【働きかたNext】第8部・若者が問う(04) 人脈は社内だけじゃない――共感の輪広げ飛躍探る

「エンジニアさん、興味のある人はフラっとオフィスに遊びに来て下さい」――通販サイト支援の『BASE』(東京都渋谷区)がツイッターで呟くさりげない“お誘い”の文句。実は求人広告だ。「面白そうだな」。実際、遊びに行った藤田健太郎(26)は社員や職場の雰囲気を気に入り、2年前から同社で働き始めた。「楽しそうな感じで自分に合うと思った」。ツイッターやフェイスブック等の交流サイト(SNS)の普及が、若者の行動を変え始めた。堅苦しい挨拶抜きで情報を交わし、気の合う仲間の輪を広げる。そんなSNS世代のキーワードはスピードと共感。職場選びだけではない。仕事の進め方も変化が見える。「ちょっとご飯に行きましょう」。動画制作ベンチャーの『ビーバー』(東京都品川区)社長の上坂優太(31)は、対話アプリで『ヤフー』執行役員の荒波修(44)に呼びかけた。知り合いの荒波に事業の相談をする為で、動画産業に興味があった荒波も直ぐ応じた。メッセンジャーで会話すること50~60回。要所は直接会って話す内に話は膨らみ、資本・業務提携に発展。5月にヤフー等から7億円の資金を得た。会社対会社で交渉を始め、進展の度に決裁を仰ぐのが常識だが、それでは商機を逃しかねない。上坂は「人の繋がりが財産」と強調する。SNS世代にとって重要なのは、会社という枠組みよりも肩書や年齢を超えた社外との繋がりだ。趣味や志向、似た価値観を持つネットワークを生かせば、ビジネスの可能性は大きく広がる。

8月中旬。渋谷駅近くの雑居ビルにTシャツ姿の若者が集まった。若手起業家が自社サービスを説明するイベント『スプラウト』だ。観客はSNSを通じて繋がった約60人。流行に敏感な“アーリーアダプター”と呼ばれる人たちだ。彼らが共感すれば、SNSを通じてサービスが広まるだけに真剣そのもの。インターネットメディア運営会社を立ち上げた真野勉(28)は、「様々な人の意見を聞けばサービスも向上する」と話す。勿論、SNSは万能ではない。参加者は様々。立場の違いに依るトラブルや炎上リスクもある。だが、形式に拘らずアイデアと行動力・人脈を通じて、新たな成功の機会を探る働き方はシリコンバレー流にも通じる。大事なのは、内に籠らず外に目を向けること。大手企業でも社外に活路を探る動きが広がる。『大阪ガス』は新技術の開発を速める為、自社が求める重要技術を敢えてインターネットで公開し、社外に連携を呼びかけ始めた。スマートフォン用アプリの共同開発を探る鈴木智之(31)は、「新しいアイデアを生み出す為に外部と組みたい」と話す。国や組織の枠を超え、インターネットで様々な人に繋がる時代。出会う機会を逃さず、外の知を上手く生かせば新たな地平を切り開ける。危うさをも孕む若者の行動だが、インターネット時代の働き方のヒントも見える。 《敬称略》




1日あたりの利用者数が10億人に達した交流サイト(SNS)最大手の『フェイスブック』。国内外の多くの人や企業が繋がるSNSは、転職や就職の窓口にもなっている。「働き方は想像した通り」。SNSを通じた人材仲介の『ウォンテッドリー』(東京都港区)で働く山本あずささん(24)は、職場の印象をこう話す。実は山本さん自身、同社のサービスを使った転職組だ。前職は大手人材サービス会社の営業職で、“何でもできる会社”との印象に引かれて飛び込んだが、実際は仕事が細分化されており、希望とのギャップに気付いた。ウォンテッドリーの月間利用者数は約60万人。フェイスブックと連動すれば、興味のある企業でどんな人が働いているか見ることができる。更に“話を聞きに行く”ボタンを押すと、訪問して社員と話したりオフィスを見たりすることもできる。職場の雰囲気がよくわかるのが特徴だ。ウォンテッドリーは、求人を出す企業に待遇や福利厚生等の条件よりも、先ず理念を書くよう求める。企業カルチャーや風土への共感で、優秀な人材を引き寄せるのが狙いだ。価値観や志向が同じかわかれば、就職のミスマッチも減らせる。7月の有効求人倍率は23年ぶりの高水準で、大手に比べて待遇が劣る中小やベンチャー企業は人を採り辛い。“共感”を上手く活用すれば、採用難の時代を突破する武器になるかもしれない。

               ◇

7月14日にサービスを開始した大学生限定のSNSがある。その名は『Lemon』。“メンバー厳選審査制”を掲げ、入会の可否は何と人工知能(AI)が判定する。一体、どんなSNSなのか?

「医学系のウェブメディアを立ち上げたいのですが、仲間になってくれる人はいませんか?」「二足歩行のロボットを一緒に作りませんか?」――こんな書き込みに対し、大学で医学やプログラミング等を学ぶ他のメンバーが相次ぎ協力を名乗り出る。かと思えば、日本の政治を議論するスレッドで長文の投稿が続いたり、「明日からハワイ。お薦めのお店教えて下さい」といった雑談で盛り上がったりする。Lemonの掲示板の話題は幅広く、熱い議論はあっても“荒れた”展開は殆ど見られない。Lemonを運営する『Lip』(東京都新宿区)は、松村有祐さん(32)と関口舞さん(24)の2人が昨年共同で創業したスタートアップ企業だ。「大学生の日常生活では生まれ難い新しい人間関係を築ける場を作りたい」というのが、立ち上げた理由だ。入会審査があるSNSは幾つも存在するが、人工知能が判定するケースは先ず聞かない。入会希望者がいた場合、既存メンバーの3割以上と“親和性”があると判断されると、入会が認められる。判定に用いられるのは、入会希望者が作成するプロフィールやフェイスブックの内容という。現在のメンバーは約2000人で、入会審査待ちも約2000人いる。メンバーには起業経験や高いIT(情報技術)スキルを持つ学生も多く、新たなビジネスが生まれる“社交の場”になる可能性を秘める。独自の人工知能は、ニューヨークの『IBM』の研究所で働いたこともある松村さんが開発した。大学の研究者を志したこともあったが、「努力すれば目に見える成果が出せるし、組織に属する息苦しさも感じなくて済む」と起業の道を選んだ。一方、関口さんは大卒で入社した外資系広告会社を僅か半年で退社した。「広告業界では30歳でも若手。同世代の起業家と自分を比べた時、社会人としての成長スピードが違い過ぎると焦っていた」と当時を振り返る。その後は1人でスマートフォン(スマホ)アプリを提供する会社を運営していたが、知人を介して出会った松村さんとLipを立ち上げた。

大学生の多くは、フェイスブックやツイッターといったSNSを利用している。ただ、松村さんは「インターネット上では相手を信用できるかどうかの判断が難しい。学校の外で新しい知り合いを作るハードルは意外と高い」と指摘する。「対象を大学生に限定した上で、趣味やバックグラウンド等の共通項があるメンバーが数多く存在することを人工知能が保証すれば、より活発な交流が生まれ易くなると考えた」と言う。Lipには、「学生を紹介してほしい」という依頼が幾つもの企業から舞い込んでいる。学生起業家や海外留学生、研究に没頭する理系の学生は所謂“就活サイト”に登録しないケースが多いとされる。「企業はLemonに集まるような“尖った”学生を採用したいが、アプローチするのが難しいのでは」(松村さん)。Lemonで生まれた接点は軈て、大学から社会へと羽ばたいていくきっかけへと成長するかもしれない。 (木村慧)


≡日本経済新聞 2015年9月3日付掲載≡


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