【1億総貧困時代】(07) 食う為に足を洗って更に食えず――死屍累々の“元ヤクザ”たち

本来ならば、ヤクザを辞めてカタギになるのは喜ばしいことだろう。だが、再起は叶わず、経済的に追い詰められる者が少なくないという。 (取材・文 本郷海)

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一般社会では少しずつ景気の良い話が聞こえ始めているが、一方でヤクザ社会を見渡してみれば、惨状が広がっている。昨年まで東京都内において活動していた元ヤクザのA氏(38歳・関東系指定組織3次団体の元組員)は、溜め息交じりに話す。「兎に角、食えなかったね。これじゃ、ヤクザを辞める奴が増えるのも当然。俺の知り合いが今年に入ってから2人辞めたが、ヤクザだけじゃなく人間まで辞めたよ。1人は山で死体が見つかって、もう1人は部屋で自殺。2人とも、カネで首が回らなかった」。A氏も組織を抜けた後、マンションを売り払って生活費を捻出してきたが、それも底を突き始めたという。しかし、働き口は一向に見つからず、「来年はホームレスかも」と嘆く。「元ヤクザが真面な仕事に就ける訳がない。中学も真面に出ていない人が多いし、キャリアも技術も無ければ、残るのはどうしたって肉体労働系の仕事ばかりだ」。こう語るのは、元ヤクザのB氏(31歳・関東に拠点を持つ老舗団体元組員)。17歳で渡世入りし、3年前に業界から足を洗った。それ以来、建設現場等で働いている。「現場仕事だから給料が高いと思うかもしれないが、ヤクザ者はクスリや酒で体がボロボロだから、使い物にならないことも多い。俺はまだ若いほうなんで何とか動けているが、指が無いから力も入らず、工具が上手く使えない。だから、給料もさっぱり上がらないよ」

そして、一般社会に戻ろうとするヤクザの前に、最も大きな障壁となって立ちはだかるのが“G登録”である。「ヤクザ組織に入ると、警察のデータベースに戸籍情報や前科前歴が全て登録される。それは通称“G(極道)登録”って呼ばれるんだが、ヤクザを辞めた後も一定期間は外されない。だから、何か元組織で事件が起きれば、直ぐに警察は仕事先にも調べに来るんで、身元が直ぐにバレる」。こう語る元ヤクザのC氏(46歳・関西系指定組織3次団体の元幹部)の仕事場にも何度か刑事が来て、嘗て所属していた組織の事件について聞かれたことがあった。勿論、C氏は事件とは全く無関係だったのだが、刑事が訪ねてくる人間に対して、仕事場の人々の反応が冷ややかになるのは目に見えている。漸く見つけた仕事も辞めなければならなかったそうだ。ここまで法律に締め付けられ、貧困に追い詰められれば、破れかぶれになる元ヤクザが現れても不思議はない。「以前、知り合いの元ヤクザから、ある企業をターゲットにした集団強盗に誘われた。あまりにも計画が無謀だから断ったが、その後、知り合いらは逮捕されたよ。あの時は俺もまだ食えていたから断ったけど、若し今誘われたら断る自信がないな」。こう告白するD氏(44歳・東海地方に本拠を置く博徒系組織元組員)は、思い詰めた表情を見せていた。5年後に東京オリンピックを控え、警察当局はこれまで以上に反社会的勢力の摘発に力を入れている。それに依り、組織を追われた元ヤクザが貧困に喘ぎ、その結果として治安の悪化を招いているとしたら、こんな皮肉はないだろう。


キャプチャ  2015年8月号掲載


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テーマ : 貧困問題
ジャンル : 政治・経済

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