【ウナギ密漁・変わらぬ業界と支える消費者】(上) 現地取材で明らかになったタブーの実態――蔓延る密漁と密輸ロンダリング、暴力団が暗躍するウナギビジネス

「暴力団が密漁を行っている」「シラス輸出が禁じられている国から香港を経由し、国内へ輸入されている」――。“白いダイヤ”と呼ばれ、高値で取引されるシラスウナギ(ウナギの稚魚)には、黒い噂が付き纏う。今回、日本有数のシラス漁エリアであり、養鰻エリアでもある宮崎県と鹿児島県を巡り、密漁と“密輸ロンダリング”の関係者を取材した。完全養殖技術が成立していない現在、ウナギを育てるには天然のシラスを採り、養殖するしか手段がない。シラスは冬の新月の夜、潮が満ちている時に海から河川へと遡上してくる。密漁者は、このタイミングを狙うのだ。「巨大な網を使っていたこともあり、正式な許可を与えられた採捕者より我々のほうが多く採っていた筈だ」とは、密漁を経験した元暴力団構成員の発言だ。また、海外で採られたシラスも日本の養鰻池へ入れられている。財務省の貿易統計を見ると、香港から日本へ突出した量が入ってきている。だが、香港は土地が狭いこともあり、基本的にシラスは遡上してこない。どこか別の国から香港へ運ばれ、日本へ持ち込まれていると考えるのが自然だろう。こうして採られ、集められたシラスが大きく育てられ、スーパーや飲食店での販売を通じて、消費者の口に運ばれる。今や、密漁と“密輸ロンダリング”が日本のウナギ文化を支えていると言っても過言ではない。ウナギビジネスの深い闇を追った。 (取材・文 鈴木智彦)

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鹿児島県の種子島に、全国でも数少ない露地池の養鰻場がある。穴を掘って水を張り、水車だけを設置した露天の池だ。6月下旬、今年最初の出荷作業に密着した。午前4時半に現地入りすると、真っ暗な中で既に池の水抜きが始まっていた。長靴と一体化したゴムウェアを着込み、池に入る。目が慣れると、闇の中に汚泥を這い回るウナギが浮かび上がる。「今年は雨が多くて天気が悪かったから、小振りだな」。それでも、養鰻業者は満足そうだ。池上げは毎回、家族と親戚、納入先である福岡の専門店『田舎庵』のスタッフで行うという。店主の緒方弘は全世界を回り、池とウナギを確認して買い付ける変わり種だ。「美味しいウナギというのは、やはり天然です。昔の人は天然ウナギを食べていたので、味の違いをわかってたし、養鰻業者も天然に近いウナギを作ろうと努力していた。中国のウナギは何かと叩かれるけど、広大な敷地を生かし、露地池で天然に近い方法で育てているので、一概にダメとは言えない」。緒方は、種子島のウナギを「日本一美味い養殖ウナギだ」と絶賛する。現地で池上げを手伝っていた次男の緒方仁も、タモでウナギを掬い上げながら「いいウナギだ」と太鼓判を押す。「兎に角、病気のウナギがいない。他の池では背骨が曲がっていたり、皮膚病になっていたり、餌を食えずに極端に小さいウナギが一定数いるけど、殆ど見かけなかったでしょう?」。この日は、合計1.8トンのウナギが池上げされた。4P(1kgで4匹)と呼ばれる標準サイズだと7200匹、輸送費等の諸経費を含め、これを仕入れようとすると価格はざっと700万円だ。

鹿児島市に移動し、大隅半島の大規模養鰻業者に向かった。鹿児島県は、ニホンウナギの稚魚の池入れ数量が全国一のウナギ県だ。訪問した業者の場合、2013年度の売り上げは48億円に達している。敷地には、出資した共同経営の蒲焼き工場を始め、最新鋭の施設が立ち並んでいた。経営者たちが種子島の養鰻に興味津々だったので、デジカメの写真を表示した。「いいウナギだ」と認めながら、「こんな露地池なら、新設しても安く作れそうですけどね。出荷までの期間を考えると、採算が取れるとは思えない」(代表取締役)と首を傾げる。この養鰻業者同様、現在のウナギ養殖は“加温ハウス養鰻”が主流である。池を遮光したビニールハウスで覆い、コンピューター管理のボイラーで水温を30℃程度まで上げ、ウナギを冬眠させずに餌を与え続けて太らせる。病気になれば塩や抗生物質を使わず、温度を上げて弱い個体を殺し、間引くことも可能だ。ノウハウを蓄積して単年飼いを狙えば、僅か半年で天然の4~5年もののサイズまで成長する。加温ハウス養鰻が考案された1970年代、この新手法は全国に広がり、養鰻業者のスタンダードになった。この業者の養鰻池に比べると、種子島の露地池は昭和のウナギ遺跡だろう。露地池のウナギは、寒くなれば冬眠するので殆ど餌を食わず、出荷まで1年半~2年かかるが、格段に旨みがあると緒方は断言する。「消費者の殆どは、ウナギの品質・味は値段に無関係で、密度(大きさ)だけを基準に取引されている現実を知らない。味のいいウナギも、泥臭くても、市場価格は同一だ」と憤る。




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取材に同席した緒方が露地池を勧めると、専務取締役が突き放す。「うちは質より量。アルマーニじゃなくてユニクロだから」。ここまで自虐的になる必要があるのかはわからない。ただ、企業養鰻業者はスーパーマーケットのような格安ウナギを大量に欲している客をお得意様にしており、専門店の要望は二の次だろう。仮に、品質の慢性的な劣化に負い目を感じていたにしても、「味のわからぬ消費者が馬鹿だ」と言うだけだ。ウナギ業界には、もっと深刻な切除できない病巣がある。稚魚であるシラスの漁獲量が減少し価格が高騰、“白いダイヤ”と呼ばれるようになった為、密漁と密流通が日常化しているのだ。日本のシラス取引は完成度の高いダブルスタンダードで成り立っている。闇屋が跋扈し、国際的なシラスブローカーが暗躍し、暴力団も関与している。全国で暴力団排除条例が施行され、企業コンプライアンスの重要性が認知された現在、ここまで前時代的で不透明な業界も珍しい。センセーショナルに煽っている訳ではない。というより、ここまで黒いとは予想外だ。この大規模養鰻業者も、「『どこのシラスか?』と訊かれたら『海だ』と答える。シラスに名前は書いていない」(専務)と居直り、最後には「シラスのことは書くな」と釘を刺してきた。仲介者経由で来訪した当方を断れなかったのだろう。取材を中止し、席を立とうとしても、「闇との境目は不透明。ウナギだけに掴み所がない」と悪びれた様子は無かった。漁業は、県によって漁業調整規則が違う。違法の基準や取締りも異なる。シラスも県境を跨ぐと条例が変わる。闇屋にとっては好都合だ。しかし、宮崎県では許可を持たない人間がシラスを所持しているだけで条例違反となってしまう。内偵を重ね、現場を押さえ、潜水具と海産物・実行犯を一網打尽にしなければ立件・起訴できないアワビやナマコの密漁事案と比較し、取り締まりは容易な筈だ。だが、現地の警察と海上保安庁は積極的な取り締まりをしているようには見えない。

「年間の検挙数は、ここ最近だと例年1~2件。約半数が暴力団ですが、密漁の取り締まりを担当する我々生活安全部では、暴力団の組織名まではわからない」(宮崎県警)。宮崎県を管轄する第10管区海上保安部でも、同程度の検挙数だという。「宮崎海上保安部44人のうち、取り締まりを担当するのは31人、日向海上保安署で28人おります。採捕期間のパトロールが主な任務で、許可証を持たずに採捕している人がいないか確認している」(海保職員)。検挙データだけ見ると、宮崎県のシラス密漁は粗根絶できたかに思えなくもない。事実、宮崎県は独自の密漁対策を実行しており、他府県と比較しても先進的だ。対策の1つが1994年11月、県・市町村・内水面漁協・内漁連・養鰻業者の協力で設置された『内水面振興センター』だ。内水面は、河川・池・沼等の淡水を意味する。シラスは深海で孵化し、海流に乗って日本の太平洋沿岸に漂着、河川を上り成長するが、日本のシラス採捕は基本的に河川で行われる。「内水面振興センター設立当時の担当者曰く、県内のシラスのかなりの量が密漁だったそうで、当時は様々な暗闘があったらしい。『このままでは、ウナギの未来はない』という大きな危機感があったそうです。センターは県内の大淀川と一ツ瀬川で、パトロールに加えてシラスの採捕も行います」(宮崎県農政水産部)。密漁と密流通を抑止し、暴力団を締め出す為の苦肉の策として、宮崎県はシラス漁獲量の多い上位河川2つで、自ら採捕を行うことにした。翌年、他の河川の密漁防止の為に『うなぎ稚魚の取扱いに関する条例』も施行した。条例では「何人もうなぎ稚魚(25cm以下のうなぎ)の取扱いができないこととし、一定の場合のみ可能とする」と規定し、これに依って、シラスは譲受け・譲渡し・引き受け・引き渡し・所持・仲介の全てが特別採捕許可を取得した漁協組合員と内水面振興センター、そして登録業者に許可される。

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登録業者には、帳簿の備え付け・保管も義務づけている。内水面振興センターと条例という二枚刃に依って、宮崎県下の密漁は激減したと言われる。だとすれば、取り締まる側の低体温も頷ける。宮崎は、シラスの密流通にも防止策を設けた。「今年度は800人の一般採捕者に256kg、内水面振興センターに106kgを割り当てている。このシラスを宮崎県シラスウナギ協議会が入札し、競りをすることでシラスの価格が決まります」(宮崎県農政水産部)。県内のシラス業者が“公定価格”と呼ぶのは、シラスウナギ協議会で競り落とされた値段の通称だ。「全国的にも、シラスの相場は宮崎県の表価格で決まると言われています」(宮崎県シラスウナギ協議会の高木政利会長)という業界の評価も、システムが公正で流通が透明化されている証拠だろう。ところが、思わぬ弊害が生まれた。葬った筈の裏価格は、ゾンビのように甦った。元来、シラス漁は漁業として認められていない。毎年、特別採捕のライセンスが交付され、資源保護の為に全体の最大漁獲量が決められる。採ったシラスは県内の業者に売るのがルールだ。県はその為に、禁止されている漁を特別に許可しているのだ。「昨年、宮崎県の養鰻業者が池入れしたシラスは3.5トン。宮崎県が許可したシラスは364kgです。統計上、その10倍のシラスが池に放たれた計算だ。じゃあ、宮崎県の養鰻業者はシラスの9割を県外産と国外産で賄っているのか? 漁獲高が減ったとはいえ、宮崎は全国有数のシラス産地。最盛期は、帯のように泳ぐシラスが見えたほどです。そんな馬鹿な話はないですよ。県外のシラスは、シラスウナギ協議会の価格に縛られない。だから宮崎には、宮崎で採れたシラスが“他府県産”として逆輸入されたりする。そんな手の込んだことしなくても、どの業者だって高い値段で買います。皮肉なことに、県が定めた最大漁獲量は、『最低でもこれだけは正規の値段で売りなさい』という下限に解釈されている。考えてみても下さい。寒い冬、水に浸かって何時間も漁をするんです。誰だって高く買ってくれる業者に売りたい」(宮崎県内のシラス問屋)

裏価格は宮崎県が決める価格に連動し、その約2倍、ざっと1kg当たり200万円という。養鰻業者がシラス問屋を兼業する等、多少の節約はできても、宮崎県の業者は9割のシラスを正規以外の価格で調達する必要に迫られる。「流通量で言えば、表と裏は完全に逆。裏価格と言われるものが適正な価格です。表価格となっているシラスウナギ協議会の値段を上げれば、相場も連動して跳ね上がる筈。公定価格が無かったら、養鰻業者の限界と言われる1kg当たり300万円になりかねない。それでも、きっと売れますけどね。ウナギは採補者・漁協・シラス問屋・養鰻場・加工場・丼屋(ウナギ専門店の隠語)、どれも平均して儲かる商売だけど、絶対に損をしないのがシラス問屋です。纏まった量の良質のシラスを集めれば引く手数多です。量が減ったら相場は上がる。やはり、損はしません。ジャポニカ(ニホンウナギ)が環境省の絶滅危惧種(レッドリスト)に指定され、シラスの値段が高騰した際にも、問屋にシラスはあった。この時は、誰かが意図的に相場を上げようとしていた」(同)。この業者は、「業界誌等が相場の誘導に一役買っている」と推測している。当事者にその意識が無いにせよ、結果として影響力を利用されている可能性はあるかもしれない。宮崎県でも有数の企業養鰻業者である『大森淡水』社長の大森伸昭も、業界誌の報道に疑問を投げかける。「去年、業界誌では『25トンのシラスが採れた』と報道された。業界で検証すると、17トンから18トンじゃないかと思います。抑々誤解が蔓延しているんですが、シラスの採捕量含め、信用に足るデータが無いんです。極々最近まで産地のイニシアティブ合戦が激しかったので、どこも大抵背伸びしたくて、過大に申告していた」。宮崎県は全国で唯一、データの正確さを意識していた。しかし、全国的にこれだけ不透明だと、額に汗せず、濡れ手で粟を基本理念とする暴力団の関与は公然の秘密である。

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ある養鰻業者は、「大きい業者には、元暴力団担当の刑事を雇っているところもある。ウナギを扱っていると、暴力団とぶつかるのは避けられないからだ。その筋の人らと如何に巧く付き合うかが、養鰻業者の腕です。あの人らは普段優しくても、いざとなると目つきが変わる。付かず離れず、打ち解け方もコツがある」と秘伝をレクチャーしてくれた。内水面振興センターと条例ができる前は、シラスの約7割が暴力団絡みの密漁だったという。水産庁の資料にも明記されているので、少なく見積もった数値と考えていい。宮崎の密漁を数年前に手伝った山口組の元幹部に、東京で話を聞いた。熊本刑務所の累犯刑務所に服役し、宮崎県の暴力団員と同房となって打ち解け、出所後、アルバイト的にスポット参加したそうだ。「真冬の新月の深夜、月の光が全く無い中、近くの海から完全防寒、胸まで丈のあるゴム長靴を履いて小型ボートを出す。ライトは一切点けず、全速力で川を上る。『地元だから、地形は全部わかってるから』って言うけど、初めてだから怖くて仕方なかった。ポイントでボートを止め、地獄網を仕掛ける。左右に2~3mのウイングを広げ、中央の袋網にシラスが集まる仕掛けだ。地獄網を10ヵ所くらい設置し、翌日か翌々日の深夜に回収する。仕掛けは水面に出ないから、昼間、岸から見てもわからない。シラスは市場で売った。賑やかな場所なのにヒソヒソ取り引きするから、可笑しかった。分け前は1回150万円以上。2回目からは札束を掬うような気分だ。分け前を貰った後に、『明日は車を買おう。服を買おう』なんて話をしていた。祭りだよ。東京で金持ちが美味しい美味しいと騒いでいる高級ウナギも、元を辿れば俺らが採ったヤツだもんな」。海上で取り締まりの船に追いかけられた時は、辛くも逃げ切ったという。宮崎県警も地獄網のことは承知で、「取り締まりを担当した警察官から、『川に飛び込んで地獄網に絡まると助からないので、決して深追いするな』と聞いている」とコメントしている。

「あいつら(暴力団)に地獄網を教えたのは俺たちなんだ」と溜め息混じりに告白するのは、シラスウナギ協議会の関係者だ。「当時は、資源保護なんて誰も考えない。村に1人はヤクザもんがいる。いい小遣い稼ぎとしてやり方を教えた。それに、養鰻業者があちこちにあって、シラスはどれだけ採っても需要があった」。シラスが激減した現在も、密漁は続いている。但し、「余所者が入り込めない独特のシノギ」(福岡県の指定暴力団幹部)らしく、現役の密漁関係者を探すのは骨が折れた。「今もやっているかなんて、マスコミに言える筈ないだろう。ただ、今年も前半には随分儲けたヤクザもんがいますよ。漁期に行うと密告され易い。勝負時は、12月5日の口開け前。宮崎は、大潮より中潮のほうが採れる。養鰻業者も、本音としては一刻も早くシラスが欲しい。でも、公にされると困る。そこをヤクザの看板でやる。泥被ってるようなもんです」(密漁関係者としか記せない)。自分たちで密漁することは随分減ったという。採り手を雇ったり、ショバ代を取ったりする他、川に出掛けて地縁と暴力でゴリ押しし、採捕許可を持っている人間から公定価格以上、実勢価格で買って横流しする。「業者を知らない人もいる。皆が儲かる。ヤクザがいないと、養鰻業者の池は埋まらない」(同)。身勝手な理屈が並ぶが、密漁シラスを買う業者は必ずいる。何しろ、正規・密漁合わせても、養鰻業者の欲するシラスにはまだ足りないのだ。これを補填するのが海外ルートである。

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インターネット上で公開されている財務省の概況品別国別税関一覧表で、ウナギ(稚魚)の品目コードを入力し、例えば2014年の輸入量を検索すると、韓国・中国・フィリピン・インドネシア等の出荷国が示される。突出しているのが、約5トンを輸出する香港だ。香港は土地が狭く、シラスが遡上するような大きな河川も無い。シラス漁師もいない。実を言えば、ウナギ業界最大の不正はここにある。台湾は、2007年にシラスを期限付きで輸出禁止にした。2006年のシラス輸入元を先程の概況品別国別税関一覧表で調べると、香港からはゼロで、台湾から約4.5トンとなる。つまり、香港産のシラスの多くは台湾から金門島を経由する等して中国に密輸され、香港に運ばれたものだと思われる。それを裏付ける証言もある。依頼主は日本のシラス問屋。シラス問屋にオーダーしているのは養鰻業者だ。「香港のシラスは、何度も移動してストレスがかかっている筈なのに、生存率がいい。価格平均は国内価格の2割増しになるが、シラスが無い以上、背に腹は替えられない。シラス業者に頼んで、港から運んでもらう」(養鰻場経営者)。匿名を条件に、シラス業者はこう打ち明ける。「台湾は顔の社会。頻繁に台湾に出向いて交流を深める。密輸出するのは、そう難しくない。台湾にも裏と表の業者がいるけど、暴力団ほど付き合い難くはありません」。レッドリスト指定後、ワシントン条約の附属書に記載される恐れが生まれ、危機感を持った水産庁も重い腰を上げた。養鰻業に届け出を義務付け、今年6月に内水面漁業振興法の施行令を改正し、11月以降に新たにウナギ養殖を始める事業者を対象として、許可制に移行。池入れのシラス漁を前年の8割に削減したのだ。シラスに手をつけられないのは、水産庁にも自覚がある。オフィシャルには認めないが、「(頬に傷を描く仕草で)この人たちはシラスの密漁と密流通にいますから」と水産庁の職員は教えてくれた。

ウナギの実情を考えると、池入れに着目したのは正解だ。が、業者はこれにも裏があると言う。「抑々、割り当てを取る為に過大申告している。調査が入れば『死んだ』と言えばいいだけ。だから、2割削減でも昨年の10割。削減されたのはゼロ」と一刀両断する。水産庁主導で『全日本持統的養鰻機構』を設立し、シラス1kg当たり1400円を集め、ワシントン条約逃れのロビー活動をするらしい。しかし養鰻業者は、「ただでさえ高いシラスからみかじめ料を取り、水産庁の天下り先を作っただけ」と冷淡だ。不正に麻痺したウナギ業界に、これ以上の自浄作用を期待するのは酷だ。抑々、日本では絶滅危惧種を専門店・量販店・牛丼チェーンまでもが提供しており、考えてみれば異様である。ブレーキが機能しない状態では、いつかウナギを食い尽くす。ワシントン条約で規制されれば、シラスも活鰻も加工品も原則、国際取引が禁止だ。そうなれば、消費者が共犯者になることはない。日本人が土用の丑の日を長く楽しむ最善手かもしれない。 《敬称略》


大森伸昭(おおもり・のぶあき) 養鰻業者・『大森淡水』代表取締役社長。1975年、宮崎県生まれ。1997年に創価大学を卒業後、大森淡水に入社。販路の拡大を進め、宮崎市内8ヵ所で養殖場を運営する他、2008年に『うなぎ処 鰻楽』を開設。宮崎・鹿児島両県の業者約30軒と契約してウナギを集め、出荷量は全国トップクラスの年約3000~4000トンを誇る。

鈴木智彦(すずき・ともひこ) フリージャーナリスト。1966年、北海道生まれ。日本大学芸術学部写真学科除籍。雑誌・広告のカメラマンを経て、ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。著書に『ヤクザと原発』(文藝春秋)・『ヤクザ1000人に会いました!』(宝島社)等。共著として『歌舞伎町アウトロー伝説』(宝島SUGOI文庫)等。


キャプチャ  2015年8月号掲載


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