グーグル・マイクロソフト・ソフトバンク…インド人CEOが世界を制する日

『グーグル』や『マイクロソフト』、そして『ソフトバンク』でインド人リーダーが相次いで誕生した。高度な理数系教育や厳しい環境が生む卓越したマネジメント能力と、世界中に広がるネットワーク。インドパワーはベンチャー企業や製造業の世界にも及んでいる。日本企業も意識を変え、インドが輩出する人材のパワーを生かすべき時代が到来している。 (ロンドン支局 蛯谷敏・宗像誠之・藤浩実)

首都・デリー郊外のグルガオンは、インドの中でも急速に開発が進む新興都市の1つだ。嘗ての広大な荒地には高層ビルが林立し、多くの多国籍企業やベンチャー企業が拠点を置くハイテク都市へと変わった。2015年9月上旬、その一角に聳え立つ真新しいオフィスに若い起業家を訪ねた。クナル・バール氏、32歳。インドのEC(電子商取引)サイト大手『スナップディール』のCEO(最高経営責任者)だ。2020年には8億人に達する見込みの中間所得者層、契約数で1億台を突破したスマートフォン(スマホ)の普及等が起爆剤となり、インドでもEC市場は急拡大している。『インドインターネットアンドモバイル協会』に依ると、2015年のEC市場は1兆ルピー(約1兆8000億円)を超える見込み。今後も年平均で30%以上の成長が続き、5年後には8兆円規模になると言われている。その市場で、アマゾンドットコム等の多くの企業が勢力争いを繰り広げている。中でも、2010年に創業したスナップディールは最も勢いのある企業として、インド内外で注目されている。きっかけとなったのが、2014年10月に発表した『ソフトバンク』グループに依る約677億円の大型出資だ。更に今年、中国の『アリババ集団』やEMS(電子機器の受託製造サービス)最大手である台湾の『フォックスコン』等からも5億ドル(約600億円)の資金を調達した。

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『スナップディール』CEOのクナル・バール氏。ニケシュ・アローラ氏の助言に従い、投資を物流・決済・技術に集中させている。

手に入れた約1200億円以上の資金を元手に、自社サービスを補完する技術を持つベンチャー企業を次々と買収。昨年度は10億ドル(約1200億円)だったECサイトの年間流通額は、今年度は40億ドル(約4800億円)を突破する見込み。スナップディールは日本の『楽天』のように、小売業者を集めたショッピングモール型のサイトを運営する。デリーやムンバイに次ぐ“ティア2”“ティア3”と呼ばれる地方都市に強く、売上高の約6割強をこれらの都市で稼ぐ。社員数も6000人を超え、創業5年で楽天本社を上回る規模となった。創業地のデリーからグルガオンへの移転は、オフィスが手狭となったからだ。インドでも話題のベンチャー企業の新オフィスだけに、「アメリカのシリコンバレーを彷彿させる先進的なものだろう」との期待は、あっさりと裏切られた。机をパーティションで仕切っただけの質素なオフィスには、ソファで寛ぐ社員の姿や、ホワイトボード代わりになる壁も見当たらない。記者が「ベンチャーらしくないですね」とぶつけてみると、バールCEOからこんな答えが返ってきた。「誰でも真似できるオフィスより、自社にしかない競争力を高めることに投資を集中する。これは、ニケシュからの大切なアドバイスだ」。ニケシュとは、ソフトバンクグループのニケシュ・アローラ副社長(47歳)のこと。グーグルの上級副社長だったアローラ氏は2014年9月、孫正義社長の熱烈な誘いを受けてソフトバンクに入社した。165億円の役員報酬や600億円もの自社株買いで話題を集めた、今の日本で最も有名なインド人だろう。

アローラ氏は孫社長の参謀として、ソフトバンクグループ全体の経営戦略を補佐している。重要な使命の1つが、故郷であるインドへの投資だ。孫社長は、「インドに10年間で1兆円規模の投資をする構えがある」と語っている。アローラ氏は3~4ヵ月に1度はインドに渡り、ベンチャーの発掘と投資先への助言に奔走している。スナップディールのバール氏とアローラ氏は、メール等で毎日のように情報交換している。中でもアローラ氏が繰り返すのが、「投資の集中」という助言だ。バール氏はこれに従い、調達資金を“物流”“決済”“技術”の3分野に重点投資している。2015年3月には物流会社に出資し、広大なインドの国土をカバーする配送機能の安定と時間短縮を進めている。総額で2億ドル(約240億円)規模の資金を物流投資に充てる計画で、全土にある約50ヵ所の倉庫網を拡張する。決済では、インターネット上でプリペイド式携帯電話の料金を補充できる決済会社を買収してサービスの幅を広げた他、小売業者に出店資金を融資する金融サービスも提供する。技術については、急成長するスマホ向けの開発会社を複数傘下に収めた。3分野に特化した成長戦略の成果は徐々に表れ始め、流通総額で差をつけられていた最大手の『フリップカート』との距離を猛烈に縮めている。アローラ氏のマネジメントの方法は、極めてシンプルだ。企業の置かれた状況に合わせて本質的な助言を与えるだけで、具体的な行動は現地の経営陣に任せる。そんな“ニケシュの言葉”に従い、堅調に成長を続けている企業はスナップディールの他にもある。




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『バルティソフトバンク』の子会社『Hike』を率いるカビン・ミタルCEO。同社のメッセージアプリは、インドに最適化したサービスで利用者を拡大する。

ソフトバンクがインド最大の通信事業者である『バルティエアテル』と共同で設立した『バルティソフトバンクホールディングス』。同社の子会社『Hike』は、同名のスマホ向けメッセージ交換アプリを開発し、主にインドの若年層の利用者を増やしている。競合する中国発の『WeChat』やアメリカ発の『WhatsApp』に対抗する為、Hikeはインド人ユーザーの使い勝手を最優先することで支持を集めている。例えば、インドの若者はプリペイド型スマホの利用が中心で、大量のデータをやり取りするアプリは料金負担が重く、敬遠される。地方都市ではデータ通信の環境が悪い場合も多いことから、Hikeは少ないデータ量で快適にメッセージをやり取りできる設計にしている。スマホを家族で共有するケースも多い為、メッセージの秘匿機能等を備え、“痒いところに手が届くアプリ”として利用者を広げている。海外勢のサービスは、インド市場に対するきめ細かな対応は後手に回りがち。バルティグループ会長の息子で、Hikeのカビン・バルティ・ミタルCEOは、アローラ氏から得た「徹底してローカルのニーズを探ること」を追求し、支持を集めることに成功している。

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100都市以上でタクシー配車サービス『Ola』を展開する『ANIテクノロジーズ』のバビシュ・アガルワルCEO。成長に伴い、大企業から人材を積極採用し、組織を再構築。アメリカの『ウーバーテクノロジーズ』とのシェア争いをリードする。

インドの100都市以上でタクシー配車サービス『Ola』を提供するベンチャー企業の『ANIテクノロジーズ』も、“ニケシュプロジェクト”の投資先の1社。同社はクレジットカードが普及していないインドの事情に合わせ、独自通貨“Olaマネー”等を導入。アメリカの『ウーバーテクノロジーズ』とのシェア争いをリードしている。成長が確実な分、インドのインターネット関連市場は国内外の複数のプレーヤーが激しく競争している。アローラ氏が責任者として助言するベンチャーは何れも、インド市場に合わせた細やかなサービスで事業を急拡大している。孫社長がアローラ氏を有力な後継者として指名したのは、過去の成功体験がある。嘗て、自身が発掘したアメリカの『ヤフー』や中国の『アリババ』は、ソフトバンクに巨額のキャピタルゲインを齎した。“第2のアリババ”が誕生する可能性が最も高いのは間違いなく、12億人の市場があるインドだ。アローラ氏は、ソフトバンクの経営スタイルを変える役割も担う。「今後、海外の子会社の比率は上がっていく。その時に、グローバルのマネジメントを知る人間がトップに立っているかどうかは、非常に重要な問題だ」とグループ関係者は言う。最新の技術とインド市場に精通し、卓越したリーダーシップを持つ。ソフトバンク同様、世界のIT分野ではインド人が企業のトップに就任する事例が相次いでいる。

この8月、統括会社の新設等の組織再編を発表したグーグル。その中核事業会社であるグーグルのトップに年内に就く予定のスンダル・ピチャイ氏は、インド出身だ。南部のチェンナイの中流家庭に生まれ、インド工科大学(IIT)卒業後に渡米してペンシルベニア大学でMBA(経営学修士)を取得した。マッキンゼー等を経てグーグルに入社。インターネット閲覧ブラウザである『グーグルクローム』の開発等で実績を積み上げ、世界最大のインターネット企業のトップに指名された。2014年からマイクロソフトCEOを務めるサトヤ・ナデラ氏も、インドのハイデラバード出身。アメリカの大学に留学後に、『サンマイクロシステムズ』を経てマイクロソフトに入社した。その他にも『アドビシステムズ』『ペプシコ』『ノキア』等、グローバル企業のトップに就くインド人が増えている。その多くが40代と若く、“インド系アメリカ人”のような移民ではなく、インドで生まれ、インドで教育を受けた人材なのが共通点。インドでの熾烈な受験競争や多国籍企業での出世競争を勝ち抜いてきた克己心や粘り強さ、或いは多様性の中で育ってきた包容力があるというのが一般的な見方だ。インド式のマネジメント手法とは、どのような特徴を持つのか? 専門に研究しているロンドン大学ビジネススクールの元教授で、インドの財閥である『タタグループ』統括会社の役員会メンバーを務めるニルマルヤ・クマール氏は、「インド人には、伝統的にプロセスを機能毎に分離していくことがDNAのように備わっている」と分析する。例えば、レストランのウェイターは注文を取ることだけに集中し、配膳や片付けは違う人間が担当する。プロセス毎に役割が決まっており、その集合体として組織が動いていく。1人が何役も熟すことが当たり前の日本人から見れば、無駄が多いようにも思える。しかし、主な言語だけで23あり、人種や宗教・文化等多様性の国であるインドでは、役割と責任を決めなければ物事が進まない。「規模が大きくなるほど、役割・機能で分担するほうが組織力を発揮できる」とクマール氏は言う。

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『ミューシグマ』には、海外からも理工系大学卒の入社希望者が集まる。右下はディラージ・ラジャラムCEO。

世界の距離が縮まり、働く人の国籍も一層多様になっている現在、企業では人種の異なる人間が集まるプロジェクトが少なくない。「インド流の徹底した機能分離型のマネジメント力が求められるのは時代の要請だ」と、『野村総合研究所』のインド法人である『NRIインド』の中島久雄社長は言う。そうしたインド式のマネジメント手法と、人間的魅力を備えたインド人をリーダーに抜擢するグローバル企業は、これからも増えるだろう。トップマネジメント層を輩出するインドパワー。変化は大企業だけに起きているのではない。ベンチャー企業の世界でも、急激に存在感を高めている。インド南部のバンガロール。IT企業が集まり、“インドのシリコンバレー”と呼ばれてきたこの地で、理工系学生の就職活動に異変が起きている。これまで人気の就職先と言えば、『インフォシス』や『ウィプロ』等のインド系のIT大手や、外資系企業の研究開発部門。それが最近、そうした企業よりもベンチャー企業を選ぶケースが増えている。学生の憧れの1社が、2004年に創業した『ミューシグマ』というベンチャー会社だ。日本では馴染みが無いが、ビッグデータの解析で実績を上げ、欧米を中心に急速に知名度を高めている。『ウォルマートストアーズ』やマイクロソフト等、“フォーチュン500”のうち140社と取引がある。日本企業でも、『ローソン』や『日本たばこ産業(JT)』が顧客リストに名を連ねている。そうした企業から、「マーケティング費用を10%減らしたい」「商品をどこに陳列すればいいか?」「職場の士気を上げるにはどうすればいいか?」といった依頼が次々に寄せられる。ミューシグマは、顧客企業が持つビッグデータを独自の分析ツールと手法で解析し、解決策を提示する。ミューシグマには『セコイアキャピタル』『ジェネラルアトランティック』等の有名ベンチャーキャピタルも投資済みで、企業の評価額は70億ドル(約8400億円)以上と言われている。

世界のトップ大学や大学院を出た約3600人の理系人材が、ミューシグマの競争力の源泉だ。彼らを約1年半に亘る研修でみっちり鍛え、データを分析する“データサイエンティスト”から、データを経営判断に活用する“デシジョンサイエンティスト”に育てる。「今の経営では抑々、答えが見つからない場合も多い。そうした課題自体を発見できるのが我々の強み」とディラージ・ラジャラムCEOは言う。今では、急成長するこの企業に就職を希望する学生が、インドだけでなく欧米からも急増している。長年、インドの優秀な頭脳は欧米へ流出し続けてきた。グーグルのピチャイ次期CEOやソフトバンクのアローラ副社長のように、流出した頭脳はそのまま海外企業や研究機関に留まり、インドに還元されることはなかった。今、その流れが変わりつつある。「学生の多くは、海外での留学よりもインド国内に留まり、起業の道を選ぶ」(ラジャラムCEO)。スマホの普及でインターネット人口が急増しているインドをチャンスと捉えた起業家が、続々とシリコンバレー等から戻ってきているのだ。こうした人材がセコイアのようなベンチャーキャピタルを引き寄せ、大手企業を呼び寄せる。2010年以降に設立されたベンチャー企業の数で、インドはアメリカ・イギリス・イスラエルに次ぐ4位。2020年には、現在の4倍の1万1500社になるとの予測もある。次々と生まれるベンチャーの中から、ミューシグマのような世界的な企業が誕生し、そこで働こうと海外からインドへの“リバースブレインダイリューション(頭脳の逆流)”が起き始めている。将来的に、インドがアメリカの最大のライバルとなる可能性がある。




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世界のIT大手で誕生相次ぐインド人CEO。その一方で、インド人材が率いるインドの製造業が世界を制する兆しも見え始めている。韓国の『双竜自動車』にフランス2輪車メーカーの『プジョーモトシクル』――過去5年間にこれらの企業を傘下に収め、世界での知名度を急速に高めているインド企業がある。インド国内でシェア4位に付ける自動車や、農業機械・ITサービス等を手掛ける年商165億ドル(約2兆円)の有力財閥『マヒンドラアンドマヒンドラ』だ。2015年10月、マヒンドラは『三菱重工業』系の『三菱農機』に33%を出資する。日本企業に依るインド企業への出資は多くの事例があるが、その逆は異例。インド企業を中心とした再編の波は、日本にも及び始めた。「彼らの稼ぐ力を学び、独力では難しかったアジア市場に挑戦したい」。三菱重工の長谷川守執行役員は、マヒンドラを三顧の礼で迎え入れた理由を話す。提携候補として日本企業の名前も挙がったが、最終的にマヒンドラを選んだのは「うちの7倍売っている。(三菱製品の供給で)10年以上付き合い、凄い会社だと感じたから」(長谷川氏)。それは数字でも示されている。マヒンドラに依れば、同社の2014年度のトラクターの販売台数は約24万台。直近6年間で約2倍になり、トラクターの生産台数では『ジョンディア』や『クボタ』を抑えて世界トップの座に就く。シェア40%を握るインドだけでなく、アメリカでも中小型機では3位のシェアを握る。今や、クボタ等を脅かす存在になってきている。マヒンドラは、どうやって世界一へと駆け上がったのか? それを探る為に9月上旬、インド中部のナグプールにあるトラクター工場を訪ねた。

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「3000人超が働き、年10万台の生産能力があります」。そんな説明を聞きながら工場を歩いていると、人の代わりに鋳物部品を運ぶ自動搬送装置に遭遇した。見た目は稍不格好だが、装置の前に足を出すとセンサーで検知し、ぶつかる前にぴたっと止まった。工学を学んだマヒンドラの技術者たちが、必要な要素だけを見極めて設計・内製したことで、35万ルピー(約63万円)で作ったそうだ。市販品よりも65%安上がりだという。これこそが、彼らの凄みである“フルーガル精神”だ。“質素”や“倹約”と訳されるフルーガルは、論理的な思考で本質に立ち返り、資源が限られる中でも独創的なアイデアや解決法を生み出すことを指す。アシュトシュ・トリパチ工場長を始め、現場の多くの担当者が二言目にはこの言葉を口にする。加工する部品を解析し、工具の刃先を最適な形に直して、加工費を9割減らす。電気回路を設計して、機械の近くに人が立ち入ってくると知らせる安全装置を自ら作る。手書きだった機械のメンテナンス情報を電子化して、紙の使用量を削減する──。技術者たちが導き出した1つひとつの節約は僅かでも、積み重なれば相当な金額だ。トリパチ工場長が、15㎡程のブースを案内してくれた。壁にはびっしりと事例や設計図が張られ、手作りの機器が並ぶ。工場で働く6人を選抜して2012年に始めた“イノベーションプロジェクト”の為の部屋だという。謂わば、先に紹介したフルーガルな自動搬送装置等を生み出してきた場所で、これまでの成果は135件にも上る。こうしたマヒンドラの取り組みは、中国企業等と比べて地味で地道に見える。成長の勢いと潤沢な資金に任せて、「新しい機械や装置をバンバン買い、先行企業に追いつく」というスタイルではないからだ。その分、品質やコスト等のモノ作りの根本を忘れない粘り強さがある。マヒンドラは農機部門だけの営業利益率を公表していないが、10%を上回る模様。フルーガル精神が生み出す圧倒的なコスト競争力。それこそが、マヒンドラの最大の強さだ。

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農機・2輪車部門を統括するラジェシュ・ジェジュリカール氏(左写真)は、「インドは長い間、資源が乏しかった。フルーガル精神は、限られた資源で最大の効用を発揮する為に生まれた、インドの根幹にある考え方だ」と説く。フルーガルという独自の発想で身につけたモノ作りの力。そうして成し遂げた台数世界一を、マヒンドラは更に飛躍させようとしている。その象徴が、2500人の技術者が働く研究開発施設だ。チェンナイ空港から車で南へ走り続けること1時間ほど。でこぼこ道を行くと突然、周囲の景色が“別世界”へと変わった。広く舗装された道に、整然と植えられた街路樹・ホテル・学校。マヒンドラグループの不動産会社が造成中の街区だ。その中でも、とりわけ美しく整備された一角に『マヒンドラリサーチバレー(MRV)』はあった。2012年にオープンした東京ドーム10個分の巨大な施設内には、振動や耐久性の試験設備やテストコースが点在し、迷彩模様のシールで覆われた開発中の農機や車が走り回る。エンジンの開発棟には、インドよりも厳しい世界中の排ガス規制のデータが張られていた。ジェジュリカール氏は、「グローバル成長を加速する為にMRVを造った」と話す。インドの各工場に散らばっていた設計や解析の技術者たちを一堂に集め、研究開発のスピードと質を世界を制するレベルへと引き上げるのがMRVの狙い。インドきっての研究施設は、大学を卒業した優秀な理系人材を集めるのにも好都合で、今や農機部門の技術者の7割は35歳以下になった。世界の競合と比べても圧倒的に若い。世界的な“IoT(モノのインターネット)”の潮流を農機開発に取り込むのも、MRVの役割だ。グループに抱える『テックマヒンドラ』というIT企業とMRVを、既に連携させ始めている。ジェジュリカール氏は、「より積極的に、デジタルを製造業に組み込んでいく」と言う。詳細は「企業秘密だ」と言うが、農機の稼働状況を遠隔監視するシステム等の研究を進めているようだ。

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自国に巨大且つ当面は成長が見込める市場があるにも拘らず、何故そこまでグローバルに拘るのか? ジェジュリカール氏は、こう答えた。「寧ろ、40%のシェアを持つからだ。成長を続けるには、海外に攻めていかなければならない。競争相手は皆、インドにやってきている」。インド市場は、その規模の大きさ故に1980年代以降に外資が参入、インドの製造業は国内で国際競争に曝されてきた。長年の経済の低迷で成長を海外市場に求めたことも、グローバル志向の背景にある。母国市場に安住できないからこそ、海外企業の買収や技術の取り込みにも貪欲になった。マヒンドラに限らず、『ジャガーランドローバー』を買収した『タタ自動車』や、東南アジアやアフリカでM&A(合併・買収)を重ねる家電の『ゴドレジグループ』等、世界で存在感を増すインドの製造業は少なくない。ナレンドラ・モディ首相の経済改革と相俟って、こうした動きは更に加速するだろう。


キャプチャ  2015年9月28日号掲載


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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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