【特別対談】 医師2人が対決! “がん放置療法”は正しいのか?――近藤誠×大場大

「痛み等の自覚症状が無い限り、癌は放置すべき」と主張してきた近藤誠氏。これまでも物議を醸してきたが、新たに批判する医師が現れた。『週刊新潮』で「間違っている」と断じた大場氏は、8月に“近藤批判本”まで上梓するという。その2人が誌上で激突した。

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「無用な手術を受けて、医師に殺されるな」――医師でありながら、医学界の“常識”に疑義を唱え続ける近藤誠氏(66)。彼の主張は大きな反響を呼んできた。慶應義塾大学医学部を昨年定年退職し、現在は『近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来』で患者の相談を受けている。そんな近藤氏に対して『週刊新潮』(7月9日号)誌上で真っ向から異を唱えているのが、『東京オンコロジークリニック』の大場大医師(42)だ。記事のタイトルは、『“がんは放置しろ”という近藤誠理論は確実に間違っている!』。大場氏は、外科医と腫瘍内科医両方の立場から癌治療に関わってきた。金沢大学医学部を卒業後、同大学第2外科・がん研有明病院化学療法科や東京大学肝胆膵外科助教を経て、現在はクリニックを開き、癌患者にセカンドオピニオンを提供している。『週刊新潮』に書かれた近藤氏に対する大場氏の基本スタンスは次のようなものだ。「実際のところ、私は近藤氏のことを癌治療の専門家としては認識していません。というのも、“医師としての臨床実践”が長らく欠如しているからです」「彼のこれまでの著書を手に入れ、内容を読み進めると、そこにあったのは信じられないような非科学・バイアス(偏り)・観念・非合理のオンパレードでした」。本誌は、近藤氏と大場氏に2時間半に亘り直接議論を交わしてもらった。ぶつかり合う2人の主張から、浮かび上がった真実とは何か?

近藤「大場さんの新潮の記事、読ませてもらいました。今回はそこで批判された事に対して、僕が反論するという形になる訳ですね?」
大場「はい。近藤先生が仰る有名な“癌擬き理論”では、『ホンモノの癌は発見時に既に転移しているから、治療は無駄。癌擬きは転移しないから放置していい』と主張しています。しかし、早期癌を発見しても『(ホンモノの癌なら)治らないから放置すべし』という論法には、私は反対です」
近藤「例えば、早期胃癌を発見した時、治療する意味があると証明するには生存期間が延びたり、癌が治るという明確なメリットを患者さんに示す事が必要だと思う。早期胃癌を発見して手術をしたから寿命が延びたという、確としたエビデンス(医学的根拠)はお持ちですか?」
大場「手術をしないで放置した患者さんと、手術した患者さんを長期に追跡した時に生存利益として手術が勝るデータがあるかという事を仰っているんですか? それは現実的ではないですし、比較試験としては存在しないと思います」

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【韓国の病・MERS騒動という悲劇】(下) 情報統制の拙さが浮き彫りになった――MERS感染者がいる病院名を長く公表しなかった方針は誤りだ

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『MERS(中東呼吸器症候群)』感染が拡大する韓国では、国に依る情報統制も問題視されている。国民は政府の対応の拙さを批判しているが、恐らく最も激しい怒りと不安を招いたのは、感染者の治療に当たっている病院名を公表しなかった点だろう。最初の感染者が確認されてから約3週間も、政府はそうした病院名を非公表にしてきた。政府は公表を控えた理由の1つとして、「感染を恐れた人々が当該の病院に行かなくなることに依り、病院が経済的な損失を被ることを防ぎたかった」としている。情報の空白を埋めたのは、市民の憶測だった。インターネットユーザー等が感染病院リストを纏めてオンライン上に掲載。感染者のいない病院を間違って名指ししたとして、名誉毀損罪で警察から取り調べを受けた人もいる(韓国では、名誉毀損罪で7年以下の禁錮刑が適用される場合もある)。韓国は、民主国家でありながら情報は厳しく統制されている。例えば、殺人やレイプで有罪判決を受けた犯罪者の名前は報道されず、インターネットではポルノや北朝鮮を支持するような内容は厳しく検閲される。多くのメディアは、MERSに対する政府の対応を批判しながら、殆どが病院名の公表は自粛した。そんな横並びの体制から抜け出し、建陽大学病院やサムスンソウル病院等の6つの病院の名前を挙げて報じたのは、インターネットメディアの『プレシアン』だった。

今月初めに実施された世論調査(全国500人の成人を対象)では、回答者の83%が感染者の収容されている病院名の公表を希望していた。この調査から数日後、文亨杓保健福祉相は漸く、感染が拡大するきっかけとなった病院を1ヵ所だけ公表。ソウル近郊の平沢聖母病院で、同病院を訪れた人に保健当局へ名乗り出るよう呼び掛ける為だ。従来の方針を変えて、全ての病院名を公表したのは、それから更に2日後のことだった。高麗大学の朴景信教授(法学)は、「政府は感染者の収容施設を1ヵ所に纏めることで、各病院の経営に損失を齎すリスクを回避できた筈だ」と指摘する。「今回の1件は、政府の頼りなさと政府に対する国民の信頼の低さを表している。国民からの信頼が厚ければ、政府は1つの大病院を隔離施設に指定し、感染者全員を集めることもできた」。3週間も憶測が飛び交ったせいで、風評被害に遭った病院としては、今更情報公開されても“時既に遅し”だ。 (ジョン・パワー)

               ◇

MERSに四苦八苦する朴槿恵大統領。昨年のセウォル号転覆事故と同様、今回の騒動でも一部の韓国メディアが自国を“後進国”と評していますが、SARSの際は適切に対応したことを考えると、問題は国や社会ではなくて現政権の体質にありそうです。感染の疑いのある人を電話で励ますパフォーマンスの一方で、自らの言葉で国民を安心させようとはしない――国民の安全を最優先して訪米を延期した割には、誠意に欠けているように見えます。 (本誌編集長 横田孝)


キャプチャ  2015年6月23日号掲載


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“ゆるトク”機能性表示食品、出足振るわぬ4つの誤算――2ヵ月半で僅か36品目、健康食品大手も二の足を踏む…“企業連合”で参入目指す、販売員の教育も必要

「内臓脂肪を減少させる」「おなかの調子を整える」──。トクホ並みに食品の機能を謳える『機能性表示食品制度』が2015年4月に始まった。届け出だけで表示できる“ゆるトク”への期待は高かったが、緩い出足に留まっている。 (河野紀子・中尚子)

「制度が始まって2ヵ月以上経つが、一体どうなっているのか…」。大手食品メーカー『マルハニチロ』商品技術開発部長の小梶聡氏は、困惑した表情を見せながらこう語る。制度が始まった2015年4月1日に、主力商品の一部を『機能性表示食品』として消費者庁に届け出たが、未だに受理されていない。「小売りから問い合わせが続いていて、『どんな商品をいつごろ出すのか?』と聞かれるが、確実なことを言える状況じゃない」。2015年4月、『機能性表示食品制度』がスタートした。この制度では、「内臓脂肪を減少させる」「おなかの調子を整える」等の食品に含まれる機能性について、身体の部位と併せてメーカーの責任で自主的に商品に記載できるようになった。対象には健康食品やサプリメントだけでなく、トマト等の生鮮食品も含まれる。制度開始から3ヵ月が経とうとしている今、漸く機能性を謳った商品が店頭に並び始めた。だが、食品メーカーや小売り等、ビジネスチャンスが広がると期待していた業界全体が、思わぬ4つの誤算に見舞われている。

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【誤算1】迅速に出せる筈が、受理までに数ヵ月も
ある食品メーカーの広報担当者は最近、消費者庁のウェブサイトをクリックするのが日課となっている。機能性表示食品の受理状況を確認する為だ。4月に消費者庁に書類を送ったが、届け出が受理されず、一向にアップロードされない。「受理までにどのくらいかかるのか教えてもらえず、只管サイトをチェックしている」と困り顔だ。機能性表示食品は、「特定保健用食品(トクホ)」と違い、消費者庁の審査を受ける手間がかからないのが最大の特徴。その代わり、企業は自社の責任で、成分の機能を裏付ける科学論文などを消費者庁に提出し、同庁がその書類をウェブサイトで公開する。審査が無い分、新商品を迅速に出せるようになり、新たな健康市場が生まれるはずだった。消費者庁食品表示企画課の担当者も、「今回の制度は飽く迄も届け出制なので、審査はしない。書類に不備がないかだけを確認している」と説明する。だが、6月18日時点で消費者庁には約200品目分の書類が届いているにも関わらず、受理した品目数は僅か36品目に留まる。「消費者庁ではたった数人で書類を細かくチェックしているようで、殆ど手が回っていない」とある業界関係者は明かす。審査が無いとはいえ、複数の企業が届け出書類を差し戻されている。消費者庁はその件数を明らかにしていないが、それも受理が遅れている理由の1つだ。消費者庁は差し戻した書類が再び届いても優先的には確認せず、届いた順に書類を確認するようにしている。更に、受理後も直ぐに商品を発売できる訳ではない。届け出番号を印刷しなくてはならない為、パッケージを前もって作ることができないからだ。大手サプリメントメーカーの『ファンケル』は、「パッケージの印刷を乾かすだけで1ヵ月もかかるのに」と訴える。

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【韓国の病・MERS騒動という悲劇】(上) MERS騒動と韓国の根深い病――後手後手の対策で感染を拡大させた朴槿恵政権…汚職問題やセウォル号事故に続く失策が、韓国政治の病巣を浮き彫りにする

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韓国で『MERS(中東呼吸器症候群)コロナウイルス』の感染が確認されてから1ヵ月になる。今回の最初の感染者とされるのは、中東から帰国した60代の男性。診察した医師は、その症状を見逃した。初期の感染者を帰宅させたり相部屋に入院させたりした為に、ウイルスが拡散する事態になった。先週末時点で、韓国の感染者数は138人。少なくとも7人が完全に回復したが、14人が死亡し、隔離対象者は3000人を大きく超える。死亡リスクが高いのは高齢者や乳幼児だ。『WHO(世界保健機関)』の推定に依れば、MERSの致死率は凡そ36%。今回の韓国での流行は主に首都のソウル市、及びソウル圏の医療機関内で起きている。韓国側と共同で調査したWHOは先週、「規模は大きく、様相は複雑だ」と現状を評価。「完全な終息にはまだ時間がかかる」と述べ、「感染者数は更に増える」との見方を示した。ただ、WHOも『アメリカ疾病対策センター(CDC)』も渡航制限を課しておらず、「国境閉鎖といった措置は不必要だ」としている。爆発的な感染はこれまで起きておらず、今後発生する可能性も低そうだ。記憶に新しい『エボラ出血熱』の大流行に比べれば、今回のMERS感染はかなり規模が小さい。昨年始まったエボラの流行は、西アフリカのリベリア等で大きな被害を齎した。今月上旬時点で死者数は1万1000人を、患者数は2万7000人を上回る。

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エボラは感染の範囲も広かった。医療関係者が病に倒れ、治療体制が崩壊するケースもあった。社会的偏見や迷信のせいで回復患者が差別され、一部では秩序維持の為に軍が出動。「感染がグローバル規模で拡大するのでは」と、国際社会は恐怖に震えた。韓国のMERS流行は、当時の状況とは程遠い。この国の医療精度は、西アフリカ諸国より遥かに進んでいる。『豚インフルエンザ』や『SARS(急性呼吸器症候群)』が流行した際、韓国の手際は見事だった。徹底的な入国管理や政府の対策に依り、国内でSARS患者は1人も出さずに済んだ。だが残念ながら、今回はそうではなかった。その結果、混乱が発生し、その混乱がメディアの報道に煽られて国内外でパニックへと膨れ上がった。韓国政府の当初の反応は、控えめに言っても消極的だった。初期段階では、MERS感染が疑われた患者は「他人との接触を避けて、家で寝ていろ」と指示されただけ。対策ガイドラインが出されることは無く、『韓国疾病予防対策センター』は何の発表もしなかった。感染者と感染場所に関する情報も殆ど伝えられなかった。これが国民の混乱と怒りを招いた。政府は当初、感染者数や感染者が入院中の医療機関の名称を公表しようとしなかった。「情報を早めに提供していれば、感染者がいる病院への訪問で2次感染・3次感染する事態は避けられた」と見る向きは多い。患者の遺族は政府に賠償を求める構えで、訴訟問題に発展することは粗確実だ。政府の“情報封鎖”は凄まじいパニックを齎した。ソウル市の朴元淳市長は政府の意向に逆らい、今月2日深夜に緊急記者会見を開いて感染医師の行動を公表。その後に起きた政治的対立や中傷合戦を見れば、政府が只管困惑していたことは明らかだ。

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健康診断革命で、もう社員を死なせない――完璧ではない定期健診、社員を困惑させる項目も…より高精度・簡便に、血液1滴で鬱病を客観診断

企業で必ず実施するように法律で定められている『定期健康診断』。だが現状の仕組みでは、重大な病気から社員を100%確実に守ることはできない。社員を死なせない為の、官民一体となっての“健康診断革命”を提言する。 (宇賀神宰司・西雄大・染原睦美)

「どれほど忠告しても健康診断に行かなかった。こんなことになるなら、首根っこを掴まえてでも検査に連れていくべきだった」。大手消費財メーカーに勤めるA氏はこう悔やむ。A氏の上司である役員のB氏が心筋梗塞を患い、48歳の若さで急死したのは今年4月のことだった。1990年に入社し、開発部門に配属されると20代からヒット商品を連発。近年は、同社史上最速で役員に就任し、海外市場開拓で陣頭指揮を執っていた。将来の社長候補とも目されていただけに、企業が受けた痛手も大きい。なぜ、B氏は健診を拒んだのか? きっかけは5年前、健診を定期的に受け“異常無し”の判定が続いていた最愛の妻が、癌で死んでしまったことにあった。「会社の健診を受けていれば、少なくとも命に関わるような病気は早期発見できる」。そう信じていたB氏は以来、“大の健診嫌い”となり、「健診なんか時間の無駄。受けても健康でいられるとは限らない」と公言していたという。妻の死を機に、自暴自棄になったかに見えるB氏。だが、その主張は半分は間違っているが、半分は正しい。

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B氏を襲った心筋梗塞は、健診で判明する血圧や血液検査・心電図等の異常から早期発見が可能と言われている。その意味で、健診は決して“時間の無駄”ではない。ただ一方で、生前のB氏が言っていた通り、「健診を受けていれば重大な病気を100%早期発見できる」というのは明らかに言い過ぎだ。現在の定期健診が始まったのは1972年。『労働安全衛生法』の下、「職場における労働者の安全と健康を守り、労働災害を防止すること」を目的に、全11項目の検査が企業に義務付けられた。だが、抑々11項目の検査だけでは見つけるのが難しい病気も少なくない。例えば脳腫瘍だ。2011年7月に脳腫瘍の摘出手術を受けたシステム開発会社『オーシャンブリッジ』(東京都渋谷区)の高山知朗会長は、普段から人一倍健康に気を使い、健診も欠かさない経営者だった。「肥満度が高い」と指摘されれば減量に励み、「尿酸値が高い」と言われれば酒量を制限。あらゆる検査の数字を改善しようと努力を重ねてきたが、脳腫瘍はその予兆すら発見できなかった。高山会長はその後、2013年5月に白血病・悪性リンパ腫を発症。現在、維持療法を続けている。「発症の2年半ほど前から疲れ易く、物が歪んで見えることがあった。眼鏡を替えたら治ったような気がしたので放置してしまったが、健診に脳関係の検査があれば早期発見できたかもしれない」と高山会長は話す。こうした状況を受け、発見できる病気の数を増やそうと、企業や健康保険組合が社員に実施する健診項目は増加傾向にある。2008年には40~74歳を対象に『内臓脂肪型肥満(メタボリックシンドローム)』に着目した健診(通称:メタボ健診、正式名:特定健診・特定保健指導)が義務化。今年12月からはメンタルヘルスチェックが強化され、医師等が従業員の心理的負担を把握する検査(ストレスチェック)が始まる。だが、そうやって項目が増えると、今度は検査が煩雑になり、肝心の受診率が上がり難くなる事態になりかねない。厚生労働省が2007年に実施した調査では、全国の事業所における定期健診の受診率(常用労働者)は81.2%。5人に1人が健診を受けていないのが実情だ。ただでさえ、今の健診には時間がかかる。検査時間も然ることながら、大企業では多くの社員が検査会場で長蛇の列を作ることも珍しくなく、所要時間が1時間以上になることも多い。こんな状況で新たな項目が次々に加われば、健康に自信のある人が健診を煩わしく思っても不思議ではない。

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【暴言の構造】(下) 言論崩壊を防ぐもの――実は“物書き”の文章は怪しいもの…それが読むに堪える代物に仕立てられるのは、プロの仕事が介在するからだ

何を血迷ったか、私の書いたものを入学試験に出す大学があった。昨年、中部地区の私立D大学というところから、拙著『衆愚の病理』を「国語の入試問題に使いました」という連絡を貰った。後日、問題を送ってきてくれたので「物は試し」と取り組んでみたが、中々難しい。特に、「筆者はなぜそう考えているか」とか「本文の趣旨と合致するものを選べ」とかいうものに迷うのである。因みに、“正答”はついていなかった。高校生の娘にも見せて「これってこっちだよなあ?」と聞くのだが、「違うよ、こちらのほうでしょ?」等と言われて考え込む。「そうかなあ? だけど待てよ、筆者って俺じゃないか。その“考え”が、『娘のほうが正しい』なんてことがあるのか?」。遂には、「ええい、大体こいつの書いていることはわけがわからん!」と叫んでしまう始末である。受験生には申し訳無いが、こんな問題で苦しむのは私のせいじゃないからね(そうか?)。その中で一番ショックだったのは漢字の問題で、「……のゴジセイになった」というものである。私はこれを覚えている。最初、本誌編集部に送った原稿には“御時勢”と書いていて、校閲さんから「“御時世”の誤りです」と指摘を受け、「そうだっけ?」と思った箇所だ。D大学は中部地区でも偏差値がかなり低いほうのようだが、これでは嘗ての受験秀才の私は、最早そういうところ(失礼!)にも入れないということになる。それ以来、私を見る娘の目が冷たいのは気のせいだろうか?

そんなことはどうでもいいが、斯くの如く、物書きの文章というのは怪しいのである。多分、私だけが例外的に酷いということではあるまい(コラ、娘! 何だその疑いの眼は!)。それをちゃんと意味の通じる、読むに堪える代物に仕立てるのがプロの仕事で、これは决定的に重要である。これ無くして、言論の自由は無い。なぜなら、それ無しに出てくる“言論”は“便所の落書き”という指摘にもある通り、抑々“言論”ではないからである。そういうことで、今回は出版文化を取り上げる。前回の続きとして、「それを防ぐ為にはどうしたらよいか?」の答えがこれである。先日、本誌2月号で『“出版文化”こそ国の根幹である』という特集を組んでいたが、「このフレーズは誇張ではない」と私も思う。

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【暴言の構造】(上) “本当のこと”は取り扱い注意――病名告知・余命宣告…何れも本当のことなのに、場合に依っては“暴言”として受け止められるのはなぜなのか?

医者が吐く言葉を“暴言”として、深く恨みに思う患者は多い。私の患者にもいるだろう。しかし、実際に“言ってしまった”内容は、我々からすると極当たり前のことで、「何がいけなかったのかよくわからない」という場合も屡々である。因みに、私が研修医を怒鳴りつける、若しくは私が研修医の頃に怒鳴られた“罵声”は“そのつもり”で飛ばされるので、これとは異なる。そこで、「一般論として、“暴言”は如何に生まれるか?」を今回と次回で考察してみよう。

話はその昔、私が癌の病名告知を始めた頃に戻る。当時はこれを“暴挙”と考える医療者も多かった。25年前、初期研修を終え、一人前の医者になったつもりでいた私は、大学に居場所を見つけられず、横浜の市中病院に就職した。そこでは、上司となる部長を始め、主要職員は皆慶應卒であり、東大出の私は好奇の目で見られた。その病院で多くの肺癌の患者を抱えていた部長が、「もう、患者には癌の病名を言わないと仕方が無いよな?」と診療の方針を転換することを決め、私も「そうですね」と直ぐに賛同した。当時、癌の病名告知はアメリカでは一般的になっていたが、日本では殆どされていなかった。“院内政治家”として敵も多かった部長と、慶應閥の中に1人だけ入り込んだ東大卒の若僧のコンビは、その意味でも突出していた。「先生、『癌だ』って患者に言うんだってね」と何度物珍しげに言われたことか。「『時代は告知に流れつつあった』とは言いながら、病院のバックアップも無しに蛮勇を振って一歩を踏み出した部長は偉かった」と、今にして思う。院内から揶揄の声はあったものの、表立っての批判は無く、且つ部長は看護部を抱き込んで、そういう患者のフォローやケアの協力態勢も取り付けてしまった。とは言いながら、おっかなびっくりであった。先ずは家族に、「我々はご本人に病気のことを申し上げます」という了解を取り、それから本人に告知をする。随分渋る家族も多かった。そして本人には、いきなり「肺癌だ」とは言わない。「肺の悪性腫瘍である」と告げる。本人から「癌ですか」と訊かれたら、「そうです」と答える――というステップを踏むことにした。病名告知が一般化していたアメリカでも、「“cancer”という言葉を使うのはできるだけ少なくしろ。その単語は不必要に“死”を連想させる」という“注意”を喚起する論文が多かった時代である。

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DeNAも参入…遺伝子解析に医学界が「待った」――諸外国に比べて議論が成されていない日本、早々に企業が撤退する可能性も

2014年から民間企業の参入が相次いだ個人向け遺伝子解析サービス。サービスを提供する企業に対する認定制度作りが始まった。だが、医学界との溝は深く、企業がサービス展開を加速できない可能性も出てきている。 (染原睦美)

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期待の新市場として2014年以来、参入を表明する企業が相次いでいる遺伝子解析サービス。その事業者に対する認定制度が2015年秋にもスタートする。個人遺伝情報取扱協議会(CPIGI)と経済産業省が中心となり、5月中に認定基準を確定。10月を目途に認定作業を開始する予定だ。認定基準は、CPIGIが定めている自主基準がベース。「解析の基となる科学的根拠が提示されているか」「個人情報は保護されているか」「情報は正しく提供されているか」等をチェックし、事業者に対し“お墨付き”を与えるという。個人向け遺伝子解析サービスは、唾液や口内粘膜を利用者が自ら採取し、郵送してもらい、遺伝子情報を解析するサービス。2万円前後で特定の疾病リスクや体質を分析でき、効果的な生活習慣の改善や病気の予防を可能にすると言われている。アメリカでハリウッド女優が遺伝子検査をしたことで注目が集まり、国内でも2014年以降、DeNAやヤフー等インターネット企業を中心に参入が相次いだ。その一方で指摘されてきたのが、性格診断やダイエット診断といった名目で、根拠の無いサービスを手掛ける事業者も少なくないことだった。その点、認定制度を設け、事業者のクオリティーを担保することができれば、市場拡大に追い風が吹く可能性は高い。参入企業には設立間もないベンチャーも少なくない為、そうした企業には、公的団体からお墨付きを得られればビジネスを展開する上でメリットが大きいことも確かだ。

一方、産業拡大に向けて、認定基準という大きな土台が整いつつある遺伝子解析サービスに、思わぬ障害が浮上している。医学界から、ここへきて、サービスの問題点を指摘する声が大きくなり始めたことだ。「患者の不安を煽るだけのサービスは非常に問題です」。東京女子医科大学附属遺伝子医療センター所長の斎藤加代子氏はこう話す。「インターネット経由で受けた遺伝子解析サービスで、『脳血管の異常を起こす病気になるリスクが高い』と診断されたのですが、大丈夫でしょうか」「サービス会社に相談しようとしたら、『専門家はいない』と言われました」──。2014年の秋、斎藤氏の元にこんな相談が寄せられたという。斎藤氏に電話で相談してきたその患者が受けたサービスというのが、『DeNAライフサイエンス』が提供する個人向け遺伝子解析サービス『MYCODE』だった。DeNAの創業者である南場智子氏の肝煎りで、東京大学医科学研究所と提携し2014年8月に開始した。“ゲーム会社”の印象が強いDeNAは、遺伝子解析については慎重にサービスを展開してきた。東大医科研内に数億円を投資して独自のラボを持ち、専門家も積極的に採用した。DeNAライフサイエンスのトップも2015年1月には、マーケティング畑が長かった深澤優壽氏から、総務省出身の大井潤氏に交代。DeNAは「人員の最適化」と説明するが、業界内では、“ゲーム会社”というイメージを払拭し、いよいよ遺伝子ビジネスへアクセルを踏む準備の1つとも受け止められた。その大井社長は、「利用者の疑問や不安に応えられるよう、受け取った解析結果等について認定遺伝カウンセラーや医師等に相談できる窓口も充実させてきた」と説明する。

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つらい耳鳴り、雑音で和らぐ――意識そらす治療が効果

実際に鳴っていない音が聞こえる『耳鳴り』。原因は分かっておらず、症状が悪化すると睡眠障害などを引き起こし日常の生活に影響を及ぼすこともある。根本的な治療法は確立されていないが、医師によるカウンセリングと、耳に装着する小型機器から耳鳴りに似た音を流して意識をそらす新たな治療法が効果を上げている。 (近藤佳宜)

埼玉県草加市の女性(72)は2013年冬、セミの鳴き声のような音が聞こえるようになった。早朝や深夜に悩まされることが多く、寝不足になることもしばしば。「ひどいときは頭の中がわんわんして涙が出る」と漏らす。複数の耳鼻咽喉科で「異常はない」との診断が続き、大学病院で耳鳴りだと判明した。病院薬や漢方薬を服用。はり治療にも通ったが改善せず、最新の治療法である『TRT』を受けるため東京医科歯科大学の耳鼻咽喉科を受診した。『TRT』は『Tinnitus Retraining Therapy』の略称で『耳鳴り順応療法』と訳される。補聴器のような形のサウンドジェネレーターという小型機器を耳にかけ、耳鳴りよりやや小さな雑音を流し、耳鳴りから意識をそらす。通常1日6時間以上装着し、2年程度の治療を要する。早ければ約3ヵ月で効果が表れる。薬による治療で効果のない人でも6~7割に効くという。東京医科歯科大がTRTを導入したのは2003年。耳鼻咽喉科で耳鳴りを訴える新規患者は年約300人いる。中でも女性のような重症患者にTRTを施す。女性は耳鳴りが酷い時に装着するといい、「寝られなくてつらい思いをすることもなくなった」と喜ぶ。TRTは患者の悩みや不安に応えるカウンセリングも重視される。女性も耳鳴りの診断を受けた大学病院で「がんよりも治すのが難しい」と医師に言われ、「がっかりして落ち込んだ」と打ち明ける。耳鼻咽喉科の野口佳裕講師は「医師の心ない対応によって患者の耳鳴りの苦痛度が増すことがある」と指摘する。野口講師は患者の不安を払拭するため、検査で難聴の有無を調べたり、脳の重大な病気を疑う場合には磁気共鳴画像装置(MRI)で脳の診断をしたりする。耳鳴り発生のメカニズムを説明し、最終的に患者が耳鳴りを“気にしなくてもいい音”として受け入れられるよう尽くすという。

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【本当に必要な医療のために】(後編) 認知症、「ボケたらお仕舞い」は真っ赤なウソ

認知症になったらどうなる? 「何もわからなくなる」。ボケたらお仕舞い。多くの人がこう思っている筈だ。実は私もそうだった。「認知症になったら、何れ家族の顔もわからないまま寝たきりになる」と。それが、認知症のことを知らない人が作り上げた真っ赤な嘘だと知ったのは、10年近く認知症を患っていた兄が2年前に亡くなってからである。

クリスティーン・ボーデンさんは『私は誰になっていくの? アルツハイマー病者から見た世界』(クリエイツかもがわ)で、認知症になっても豊かな感情を持っていることを綴っているが、それはあくまでも知識にすぎなかった。それを実感したのは、島根県出雲市にある重度認知症患者のためのデイケア『小山のおうち』(エスポアール出雲クリニックの高橋幸男院長が運営)を訪ねた時である。ここには男女合わせて14~15名の重度認知症高齢者がいる。ここで興味深かったのは、訪問者が若い女性だと男性陣の目が一斉に輝き、男性だと女性陣から熱い視線が集まることで、これは認知症になっても変わらないようだ。ここで私は、64歳になる女性のMさんから2日間にわたって話を聞いた。徘徊も酷く、1分ほどしか記憶を維持できない重度認知症の人である。Mさんは私を男性と思ってくれたのか、「ねえ、私を外に連れてって」。ちょっとドキッとするようなことを言う。それをきっかけに、私たちは何度も話すことになった。同じことを繰り返すのだから、情報としては片手で掬えるほどだったが、私にとっては驚きの連続だった。

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