキン議長を呼んで会談し、午後1時10分に官邸に戻っている。官邸を避けたのは明らかにアメリカへの配慮だが、新聞はこれを外務省の発表のまま「下院議長の表敬」と総理動静に記した。表敬でホテルに呼ぶか? ポイントを絞った実務会談だったことがわかる。ナルイシキン議長は、「年内に訪日する。その代わり、条件がある」というプーチン大統領らしい端的なメッセージを携えていた。「総理と会わずに帰れない」。外務省内でロシア課と北米1課が対立した末に、「会わない」と決まった。アメリカを代弁する、いや、向き合う北米1課のほうがロシア課より発言権は強い。それが急転、総理の決断で会談が設定されたから、ロシア側は「安倍総理はこっち寄りだ」と考えてしまった。それに気づいた官邸は、菅官房長官が定例記者会見で問わず語りに、「プーチン大統領の口頭メッセージを総理が受け取った」と公表した。だが中身は一切言わず、「プーチン訪日の件か?」との質問に「そんな話はしていない」と答えた。実際のメッセージは、「年内に訪日するから、ウクライナに絡む日本の対露制裁を解除してくれ」、これだけだった。ところが、日本の制裁は実効性が無い。ロシアの要人に入国禁止や資産凍結の制裁を掛けていることになっているが、その要人とは誰か、公表すらしていない。形だけG7に合わせているに過ぎない。この同じ日に開かれた『日本・ロシアフォーラム』に、安倍総理はメッセージを寄せた。「北方領土問題の解決とロシアとの平和条約の締結は、総理大臣として最重視する」。安倍総理の意志は明確である。「アメリカと国際社会がどうあれ、日本には北方領土の問題がある。プーチン政権と接触するのは当然だ」――これが総理の胸の内だ。外務省とは姿勢が違う。安倍総理は、財務省・外務省の言うことを聞かない珍しい総理になっている。




intelligence 02
では、プーチン大統領は日本に何を求めるか? 実害の無い制裁に強く反発する真意は、「私が試みている世界の新しい秩序作りを支持する姿勢を見せてくれ」である。何故か? プーチン大統領は、「ソ連の領土・勢力を復活させよ」という国内の圧力に苦しんでいるからだ。抑々、プーチンは何故大統領になれたか? 前任のエリツィン大統領は“偉大なロシア”の再建意志に乏しく、代わりにそれを目指す人物が必要とされた。1991年12月8日、偶々真珠湾攻撃から半世紀のこの日、エリツィンは歴史を変える行動を起こした。当時のエリツィンは『ロシア共和国』大統領。このロシア共和国は、まだソ連の一部だった。力の衰えたソ連のゴルバチョフ大統領を差し置いて、極秘にウクライナのクラフチュク大統領・ベラルーシのシュシケビッチ最高会議議長(共に当時)と会談し、「この主要3地域がソ連から離脱する」と合意に達した。これがソ連崩壊の引き金を引き、僅か17日後のクリスマスにゴルバチョフが辞任し、あの強国だったソビエト社会主義共和国連邦が終焉を迎えた。エリツィンはロシア共和国大統領から『ロシア連邦』大統領となり、アメリカと接近、国際通貨基金(IMF)に指図されるままに一気に資本主義へ転換を図り、ロシア経済に混乱と打撃を齎した。おまけにチェチェン侵攻が失敗し、ロ シアの威信は甚だしく低下した。新興財閥に依る腐敗が進行、財政危機・金融危機に襲われ、エリツィン大統領はデノミをやって次から次へと首相を解任し、そして酒に溺れ、末世と言う他ない混迷の果てに、1999年の大晦日に突然、辞任を表明。後任には、『KGB』出身のプーチン首相(当時)を指名した。

プーチンは、KGBが名前を変えた『ロシア連邦保安庁(FSB)』の長官として、エリツィン大統領の汚職を追っていた検事総長を女性問題の罠で失脚させ、当時の首相に依るクーデター計画も潰した。エリツィンは、プーチンに後事を託す他無くなっていた。一方で、この経緯の為にプーチン新大統領は、エリツィン時代の逆を行くことを宿願として予め背負わされていたのである。復古的な統制経済を導入して、GDPを一説には6倍にも回復させ、チェチェンでは残忍に市民も虐殺する軍事作戦で抵抗を踏み砕き、新興財閥を脱税摘発・実業家逮捕という手段で解体し、そして柔道家として自らを演出して、強い意志で節制した強靭な肉体をアピールしてきた。全て、エリツィンの裏返しである。それが達成されると、ロシアの深部にいる支持基盤――即ち、ソ連時代の栄光を望む極右勢力に依って、今度は“領土の回復”という無理筋の渇望を、プーチン大統領は新たな重荷として背負った。プーチンの強権は、“強いロシア”を伝統的に望む国民の圧倒的な支持に支えられたが、他方で反対派の政治家・軍人・諜報員、そして財界人・ジャーナリストの暗殺がイギリスを始め西側から指摘され、プーチン大統領が全面否定して溝が深まった。経済も、頼みの資源が安値に襲われ、野党勢力が膨らみ、国民の支持率も低下した。こうなると深部の支持基盤からも、「お前は本当にソ連の領土を回復できるのか?」という圧力が強まる。こうして、プーチン大統領が上辺とは裏腹に追い詰められ、踏み切らざるを得なかったのが“旧領土への侵攻”だ。

intelligence 03
「アメリカ軍は動かない」という読みもあった。プーチン大統領が否定しても、実際はロシア軍を先ず、ウクライナの一部だったクリミアに送り込み、クリミアを事実上、ロシアに編入してから、今度はウクライナの東部に出兵、その一部を奪っていることについて、日本だけではなく世界のメディア・学界・論壇では誤解が蔓延している。特に、日本では「クリミアやウクライナでロシアの脅威が欧米に対して高まった」という認識ばかりだが、本当はロシアの威圧感は地に墜ちている。クリミア半島は、電気・ガス・水道を自給できない。ロシアはクリミアを養う為に、財政負担が増える。半島の一角であるセヴァストポリにロシア黒海艦隊の基地は確保したが、ロシアの真の問題は経済と財政不安だ。アメリカ軍が展開しない今、艦隊基地の意義は嘗てほど高くない。そこで、リスクはあってもウクライナ本体に兵力を送り込むと、これが高がウクライナ軍に勝てない。ウクライナ軍は陸・海・空軍で実質18万人程度、ロシア軍は100万を大きく超え、数だけではなく陸・海・空軍以外に戦略ロケット軍・航空宇宙防衛軍・空挺軍の独立兵科があり、空爆や敵地侵攻能力・ミサイル戦能力は比較にもならない。そして、NATO軍は出てきていない。アメリカ軍も、オバマ大統領の優柔不断に依って出る気配すらない。だが、ロシア軍は勝てない。イギリス海軍の情報将校(大佐)は言った。「プーチンが中途半端だ。アメリカ軍が動かない隙を突くなら、ロシア軍を本格展開させる選択肢もあるのに、まるでニンジャのように身を隠して戦わせるから、ウクライナの大規模な占領ができない。ロシア軍の脅威感は大きく下がったね」。プーチン大統領が唐突に「核兵器の使用も検討した」と公言した謎は、ここに真相がある。プーチンは流石に情報に精通している。西側のこの分析を把握して、「忘れるな。ロシアは核大国でもある」と強調し、軍の抑止力を確保しようとしたのだった。だが成功はしていない。

この苦境が端的に表れたのが、5月9日にモスクワで開いた『対ドイツ戦勝70周年記念式典』だった。10年前の同じ式典には、西側も含め53ヵ国の首脳が参列したが、今回はたったの20ヵ国。前回は小泉首相・ブッシュ大統領が参列した日米を始め、G7からの参加はゼロとなった。「ウクライナでの武力作戦に反発して」という報道ばかりだったが、それは謂わば建前であって、ロシアが最早怖くなくなったからである。その証拠に、旧ソ連の国々からの出席が激減した。10年前は11ヵ国、今回は6ヵ国。更に、ベラルーシやウズべキスタンが不参加なのもロシアには痛い。例えば、前者のルカシェンコ大統領は、プーチンが正しく旧ソ連の経済圏復活を狙って提唱した“ユーラシア経済連合”構想に賛意を表明していたのに、これでは構想が絵空事になっていく。ロシアのこの実像は、世界を不安定にする。世界はいつも“圧政からの解放”を掲げつつ、強くてわかり易い大国が軸として存在することを望む。最も鋭敏に反応しているのがヨーロッパだ。フランスの優れた歴史家であるエマニュエル・トッドが『ドイツ帝国が世界を破滅させる』という趣旨のインタビュー集を上梓した。一読して胸に迫るのは、フランス人の根深いドイツへの恐怖感である。ナチスに燃やされようとしたパリを解放したのは、ドゴール将軍のフランス兵ではなく、大西洋を越えて遠征してくれたアメリカ兵だった。フランス軍の将軍は、ワインが入ると何度も私に、「パリに進軍してきたアメリカ兵は劣等感に悩んだそうだ。『この文化には敵わない』とね」と語った。隣国・ドイツの脅威に対抗する為にフランスが頼らざるを得なかったアメリカが今、ありありと衰えて、ドイツの頭を抑えてくれる筈のもう1つの力であるロシアも、ウクライナすら取り戻せない。トッドは“ソ連崩壊”を予言した。流石にロシアの実態を見抜いている。「社会は案外に回復しているが、蛮力は無い。その為にドイツを過大視する。嘗て、ソ連が東ヨーロッパを支配した時は寧ろ軍事負担に苦しんだが、ドイツは軍事力は依然としてアメリカに頼んでおきつつ、東ヨーロッパの安くて優秀な労働力をEUの東方拡大に依って易々と手に入れ、フランスはそれに従属して“ドイツ帝国”の拡大に手を貸している」というのがトッドの説だ。

intelligence 04
東欧を巡る分析は正確だが、ドイツが本当にEU全体を己の帝国化しているのなら、ドイツ人の稼ぐマネーを食べてしまうギリシャはとっくにEUから追い出され、イタリア・スペイン・ポルトガルもドイツの直接的な内政干渉で経済改革をせねばならないだろう。将来の「ひょっとしたら…」という話を、既に現実かのようにトッドは語る。そして、フランスが何故ドイツの経済覇権に従属せねばならないのかという肝心の足元の分析が無い。オランド大統領とル・モンド紙を「無能だ」と激しく非難するばかりだ。つまり、「フランス人はドイツ人が怖い。その規律を真似できないから」というフランスの本音が、トッドという天才だからこそ浮かび上がっている。こうした中、もう1人、世界の新秩序を本気で模索しているのが、中国の習近平国家主席だ。プーチン大統領のそれは守りの模索、習近平主席は攻めの模索に見えるが、実は追い詰められてのことという側面は深いところで共通する。前述の対ドイツ戦勝式典に習主席が現れると、プーチン大統領は「露中関係は今や、前例無き高水準に達した」と絶讃したが、習主席はただ便宜的に参加したことは明らかだ。先ず、安倍総理とプーチン大統領の間にある友情と親近感に罅を入れ、9月に北京で開く『抗日戦争勝利70周年記念』の軍事パレードを盛り上げたい底意が見え見えである。習主席は式典の前日に、大戦末期に旧満州に侵攻した旧ソ連軍兵士18人と面会し、「中露が記念行事を実施するのは、歴史を胸に刻む為だ」と言いつつ、記念メダルを1人ひとりの胸に掛けた。これは反日工作の一環だが、危うい振る舞いだ。中華人民共和国が成立したのは、大戦が終わって4年後の1949年10月であり、中国共産党の八路軍がナチと戦った事実は欠片も無い。それどころか、日本軍と相見える機会も実は少なく、日本軍と戦ったのは国民党軍だった。

更に習主席は、「先の大戦はファシズムとの戦いの勝利。日本は謝罪し続けろ」と強調するが、ファシズムとは独裁や全体主義を指し、現在の中国が「独裁ではない」という声は世界にも中国にも無い。習主席が大戦終了後70年の今年に、このように強調すればするほど中国の主張の正当性が失われ、その中国の反日に寄り添う韓国も面目を失う。だからこそ、安倍総理のアメリカ上下両院合同会議での演説があれほどの成功を見たのだ。昨年夏に私はワシントンDCを訪れ、「中国は“反日”という目的1つに、アメリカ国内だけで年間約1兆円の工作費を使い、韓国の反日資金もそれに依存している」という情報をアメリカのインテリジェンスと突き合わせ、確認した。この巨費を投しても、ただ一度の安倍演説に敗北してしまった背景には、習主席の無理な演出があり、縋るものが乏しいプーチン大統領がそれを過大評価するから、余計に中国の掲げる反日に説得力が失われる。何故、習主席はここまで“70周年”にのめり込まねばならないのか? それは、中国共産党の独裁のレジティマシー(正統性)が反日ではなく、“抗日”にしかないからだ。この“抗日”という“中国人民が意識すべき共産党への恩義”は、江沢民国家主席以来の徹底的な反日教育と、日本兵が現実には全くあり得なかった種類の暴虐をやり尽くすテレビドラマと映画で、中国の民衆に刷り込まれている。だがそれでも、世代交代に依って「昔は昔。今は日本やアメリカのような自由、そして日本社会の清潔さ・安全が欲しい」(北京大学の学生)という国民はどんどん増える。

intelligence 05
何より致命的なのが、中国経済が未来を失っていることである。中国は前政権の胡錦濤主席・温家宝首相の下で、日本を抜いて世界第2位の経済を得た。しかし、それは安くて膨大な労働力に依る“世界の下請け工場”としての成功であり、中国の人件費がここまで高くなれば最早昔話だ。次の下請け工場は、東南アジアを経て中南米になる。世界は常に予言する。準備不充分でも次のオリンピックがリオデジャネイロで開かれ、ローマ法王に史上初めて中南米からアルゼンチン人が就いたのは、その予言だ。中南米の人件費が高くなれば、次はアフリカが下請け工場になる。中国には戻ってこない。従って、中国経済は日本のように付加価値の高い製品を作る経済に脱皮せねばならないが、それを阻むのが国有企業だ。中国の最大の問題は、民間の産業資本が育たず、名目はどうあれ、実態は国有企業の群れが経済を支配し、それが共産党・軍と癒着して経済も社会も縛っている。だから、習主席は党と軍の腐敗をあそこまで断罪する。ところが、腐敗は広く深いから、習主席は自派閥だけは不可侵として汚職を摘発しない。その為に、党と軍に隠れた不満が高まり、習主席は暗殺の危機に直面している。日・米・英・仏のインテリジェンスが揃って「ここまでやるか」と驚いているのが、中国と朝鮮半島の首脳への警備強化だ。習主席・金正恩第1書記、そして朴槿恵大統領の身辺警備は、最早「動く座敷牢」(警察庁の専門家)と揶揄されるほど厳しくなっている。日本の明治維新は、政治や軍事は謂わば“お上”が改革したが、経済は民間に渡していった。坂本龍馬さんも、経済は地下浪人の身分だった岩崎弥太郎に預けた。その為に民間の産業資本が育ち、それが列強に侵されない日本の根幹を造った。私たちは敗戦後の教育で、「アメリカは経済まで民主化して下さったから、占領軍は財閥を解体した」と教わったが、アメリカは「日本の力の源泉が民間経済の強さにある」と知っていたから、それを削ぐ為にこそ解体した。大戦前の財閥には、軍部との癒着を始めマイナス面も大きくなってはいたが、私たちが歴史を学び直さねばならないのは、中韓の反日工作如きに対抗する為ではなく、世界に共通する成長と安定の源泉を知る為である。

習主席は暗殺されずとも、いつ突然、失脚しても可笑しくはない。習主席が腐敗追放に依って一般国民の喝采を浴び、権力基盤を一部強化しているのも事実だが、如何せん中国経済を再生せねば明日は無い。経済を改革できる人材と、西側が期待した李克強首相を、権力闘争優先で習主席が封じ込め、李首相は体調まで不良となっているのは、文化大革命を始め、権力闘争に生きてきた中国共産党の金属疲労と金属破断の恐れを感じさせる。中国経済の残った希望は、実は“格差”である。日本と違い、テレビや車を買う為に命がけで働く貧しい国民が10億以上も存在することが、内需を喚起するからだ。だが、その10億が反共産党勢力と結べば、共産党独裁国家としての中華人民共和国は、その王朝が終わる。情報のプロであるプーチン大統領はそのリスクを知るから、日本への熱い期待を変えない。水面下では、「歯舞・色丹の2島は返還。国境線をそこで引いて平和条約を締結。国後・択捉は帰属はロシアだが、露日の共同開発特区にする」という案を既に安倍総理に提示した。しかし、第3次安倍政権の中枢は「拒否する」と私に明言している。そこでプーチン大統領は8月に、日本海で露中の共同軍事演習を予定し、更に突如、北方領土に島民(“元島民”と記述する日本のメディアは国益を損ねる)が訪ねる“ビザ無し交流”を一時中止といった圧力を掛け続けている。だが、プーチン大統領は極右勢力『旧ソ連共産党』の生き残りに動かされ、今後もソビエト時代の版図を回復するまで使い回されるという危うい存在でもある。版図は回復できないから、習近平主席とは違う理由で、意外な失脚となる可能性も否定しきれない。

intelligence 06
統一ドイツの長期政権を率いるメルケル首相は、プーチンさんの寂しき記念式典が終わった翌日の5月10日にモスクワを訪れ、プーチン大統領を慰めつつ、政権の安定度を自ら探った。そして同じ5月の下旬に、反ロシアの拠点国の1つであるラトビア(ロシアに怨念を持つバルト3国の一角)の首都・リガで開いた『ウクライナなど旧ソ連6ヵ国とEUの東方パートナーシップ会議』で、ウクライナのクリムキン外務大臣が「軈てEUに加盟できる保証をくれ」と懸命に訴えたが、ドイツは明らかにロシアに遠慮して、どんな言質も与えない共同宣言に終わった。前出のトッドが恐怖感を持って語る“ドイツ帝国”にしては、慎重にして弱気だ。メルケル首相は「ドイツ車を売る為に中国に魂を売った」と批判されるが、ドイツの情報機関の動きを見れば、冷静に中国の未来を計っているとわかる。一方で、ドイツは戦争をしない時のほうが周辺国に支配権を持つのは事実だ。ドイツは日本と違い、戦えば負け続けである。日本はただ一度しか負けていない。初体験だったから、負けた時にどうしていいかわからず、憲法の原案を英語で受け入れた。ドイツは徹底的にナチの責任にして、実質的に戦争責任を免れた。対照的でありつつ、共に敗戦国であり非核保有国の日独が、世界の新秩序に向けてカギを握る2国にはなっていくだろう。「世界は予言する」と述べた。イギリスの総選挙で『スコットランド民族党』が大勝したのは、イギリスの分裂騒ぎが終わらないことを意味する。大英帝国に地上発射核は1発も無い。全て、潜水艦発射の核ミサイルだ。その原潜の母港はスコットランドにある。イギリスが分裂して経済も軍事も一変すれば、国連安保理常任理事国の椅子が1つ空く可能性は、全くのゼロではない。それを埋めるなら、日独が最強の候補だ。

中露の最後の対日・対独カードは、その安保理での拒否権にある。メルケル首相の中露への低姿勢のサービス外交は、そこに根っこがある。そして、全ての背景は、アメリカが弱ったことだ。オバマさんの優柔不断だけではない。根幹は、イラク戦争でアメリカ軍がテロリストに通用しないことを自ら証明したことだ。私も戦地でそれを目撃した。ドルを裏打ちする軍事力が揺らげば、ドルの1人勝ちは終わる。ロシアも、実態は願望ばかり大きくて、使えもしない核を見せびらかすだけだ。中国は共産党支配を終わらせないと経済が立ち行かない。新冷戦等ではない。ここはトッドとも一致する。日独という2大国にはなり得ない国が、世界を動かすのだ。その日本に必要なのは、何よりも“情報”だ。『特定秘密保護法』という世界レベルからすれば甘きも甘い情報関連法で、「小説も映画も作れなくなる」と主張していたメディアの多数派の人々はどうしたのか? 法の施行後も何も変わらず、冒頭に記した私の情報入手も何らの影響も受けない。占領軍仕込みの空論を止めて、現実をど真ん中から掴むことを始めよう。それが、私たちの真の“敗戦後70年”である。 《文中一部敬称略》


青山繁晴(あおやま・しげはる) 独立総合研究所代表取締役社長兼主席研究員。1952年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。共同通信・三菱総合研究所を経てシンクタンク経営者。文部科学省参与・総務省消防審議会委員等の公職多数を無償で務める。著書に『ぼくらの真実』(扶桑社)等。


キャプチャ  2015年7月号掲載


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テーマ : 国際政治
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