【オワハラ時代の大学と就活】(05) 大手企業に受かる新卒者は全体の3割…“普通の学生”と中小のマッチングを

job hunting 07
新卒採用については、どうも政府やマスコミで取り上げられる論点がずれている気がしてならない。一部の超人気大手企業にばかり焦点が当てられているのだ。その結果、圧倒的多数の“普通の学生”が却って面倒なことになっていく。その理由として、新卒採用市場の構造がよく理解されていないことが挙げられる。人気ランキング100位以内の“人気大手企業”の採用数は、『就職四季報』に記載された採用実績から推計すると、最近15年間の平均値で年2万人弱に過ぎない。一方で、文部科学省の『学校基本調査』に依れば、大学の卒業生は毎年55万人に上る。つまり、人気大手企業の採用数は新卒者全体の4%にもならない。東京大学や京都大学等の旧帝大や、早稲田・慶応といったトッププランド校の1学年当たりの定員数が4万人近くに達することを考えると、その少なさがわかる。採用企業についての基準をもう少し下げて、従業員1000人以上の一般の“大手企業”に目を向けてみよう。しかし、その採用数は例年10万人前後だ(厚生労動省『雇用動向調査』を基に推計)。これでも、大学卒業生の2割にも満たない。残りの学生は、中堅・中小企業に行くしかない。つまり、大卒者の就職先のメインは大手ではないのだ。この数字は、「好不況に依って大きく変動する」との指摘もある。確かに間違いではない。但し、“言われ過ぎ”の感がある。実際には、不況期に減ったとしても平年の7割程度、一方、景気のピークに増えたとしても同1.5倍が関の山だ。つまり、今年のように学生にとって“売り手市場”と言われるような年でも、人気大手企業には3万人程度しか入れない。早慶・旧帝大の学年定員よりも遥かに少ない。大手企業全体の採用人数も計16万~17万人程度だろう。残りの学生30万人以上は中堅・中小企業に就職せざるを得ない。

メディアは、こうした構造を無視して、「好景気だと卒業生の多くが大手企業に入れる一方、不況だと誰も入れなくなる」と極端なことを言い過ぎる。その為、例えば不況期に就職活動をする学生たちは、「留年して来年、景気さえ回復すれば就職事情も好転するだろう」と夢を抱いてしまう。大きな間違いだ。いつだって、人気企業は狭き門なのだ。不況になると、優秀な学生なのに就職できずにフリーターになるというような話もよく取り上げられる。しかし、優秀なら確かに不況に依って第1志望の企業に入れないこともあるかもしれないが、それよりもいくらか条件の劣る第2志望や第3志望の企業には決まる筈。企業の採用数が減ったとしても、平年の7割程度の採用数は維持されるのだから。実態は、学生のレベルに応じてちょっとずつ格下の企業に採用が決まっていく“玉突き現象”が起き、条件の不利な学生が最後に押し出されてフリーターとなる。“板子一枚下は地獄”というより、学生側と企業側の需要や人気に応じた“スペクトラム(分布状況)”の中で、緩やかな移動が起きるというのが正解だろう。好況だろうが不況だろうが、条件の有利な学生は比較的、納得のいく企業に決まっていく。裏を返せば、偏差値55以下の所謂“ボリュームゾーン”にある大学の学生は、いつだって就職に困ることになる。彼らの就活を如何に上手く進めるか? この視点が欠けている為、新卒採用スケジュールの後ろ倒しという天下の愚策が生まれてしまった。




今年から、経団連加盟企業は8月に面接解禁、10月に正式内定というルールになった。現実的には、就活学生の殆どが“入れはしない”人気企業に夢を抱き、秋口まで逡巡することとなる。そして、入社の夢が砕かれてから漸く中堅・中小企業の受験へと流れる。こんな動きを続けていて、卒業までに就職先が決まるだろうか? 更に、問題が1つある。こうした“受かりもしない”大手人気企業の説明会に、学生たちはせっせと通う。今年から、企業の採用広報活動が解禁される3月から面接が解禁される8月1日まで、説明会の実施期間は5ヵ月も延々と続くのだ。大学4年生の1学期は丸々潰れてしまう。昨年までは、広報活動の解禁は3年時の12月で、面接解禁は4月だった。1月の後期試験と重なる為、大手企業の会社説明会は1月末~3月末の2ヵ月間に集中した。春休みに当たったこともあり、学業への影響は少なかった。学業に大きな影響を及ぼす変更を、果たして“改革”と呼べるだろうか? このような現実を知っていたから、私は「大手企業の面接解禁時期を3月に前倒しすべきだ」と訴え続けてきた。それなら、4月中旬には人気企業の採用活動は粗終了し、学業への影響は更に少なくなっていた筈だ。大手企業に欠員が出た場合でも、ゴールデンウィーク中に再度採用活動を行うことを許す。経団連がこうした流れを作っておけば、夏休み前には活動が一巡したことで目の覚めた学生が、自分に合うような中小企業をじっくりと探せたことだろう。大多数を占める普通の学生と、中小企業をどう結びつけるかに軸足を移すべきだ。 (雇用ジャーナリスト 海老原嗣生)


キャプチャ  2015年8月25日号掲載


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