全国で高齢者の犯罪が続々発生中! 老人たちを暴走させるのは“貧困”と“孤独”だけではない!

最新の『犯罪白書』に依れば、65歳以上の検挙人員は4万6000人超。成人の他の年齢層を抑え、堂々のトップである。何故、高齢者は犯罪に走るのか? ノンフィクション作家の新郷由起氏が、“暴走老人”増加の深層をリポートする。

poor 44
高齢者に依る犯罪増加が著しい。法務省『犯罪白書』(平成26年度版)に依れば、平成25年の一般刑法犯における65歳以上の検挙人員(4万6243人)は、今や成人の他の年齢層を抑えてトップ。20年前と比較して人員数で約4倍、人口比で約2倍に膨れ上がっており、単に「高齢者数が増えたから犯罪も増えた」との認識では説明がつかない状態になっている。「他人を巻き添えにしたのはいけなかったけど、自死した気持ちはわかるよ」と、東京都内で1人暮らしを続ける男性(74歳)は、今年6月30日に走行中の東海道新幹線車内で焼身自殺した71歳男性に同情する。「だって、生きていても仕方ないもん。いい所に長く勤めてなきゃ年金は少なくて、生活は苦しいばかり。独り身じゃ気にかけてくれる人もいないし、生きていてほしいと誰にも言われない。後にも先にも楽しいことなんてないし、自暴自棄にもなるよなあ」。彼の年金額は月額9万6000円。預金は無く、数年前に生活保護費との差額受給の申請に区役所へ出向いたが、「『自力で何とかしてくれ』ってさ。働こうにも、この年で働き口なんて無いのに。『貧乏な年寄りは早く野垂れ死ね』ってことだよな。帰り道では、『いっそのこと、銀行強盗でもしようか』と思ったよ」と口を尖らせた。高齢者の身元保証と生活支援を行うNPO法人『きずなの会』東京事務所長の杉浦秀子氏が指摘する。「月の年金支給額が6万~7万円以下の生活困窮者には、生保との差額が出ることもありますが、10万円前後では先ず認められません。財源が無いのです。年金は全く無いか、潤沢にある人のみが暮らしに不自由せず、微妙な年金額の人は死ぬまで苦労します」

嘗て取材した性風俗業界で働く67歳女性が、「シルバー人材センターは人余りで、1件の仕事に半年から2年待ち。スーパーでも雇ってくれなくて、女性は清掃業務か風俗しかない」と嘆息していた通り、足りない生活費を補おうにも、高齢者が稼げる手立ては皆無に等しいのが実情だ。しかし、全ての高齢者犯罪が“貧困”に起因している事実はない。金銭的余裕がないと行為に及べないストーカーや、生活困窮者以外の万引き事犯者の急伸、相応の入居費が必要な老人施設での暴行等の増加ぶりが、それを何よりも物語っているだろう。「今や、シニアの生保受給者は“セレブ”。年を取ってからカネの無い苦しみは壮絶だけど、実はそれより堪えるのが心の孤立なんです」と、長く困窮生活を強いられた男性(75歳)は断言する。彼は3年前に旧友から住居を提供されて、九死に一生を得た。「問題は貧しい生活自体より、カネの無いストレスや不安で心が先に潰されていくこと。年を取ってくると、重要なのはお金と健康と人間関係。中でも一番は人間関係で、折角生保を受けられても、寂しさから薬物に走ってしまう連中もいる。確かにカネは大事だけど、それ以上に何か自分を繋ぎ止めてくれる人やものが絶対に必要なんですよ」と、筆者へ切実に訴えた。現役時代には相応の人間関係が築かれ、肩書きや仕事の責務・子育てといった社会生活の中で、様々な抑止力が働いていた。仮令、反社会的行為に及びたい衝動に駆られても、それら全てがストッパーになって押し留めることができたのだ。加えて、誰か・何 かに必要とされている実感を得ながら、世の中における自身の存在価値を疑わずにも生きていけた。




poor 45
ところが、老いてその全てが解かれた時、愈々自身の本質とこれまでの生き様・人生観が問われることになる。「仮令、貧しくとも孤独でも、“心が錦”なら犯罪なんかに走る訳がないんですよ」と79歳男性が慣る。高齢者犯罪の背景や要因を一様に“貧困”と“孤独”と決めつける世論の風潮に、異を唱える高齢者もまた多いのだ。「独り身で貧しい年寄りが皆、法を犯す訳じゃない。寂しくても手持ちが少なくても、我慢や工夫をして必死に生きているんですよ。自分の人生が上手くいかなかったのを国や人のせいにして晩節を汚すなど、同胞の生き恥。甘えているとしか思えません」。この男性の年金は月額7万3000円。預金から毎月2万円を引き出して生活費に当てているが、蓄えが尽きても生保との差額申請をする気はないという。「“国の乞食”になってまで生きていたくないし、同じ税金なら将来を担う子供たちの為に使ってほしいと思う。年配者だからこそ、相応に暮らせる対応力と生きる知恵を培っていて然るべきじゃないですか」。“外部圧力”が失せて野放図となった老年期に、何を持って己を律するのか? 忘れがちだが、元来、人間には相応の攻撃性が備わっている。社会性を欠き、守るものも無く、老いの美学や信念をも抱けなければ、“我”と“欲”だけが剥き出しになってしまう。そこへ心の豊かさが失われれば、不意な暴発も免れないのではないか? 確かに、経済的貧困は高齢者犯罪を増長する紛れもない一因だろう。だが、真因として潜む心の孤立・心の貧しさに貧富の差は問われない。個人の心の持ち様は、経済面だけでは決して推し量ることができないからだ。

但し、中にはどんな説明もつけ難い突発的犯行や常軌を逸した奇行的犯罪もある。認知症を始めとする高齢者医療に従事する『あしかりクリニック』院長の芦刈伊世子氏が指摘する。「万引き等の高齢の犯罪事犯者の中には、認知症ではないが、情動や衝動性を司る側頭葉が通常の3分の1から半分ほどに縮んでいる人が見受けられるようになりました。これでは、正常な判断はできません。原因は不明ですが、大変なストレスがかかった時に異常行動としての病状が表面化してしまう。過去に無い超高齢化社会に突入し、これから研究や究明が進んでいくでしょう」。今や、長寿は一部の恵まれた人に齎された幸運ではない。人生の集大成である老年期に、馬脚を現さずに命を終えられるのか? 身体能力に加え、己で築いてきた人間力が問われる時代を迎えている。

■“1人暮らしの達人”老人座談会…身の丈に合った暮らしと“足るを知る”で老後を楽しむ

座談会参加者(名前は全て仮名)
望月隆彦 78歳。東京都在住。20代で俳優を志して上京。バブル期はイベント会社に勤めて年収1300万円超。72歳まで清掃会社に勤務。婚姻歴無し。年金額9万円。家賃4万円の風呂無しアパートに住む。
五木善政 69歳。東京都在住。糖尿病と網膜症から、58歳で旅行会社を早期退職。39歳で結婚するも、3年後に離婚。子供無し。一時期、海外移住を試みるも断念。年金額15万円。住居は家賃7万8000円の賃貸マンション。
水野宣之 71歳。神奈川県在住。3度の転職と同棲経験あり。婚姻歴無し。2年前より、不定期で警備会社のアルバイト(日給7000円)を続ける。年金額10万円。家賃4万9000円のアパート暮らし。

望月「年寄りに依るろくでもない事件が報じられる度に、肩身の狭い思いをさせられる。大多数の同世代は、真面目に静かに生きているのにねぇ…」
五木「特に、最近は“1人暮らしの男性高齢者”というだけで、孤立死とか『何か厄介事を持ち込むんじゃないか?』と色眼鏡で見られがち。資源ごみの日に雑誌や本を出したら、後で下の階のおばさんが中身をこっそりチェックしていたんだから。如何わしい雑誌や犯罪系の本がないか確認していたみたいだけど、明らかに人権侵害だよな」
水野「僕の住むアパートは、通学路に面した公園の端っこに建ってて、朝、布団干しにベランダへ出ると、手を振ってくれる登校中の小学生もいて、癒やしになっていたんだよね。ところが今春、夕暮れにベランダで公園の桜を見ながら缶ビール片手に花見酒と洒落ていたら、翌日に保護者会の代表者が訪ねてきた。ほろ酔いでいい気分でいた様子を、『女子児童を厭らしい目で見ながらニヤけている不振な高齢者』と思われたらしい。驚いたの何の! 『誤解だ』と説いたけど、あれ以来、怖くなって子供たちが通る時間帯にベランダへ出ないようになったよ」
望月「子供や女性へ好意的に接すると“不審者”と警戒され、素っ気無くしていると“無愛想な偏屈ジジイ”と煙たがられる。どうすりゃいいのか。生き辛い世の中になったもんだよ」
五木「大体、年配の男が1人で暮らしているのを“可哀想”“哀れ”と矢鱈、同情の目で見るのも止めてほしい。仕方なくそうなった男もいるだろうが、自ら選んで気儘に生きている俺みたいな奴も多いんだから」
水野「長く家庭内別居状態の妻に気兼ねしつつ、子供に保険金の無心をされながら、未だローンが残るボロ家に住んでいる同期生もいるけど、とても辛そうで羨ましいとは全く思わないね。寂しさもある一方で、煩わしさとは無縁の“ジジイの1人暮らし”の自由と価値を、世間はもっと認めるべきだよ」

望月「同じヤモメ暮らしでも、いい家に住んでる裕福そうな男なら周囲の目も違うのかね?」
水野「『金持ちなら、1人暮らしでも犯罪とは無関係なのか?』と言いたいね。大体、『カネが無いと不幸』『不憫な生活しかできない』と決めつけられるのも腹が立つ」
五木「勿論、最低限のカネが無いと暮らしていけないけど、今は回転寿司だって1000円も出せばいいものが食えるし、靴下なんか2足100円で買えたりする。DVDレンタルも1本100円だし、図書館じゃ無料の映画上映会もやっている。何でも高かった昔に比べれば、生きるコストは格段に安くなっていると思うよ。だからこそ、楽しく幸せに生きられるかは本人次第で、カネの無い奴こそ生活力が試されるんだろうな」
水野「“使えるカネ=楽しみの量”と思い込んでいる感性の乏しい人間ほど、生活力が低いからね。ただ、人に依ってはバブル時代にいいものを知っちゃったのが辛いのかもなあ。いい肉の味を知っているから、安い肉に満足できないとか…」
望月「僕は嘗て相応の暮らしをしたからこそ、この年になって『贅沢をしたい』とも『いい肉を食べたい』とも思わない。75を過ぎると、『いい死に方をしたい』と思うようになる。それには食生活が肝心で、衣食住では食事が最も大事になる。納豆や旬の野菜の御浸し・魚等の好物をバランスよく適量食べられれば満足だし、住まいなんて寝るところさえあれば十分。広い家なんて、年取ると掃除が大変なだけなんだから」
五木「どんな生活してたって、完璧には満たされない。この先は益々老人だらけ、国も借金塗れで、無い袖は一層振れなくなる。身の丈に合った暮らしをして、皆が程々で満足する感覚を養わなきゃね。年と共に“足るを知る”を肝に銘じて生きないと、不満だらけで暴走する犯罪老人ばかりになっちゃうよ」


キャプチャ  2015年9月号掲載


スポンサーサイト

テーマ : 貧困問題
ジャンル : 政治・経済

Categories
Profile

KNDIC

Author:KNDIC
Welcome to my blog.

Latest articles
Archives
Counter
I'm participating in the ranking.

FC2Blog Ranking

information
Search
RSS Links
Link
QR Code
QR