超々高齢化社会が迫る、危機対策を急げ――支援団体が“家族代わり”に、施設に入りたくない人の受け皿作りも

日本が間もなく迎える超々高齢化社会では、様々な歪みが生まれることが予想される。孤独死・認知症・老人犯罪(加害・被害両方)の3大問題。だが、対策の芽もあちこちで生まれ始めている。老後の備えは早いに越したことはない。その取り組みを紹介する。 (鵜飼秀徳・河野紀子・林英樹・武田安恵)

老いへの不安から逃れようと、ある者は“終の棲家”を確保し、穏やかに最期を迎えようとする。ある者は、蓄えを着実に増やすことで有事に備える。そしてある者は、できる限り働き続けて日々の糧を失わない努力をする。ここまで準備しているのだから、何か起こったとしても今後、転落人生を歩むことはないだろう──。皆、心のどこかでそう考えている筈だ。しかし、これらの方法はどれも今までの世代がしてきた老後対策を踏襲しているに過ぎない。2040年には、国民の3人に1人が65歳以上になる。「皆が老人になる」という状態が全国で一斉に起こるところに、超々高齢化社会の恐ろしさがある。家族を含む若い世代の人口は減少する一方。老いた者同士が支え合わねばならない“老老扶助”の時代がやってくる。家やお金があろうとも、孤独死・認知症・老人犯罪といった問題に対する支援の手が行き渡らない時代がやってくるのだ。言い換えれば、それは格差を生み出す“家族頼み”“お金頼み”という根本原因の解決ができていないからだ。

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『釧路地域SOSネットワーク』の訓練の様子。徘徊する高齢者を少しでも早く見つけられるよう、地域の住民が協力し合う。

①地域総出でパトロール
急速に増えるお年寄りを支えるセーフティーネットを作らねばならない──。今、日本各地の自治体では高齢者を救済する仕組みを作る動きが急速に広がっている。年間1万人を超える認知症の行方不明者。彼らを助ける為の対策は、その代表例だ。認知症になると家の中のみならず、外をうろうろ歩き回る徘徊の症状が増える。周囲が知らないうちに家を飛び出す為、行方不明になり易い。1人で電車に乗り、遠く離れた他県で保護され、そのまま老人施設で何年も暮らしていたということも起こっている。そうした認知症患者の命を守り、家族を支える枠組みを作り上げた事例がある。北海道釧路市の『釧路地域SOSネットワーク』だ。釧路では特に、徘徊する高齢者の逸早い保護が求められる理由がある。釧路の年平均気温は6度。夏場の僅かな期間を除き、発見が遅れれば凍死する可能性があるからだ。行方不明者の中には山間部に迷い込み、クマに襲われたと思われる事例もあった。過酷な自然環境が、SOSネットワークの整備を急がせた。仕組みはこうだ。認知症を患った高齢者が自宅から消え、家族が警察に捜索を依頼すると、警察は身体的特徴等を書いた“SOS手配書”を作成し、市内の協力機関に一斉にファックスする。そこにはタクシー会社やトラック協会・新聞販売店・郵便局・漁協等、屋外で仕事をするありとあらゆる組織が含まれる。また、地元ラジオ局の『FMくしろ』では番組を中断し、徘徊高齢者の情報を断続的に放送する。“市民の目”に依って一斉に捜索が始まるのが、このネットワークの特徴だ。だがそこまでしても、毎年40~50人規模の保護対象者のうち、数人は既に死亡、或いは行方不明のままだ。だが、行政と民間の垣根を越え、地域全体で高齢者と家族をサポートするネットワークの効果は大きい。「あの人、見つかったか?」と市民が他人を気遣う風土が生まれた。認知症や徘徊に対する偏見・差別も少なくなった。




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②家を借りられない高齢者を支援
今後、増えると予想されるのが“家が借りられない”トラブルだ。核家族化や生涯未婚率の高まりで、身寄りのない高齢者は増える傾向にある。その為、新たに家を借りる際の身元保証人や連帯保証人がいない人が増えている。この問題に対して動き出したのが福岡市だ。2014年10月から始まった『福岡市高齢者住まい・生活支援モデル事業“住まいサポートふくおか”』は、賃貸住宅の住み替えに伴う様々な問題に対して支援する仕組みを、民間企業・団体の助けを借りて構築している。家を借りる際、いくらお金があっても保証人や緊急時にサポートする人がいないと、貸す側は賃貸に応じてくれない。孤独死のリスクがあるからだ。そこで、福岡市の委託を受けた市社会福祉協議会を通じ、市に登録した支援団体が高齢者の家族代わりになるようなサービスを提供する。それは、日常的な見守りから病気やけがで倒れた際の緊急対応、万が一亡くなった際の家財処分や葬儀、年金支給手続きの停止といった死後の事務まで、実に幅広い。賃貸物件も、社会福祉協議会の協力を通じて事業に理解のある不動産事業者から借りることができる。福岡市は政令指定都市の中で最も借家率が高く、全国平均の35.5%を大きく上回る61%だ。単身世帯率も47.7%と、全国平均の32.4%を超える。今後増えるであろうトラブルに逸早く手を打った形だ。事業を担当している福岡市社会福祉協議会の栗田将行氏は、「マンションの老朽化に伴う建て替えで退去を迫られ、初めて自分が家を借りられないと知る高齢者が多い」と話す。

行政が動き出す一方で、個人にも選択的な行動が求められている。中でも、「人生の最期をどこで過ごすか?」と考えることは、老後の転落の歯止めに繋がるだろう。これまで住んでいた家をどうするか考えることがきっかけとなり、自分の財産や健康状態等の問題に向き合う機会になるからだ。首都圏で高齢者施設の入所の仲介に携わる『えんカウント』(東京都中央区)の満田将太代表は、「元気なうちから情報を集め、主体的に“選ぶ”ことが重要だ」とアドバイスする。年を取れば取るほど判断力が鈍るので、厄介な問題を先送りにしがちだ。満田代表は、「ぎりぎりの状況になってから『どこでもいいから入れてくれ』と家族が相談に来るケースが後を絶たない」と話す。希望の条件があっても、介護業界の“常識”とずれている為、叶わないことも多い。

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多くの高齢者が集まることで質の高いサービスを低価格で受けられる『スマートコミュニティ稲毛』

③若いうちに移る老後コミュニティー
身体の自由が利くうちから施設に入る。そんな選択も可能になってきた。「自宅には20年以上住んだ。愛着があったけれど、これからの人生も恐らく20年以上ある。元気なうちに引っ越したほうがいいと思った」。60代半ばの真鍋恵子さんは2012年末、『スマートコミュニティ稲毛』(千葉県千葉市)に夫と2人で移住した。ここは、高齢者が健康時から介護が必要になる時期まで同じ場所で暮らすことができる『CCRC(Continuing Care Retirement Community)』と呼ばれる施設の1つだ。CCRCの入居者は先ず、CCRCの物件となる分譲マンションを購入する。価格は1380万~2000万円が中心。その他、マンションに隣接するクラブハウスの利用料として毎月約9万円を支払う。『イトーヨーカドー』の跡地を改装した広大なクラブハウスには、フィットネスクラブや図書館・カラオケボックス等、日常を楽しむアクティビティーが充実している。通常、これだけの施設を揃えるとなれば、入居費用は高くなる筈。だが、低く抑えられるのは、多くの高齢者が集まって暮らすことのスケールメリットを享受できるからだ。スマートコミュニティ稲毛も、約700世帯が集まって暮らしている。「マンション購入等、初期費用は一般的なサラリーマンの貯蓄や退職金・持ち家売却等で賄える。毎月の費用は、平均的な年金支給額で支払える範囲に留めた」。スマートコミュニティ稲毛の運営会社社長である染野正道氏は、こう説明する。CCRCはアメリカで生まれた。全米で2000ヵ所以上あるCCRCの大半は、医療機関等が併設され、健康状態に応じて敷地内の建物を移っていく仕組み。大規模施設というより小さな街に近い。CCRCは、政府が掲げる“地方創生”の目玉としても注目され、群馬県前橋市等の全国の自治体が建設に手を挙げている。CCRCを研究する『三菱総合研究所プラチナ社会研究センター』の松田智生主席研究員は、「大学と連携したり、同じ趣味を持つ人々を集めたりと、特徴を持ったCCRCが今後は生まれてくる筈。自分に合ったCCRCを選べる時代がやってくる」と話す。

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自分が住みたいと思う高齢者向けのシェアハウスを建てる人もいる。

④自分で建てるシェアハウス
“終の棲家”は、企業や行政が用意する施設とは限らない。自分が住みたいと思う場所がなければ、自分で造ってしまうのも1つの手だ。千葉県千葉市緑区に住む田中義章さん(77歳)・坤江さん(77歳)夫妻は2015年11月、千葉県山武市に高齢者向けのシェアハウス『むすびの家』を開設し、移り住む予定だ。むすびの家は、2人部屋が4部屋、1人部屋が8部屋ある2階建てで、延べ床面積は570㎡。土地代と建設費で1億円を要した。父や叔母から相続した遺産を充当したという。「父や叔母の介護を通して、『既存の老人ホームには入らずに、同じような考えを持った人と集まって暮らしたい』と思った。そして、『自宅で最期を迎えたい』と夫婦で話し合った」(坤江さん)。周辺の畑を借りて野菜を育てたり、其々が趣味を教え合ったりするようなシェアハウスを思い描く。介護が必要になったら、訪問診療や介護のサービスを利用しながら、最期を迎えられる場にしていく計画だ。


キャプチャ  2015年9月14日号掲載
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