【丸分かり・激震中国】(13) 「1月の売り上げは減少、2016年は厳しい年に」――『イトーヨーカ堂』中国総代表・三枝富博氏インタビュー

約20年間、北京や成都で小売りの業況を肌で感じてきた『イトーヨーカ堂』現地法人のトップに、中国経済の現状等を聞いた。 (聞き手/本誌 松本惇・中川美帆)

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――1996年に中国に進出したが、当初はどのような苦労があったのか?
「イトーヨーカ堂として中国進出は初めてだったので、文化・生活習慣・考え方の違いから、どのような基準で事業を進めていいのかわからなかった。進出後、半年から1年くらい経った時、先に中国に進出していたフランス企業の経営者から、『貴方たちは先進国から来ているから、法律・理性・感情の順番で物事を見るだろうが、中国は感情・理性・法律の順番だよ』と言われたのをよく覚えている。イトーヨーカ堂と取引をしてほしいと思って中国やヨーロッパのメーカー等約150社をホテルに呼んだことがあったが、来たのは20社くらい。殆ど日系企業だった。日本だったら、電話1本すればメーカーだろうが問屋だろうが、直ぐに集まってくる。それだけイトーヨーカ堂の影響力は大きかったが、全く違うということを思い知った」

――どのくらい経ってから手応えを感じたのか?
「2~3年経って、顔を出す頻度だったり、お互いに話し合ったり、そういうものが深まるに連れてだんだん関係ができてきた。そのウェートが高い国だと思った。取引先もお客さんも、社員もそうだと思う」

――北京では2014年以降、4店舗を閉店して5店舗になった。一方で、成都は6店舗あり、好調だ。その要因をどう考えるか?
「成都は都市のど真ん中、銀座の裏通りみたいなところに出店したので、競争相手がデパートや都市部の専門店だった。一方、北京は郊外の新興住宅地に出店したので、価格中心の商売をやってきた。2008年の北京オリンピックまでは中国経済全体が成長していたので、どんなビジネスでも伸びた。オリンピックが終わってから、北京の住宅の価値が5倍・10倍になり、農民工として働きに来た人は家が買えずに、かなり地方に戻った。結果として、 元々北京に住んでいた人だけが残り、北京のイトーヨーカ堂が『安いものばかりでいいものがない』と見られてしまった。北京ではその後も、価格中心の商売を続けてしまった。2008年の売上高は成都と北京で5対5だったが、今は成都7で北京3くらい」

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【ソニー・熱狂なき復活】(13) 官製再編は産業を救うか?

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官民ファンドの『産業革新機構(INCJ)』は今や、電機業界の打ち出の小槌と化している。これまでに、『ルネサスエレクトロニクス』に約1400億円、『ジャパンディスプレイ(JDI)』に約2000億円を出資。足元でも、『シャープ』への出資案や『東芝』の救済プランが浮上している。だが、INCJは本当に電機産業を救えるのだろうか。官民ファンドが設立されたのは、INCJが初めてではない。原型となるのは、2003年4月に発足した『産業再生機構』だ。銀行の不良債権処理を主たる目的として、深刻な経営不振に陥っている企業の再生を支援した。活動を終了するまでの4年間で、『カネボウ』や『ダイエー』等約40社を支援。企業に対する債権を非メインの金融機関から時価で買い取り、メインバンクと共に再生に当たった。取得した企業の株式は全てスポンサー企業や投資ファンドに売却し、約500億円の売却益を国に納めて2007年6月に清算された。活動期間は僅か4年だったが、国主導の企業再生の成功例とされており、INCJの成否を判断する上でも最大の比較対象となっている。再生機構の設立・運営に関わった元経済産業省官僚の古賀茂明氏は、「再生機構と革新機構の最大の違いは、活動期間の長さ。これが組織の性質を根本的に変えている」と指摘する。再生機構は当初から、活動期間を最長5年に限定して発足した。1つの案件に関わる期間も3年が目途だ。組織の寿命を短期間に限定したのは、成果と責任を明確にすることが目的だ。そして、この責任の明確化が一級の実務家を集め、最高の働きをしてもらうことに寄与した。再生機構では、『野村証券』出身の斉藤淳氏が社長、『ボストンコンサルティンググループ』日本法人社長だった冨山和彦氏がCOO、私的整理の権威である弁護士の高木新二郎氏が産業再生委員会の委員長を務めた他、個別の案件を判断するマネージングディレクターが多数いた。これらの実務家の中には年収1億円という人もいたが、再生機構は公費を主たる財源とする以上、払える報酬には大きな制限があり、大幅な年収ダウンとなる人も多かった。それでも、注目度が高く、社会的意義も大きい再生機構で成功すればキャリアアップできるというのは、彼らスター人材の大きなインセンティブだった。

一方でINCJの活動期間は15年と定められている。これでは、「15年に亘って国が身分を保証してくれる」と期待する人材を引き寄せてしまう。一級の人材にとっては精々腰掛け的な職場であり、投資案件をエグジット(売却)まで見ることなく転職する。INCJ発足当時に社長兼CEOを務めた能見公一氏と専務兼COOを務めた朝倉陽保氏は、昨年6月に揃って退任している。2人の退任は政府の意向と折り合わなかったことが背景と見られ、流石にキャリアアップの為ではなかったが、これを機に複数のマネージングディレクターが退職している。ルネサスのような投資済み案件のエグジットが仮に失敗に終わっても、責任を負うべき人は転職済みだったり、抑々誰が責任を負うべきなのかすら明確でなかったり…という事態になることは確実だ。NCJが発足した2009年頃は、金融危機を背景に官製ファンドが多数生まれている。だが抑々、官が関わるほうが企業再生は上手くいくというのは、全く根拠が無い。「情報の収集や分析については官僚のほうが長けている。故に、正しい戦略を構築できる」と考える官僚は想像以上に多いが、官僚のほうが経営者よりビジネスの現実を理解しているとは考え難い。官が民より長けているのは“巨額のカネを動かせる”という点に尽きるが、それすらも実務家の嗅覚に頼って正しく行わなければ意味がない。古賀氏は、「官製ファンドの背景にあるのは、官僚の間に増殖する介入主義だ」と指摘する。介入主義は小泉政権末期、「郵政のような改革がこれ以上進めば、省庁としての存在意義が無くなる」と危機感を抱いた経済産業官僚の間で台頭した。介入主義は“日の丸再編”的な発想と相性がよいこともあり、安倍政権下で一層肥大しているようだ。


キャプチャ  2016年1月30日号掲載




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中国人がやりたい放題、高校生が酔って大暴れ…顧客満足度最低! 東京ディズニーリゾートの腐り切った実態

『東京ディズニーリゾート』がまたもや入場料の値上げに踏み切った。大人(18歳以上)の1日券は7400円と、最早貧乏人は行けないレベル。更にサービスも悪化し、顧客満足度はガタ落ちしているという。覇権従業員の死亡事故や暴力団幹部との黒い繋がり等、次々とボロが出てくる“夢の国”。そのヤバい実態とは――。 (取材・文/フリージャーナリスト 小石川シンイチ)

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東京ディズニーリゾート(以下、TDR)を運営する『オリエンタルランド』は今年2月8日、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの入園料金を4月1日から値上げすると発表した。今回の値上げは、“パスポート”と呼ぶ入園券15種の内、13種が対象。1日券は、大人(18歳以上)を現行より500円高い7400円とし、中人(12~17歳)は400円高い6400円、小人(4~11歳)は300円高い4800円にする。更に、団体向けや1年間有効の年間パスポートも値上げ。大人の1日券は2年連続の値上げで、2014年の消費増税前から僅か2年で1200円値上がりすることになる。オリエンタルランドは「更なる成長の為の投資目的だ」と言うが、上海で今年6月16日に開園する『上海ディズニーランド』の週末・休日・夏の繁忙期(ピークデーチケット)の大人の入場券料金は499元(約9000円)と発表されており、「今後もその水準に合わせるように値上げが進むのではないか」という見方も多い。非正規雇用のキャスト(従業員)で構成される『オリエンタルランドユニオン』も、こう問題視する。「上海は、東京よりも最新でオリジナルのアトラクションを入れていますし、パークの大きさもランドよりも大きい。また、価格設定も繁忙期以外の平日(平日チケット)は370元(約6742円)にする等、柔軟な対応をしています。また、規模が小さい香港は入場料金6000円で、並んで待つことは殆ど無いので、満足度は高いそうです。オリエンタルランドは混雑解消の対策をせず、値上げ分も従業員に回されることはなく、設備投資に回されるだけのようで、益々顧客満足度が下がるのではないでしょうか」。オリエンタルランドの足元では、顧客満足度が大きく下がっている。『サービス産業生産性協議会』が実施している『日本版顧客満足度指数(JCSI)』という日本の小売サービス業32業種・上位企業約400社を対象にした日本最大規模の消費者調査では、2009年以来、『劇団四季』とトップを争ってきたTDRが、トップ10のリストから外れてしまったのだ(暫定値)。

この背景には“度重なる入園料の値上げ”と“顧客サービスに対する感動と失望の変化”があると、同調査の改善・運営委員会の座長として関わる法政大学経営大学院の小川孔輔教授がYOMIURI ONLINEで指摘している。小川教授は『マクドナルド 失敗の本質 賞味期限切れのビジネスモデル』(東洋経済新報社)という著書の中で、ファストフード大手『マクドナルド』の戦略ミスと、その後のファミリー層の客離れによる苦戦について指摘し、話題になっている。「TDRも、苦戦の続くマクドナルドと同じ道を辿りかねない」と警鐘を鳴らすのだ。TDRは、2013年の30周年記念で、頑張って3129万人にまで顧客(ゲスト)を増やした。客単価(1万1076円)も増えて、売り上げが伸びた(4736億円)。この売り上げを維持する為、手っ取り早く稼働率(=回転率)を上げようとする。「この皺寄せがゲストの詰め込み過ぎとなって顧客満足度(CS)を下げ、コストカットとなってキャストに及んでいるのではないか」と、小川教授は指摘する。「正直、パスポートの値上がりはきつい。家族が多く、1回行くのに10万円は絶対使うので、1年に何度も行けない。何日か前に予約したら割引になるとかあれば嬉しい」「施設に入場すると、何度行ってもワクワクします。ですが、全体的にコストパフォーマンスは良くないと思います。並ぶ時間が短ければまた行きたいのですが、夏は体力的にきついです」「幼児メニューがもう少し欲しい。仕方ないことだと思うが、レストランの料理の美味しさのレベルに価格が合っていない。高い」「以前のほうが雰囲気が良かった気がします。ディズニーシーのキャストの対応が悪く、悲しかったです」――。これらは、『販売促進研究所』(静岡市)が2014年に実施した東京ディズニーリゾート体験の結果だ。本当は、キャパシティーに合わせて制限をすべき混雑が軽視される。数少ない従業員も、その混雑ぶりに対応できず、顧客は不満を持つ。それどころか、環境の悪化で、ファミリー層を中心に顧客離れが進むようになるのだ。更に深刻なのが、地方のファン離れだ。最近の地域別来園者比率を見ると、明らかに勢いのある『ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)』がある近畿(2013年の7.6%が2014年には7.0%)、『ハウステンボス』のある九州(“その他国内”が8.3%から7.3%に)からの来園者が減っているのだ。その一方で急増しているのが、海外からの来園者だ。2013年の3.9%から2014年には5.0%へと急増している。国内の客離れを補っているのは海外からの来園客であり、中でも円安による中国人観光客の“爆買い”の恩恵はTDRも受けているのが現実だ。しかし、肝心の中国経済の失速、原油安からの先行き不透明感から円高に動きつつあり、今後、“爆買い”にはそんなに期待できない。経済ジャーナリストが言う。「海外客は団体ツアーで来ますから、入園料の値上げはそう大きく影響しません。現状は、TDRの中でハメを外し、大騒ぎをする。これは、ディズニーマジックに酔い痴れたい日本人のファミリー層やカップルにとっては迷惑な話で、リピートをしようとは思わなくなっていく」。

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【ソニー・熱狂なき復活】(12) 官製再編の虚と実…『ルネサスエレクトロニクス』トップ電撃辞任の真相

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2015年最後の金曜日となった12月25日。この日が仕事納めという企業も多く、人々が浮き足立つ夕暮れ、首都圏私鉄沿線のある住宅地に記者が詰めかけていた。車載用半導体の世界最大手である『ルネサスエレクトロニクス』の遠藤隆雄会長兼CEOが同日、突如として辞任したのだ。遠藤氏が会長に就任したのは同年6月。就任から僅か半年での電撃辞任だ。代表権の無い取締役に退き、今年6月の定時株主総会で取締役からも退任する方針で、後任のCEOは鶴丸哲哉社長が兼務するという。全ては文書1枚で開示され、通常開かれる辞任会見も無かった。夜9時頃、餞別と思しき花束と包みを手に帰宅した遠藤氏は、集まった記者に「一身上の都合で、自分の意思で以て辞めた。それ以上は何も言えない」と硬い表情で繰り返した。「何も語らないままでは、無責任に経営を投げ出したか、不祥事でも起こしたかと思わざるを得ない」。そう記者に言われると、遠藤氏は一瞬、胸を突かれたような複雑な表情を見せたが、辞任の経緯を語ることは結局なかった。ルネサスは、『NEC』の半導体子会社『NECエレクトロニクス』と、『三菱電機』及び『日立製作所』の半導体部門を統合した『ルネサステクノロジ』の2社が合併し、2010年4月に発足した。3社の生産・営業拠点を足し上げると、設備も人員も過剰。大胆な構造改革が必要とされていた。初代社長は日立出身の赤尾泰氏が務めたが、事業の事情には精通しているものの、柵を断ち切ることができず、改革は遅々として進まなかった。そこへ襲いかかった歴史的な円高、そして東日本大震災。発足から3年間で計上した最終赤字の額は合計3451億円、2012年度末時点の自己資本比率は10%にまで低下し、財務改善が急務だった。これを救済したのが『産業革新機構』だ。産業競争力強化法に基づき、2009年7月に営業開始した官民ファンド。成長性が高く、革新性を有し、将来が有望な企業に出資することで、「次世代の国富を担う産業を創出する」(革新機構資料)ことが存在理由だ。ルネサスに対しては、「産業全体の構造改革を推進し、日本の半導体産業の国際的な競争力の回復および強化を目的」(同)として救済を決め、2013年9月に1383億円を出資している(出資比率69%)。

革新機構はルネサスの経営トップに、『オムロン』前会長の作田久男氏を招聘した。作田氏は、創業家一族外から初めてオムロンの社長に就任し、リーマンショック直後の世界需要が急減する中で、コスト構造に大胆にメスを入れ、利益のV字回復を果たした功績を持つ。この豪腕に、ルネサスの改革は託された。作田氏が最も問題視したのは、固定費の高さに起因するルネサスの市況変動への適応力の低さだ。人員削減を推し進め、従業員数は発足当初の4万6630人から2万1083人(昨年3月時点)へと半減。加えて、不採算事業からも速やかに撤退した。この結果、僅か2年足らずで収益構造は大幅に改善し、昨年3月期には会社発足以来初の最終黒字を達成した。世界4位の売上高を誇った嘗ての規模は失われたが、「即死を恐れることは取り敢えず無くなった」(作田氏)。昨年6月に退任した作田氏は、記者から「今後もルネサスのような不振企業の再建を依頼されれば引き受けるか?」と問われたのに対し、「もう堪忍して下さい」と笑って答えたが、それほどまでに“プロ経営者”と呼ぶに相応しい働きを見せたと言っていいだろう。遠藤氏も、革新機構がヘッドハンティングファームを使って選び出したプロ経営者だ。『日本IBM』の常務や『日本オラクル』のCEO等を務め、ソフトウェア企業の経営に功績を残したという触れ込みだった。特にIBM時代には、“名経営者”ルイス・ガースナー氏の下でグローバル戦略の立案に関わったといい、「ガースナーの薫陶を直に受けた」と折に触れ誇っていた。遠藤氏に期待されたのは、外資巨大企業での経験を生かし、ルネサスをグローバルで勝ち残れる企業にすること。作田氏と共に構造改革を率いてきた革新機構の柴田英利常務を女房役に、成長へのアクセルを踏むのがミッションだった。その成長請負人が僅か半年で辞任するというのだから、只事ではない。しかも、その辞意は僅か4日間で固められた。辞任した週の月曜、遠藤氏は複数のメディアのインタビューに対し、次のように答えている。「(インフィニオンテクノロジーズとの)資本提携は選択肢の1つ。製品が補完関係にあり、両社が組めば強力な連合になる」。革新機構の保有するルネサス株は、ロックアップ(株式の売却禁止期間)が昨年9月末で解除されており、どこがルネサス株の引き受け先となるかに注目が集まっていた。インタビューでの遠藤氏の発言は、11月頃から浮上していた「インフィニオンがルネサスへの出資を検討している」という見方を認めたもの。この時点で、遠藤氏は微塵も辞意を抱いていなかった。

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新規事業に賭けるエプソン、“手の内”技術をフル活用――金儲けより価値の提供、全ては1本の電話から始まった

コピーやプリンター機能を備えた複合機事業が転機を迎えている。市場が成熟し、これまでのような成長が見込めなくなった。その中で、『セイコーエプソン』は新規事業を中心にして、増益傾向を続けている。カギになるのは既存技術の活用だ。 (松浦龍夫)

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セイコーエプソンは今年中に、社運を賭けた新製品を投入する。その名も『PaperLab(ペーパーラボ)』。使用済みのオフィス用紙を投入すると、約3分で新しい紙に再生させる世界初の機器だ。碓井稔社長は、「紙の使い方の概念を変えていく」と意気込む。ペーパーラボを初めて一般に披露したのは、昨年12月に東京ビッグサイトで行われた展示会『エコプロダクツ2015』。参考出展されていたペーパーラボを見ようと、エプソンのブースには隣の展示スペースにまで溢れるほどの黒山の人だかりができた。その後も大きな反響が続いている。発売時期や価格等の問い合わせが相次ぎ、「ウェブサイトのアクセス数が数十倍になった」(ペーパーラボ事業推進プロジェクトの市川和弘部長)。ニュースリリースを出したのは日本だけだが、環境意識の高いヨーロッパや、紙を作るのに必要な水が貴重な中東諸国等からも問い合わせがあるという。エプソンの主力製品は、コピー、プリンター、スキャナー、ファクシミリ機能を備えた複合機。『キヤノン』や『リコー』等、日本企業が圧倒的な存在感を示してきた分野だ。インク、トナー、プリンター用紙等を売る“消耗品ビジネス”によって、各社は安定的な収益を確保してきた。しかし、市場が頭打ち傾向になり、複合機等のビジネスに転機が訪れている。タブレットの普及等でペーパーレス化が顕著になってきた為だ。その為、複合機メーカー各社は新たな収益の柱を作るべく、新規事業の開発に注力している。その中でも目立つのが、従来にない新製品を打ち出しているエプソンだ。

ペーパーラボの開発が始まったのは2010年。研究開発部門に所属していた市川部長への1本の電話が発端となった。電話の相手は、当時、技術開発本部長だった福島米春常務取締役。「碓井社長から『オフィス内で紙をリサイクルできる機器を開発できないか』と打診されたんだ」。福島常務は、市川部長にそう伝えた。オフィスで紙をリサイクルする――。実現すれば環境に優しいだけでなく、自社製品であるプリンターや複合機を気兼ねなく使ってもらえる為、他の製品とのシナジー効果が見込める。コンセプトは理解できたが、提案は無謀にも思えるものだった。打診された市川部長も、「正直、どう実現するかは思いつかなかった」と振り返る。とは言え、社長の指示を無視する訳にはいかない。市川部長は先ず、紙のリサイクル機器にニーズがあるかどうかを把握することから始めた。エプソンの職場や長野県の地元企業を見学し、オフィス内の紙の流れを分析した。そうすると、金融機関や自治体等では情報漏洩を防ぐ為に、紙の廃棄に多額のコストをかけていることがわかった。リサイクル機器を開発するには、紙がどのような仕組みでできているかを知る必要がある。その為、市川部長は紙漉き職人の元を訪ねる等して、紙についての研究を重ねた。「ニーズはある。世の中に新しい価値を齎すこともできる」。調査を続ける中で、市川部長は手応えを感じていた。しかしながら、大きな課題があった。一般的な方法で紙を再生するには、大量の水が必要になるという事実だ。オフィスで大量の水を確保するのは至難の業。抑々、複合機等の電子機器は水分との相性が悪い。水を使わずに紙を再生する方法を考える必要があった。

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テーマ : 経済・社会
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【儲かる農業】(12) ビジネスマンでも心配無用! お手軽ファーマーズライフ

今の仕事を擲って農家へ転身する決心がつかない…。そんな人でも大丈夫。先ずは疑似体験や週末農業から始めてみてはどうだろう。農業を知るところから道は開けるかもしれない。

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ヨーロッパ屈指のハブ空港であるフランクフルト空港から乗車した列車が中央駅へ着く直前、夥しい数の小屋付き農園が車窓に飛び込んでくる。現地で聞けば、“クラインガルテン”(“小さな庭”という意味)というらしい。野菜や果樹を育てながら併設で出身地に戻り、相続した実家のの小屋に滞在するという滞在型の自然農園のこと。セカンドハウス感で使ったり、都市部に住む市民が郊外に農地を借りたりと、利用者は50万人を超えるという。ドイツでは、国民の日常生活の中に農業が息付いている。こうしたライフスタイルが、日本でも定着する日が来るかもしれない。最近、会社生活のゴールが見え始めた中高年層の間で、Uターンで出身地に戻り、相続した実家の土地を使って農作業に勤しむ“隠居男性”が増えている。統計的に見れば、新規就農者がぶつかる最大の壁は“農地の取得”だと言われて久しい。確かに、旧態依然とした慣習が残る水田等の取得は難しいかもしれないが、野菜や果樹等の農地確保はそこまで難しくない。上記のように、相続する場合が増えている上、寧ろ耕作放棄地の拡大が地方自治体を悩ませていたりする。その為、自治体や農協系団体では農地を取得し易くする制度を充実させつつある。また、農業が盛んな自治体では、人口減少を抑えようと新規就農者向けの助成金メニューが大盤振る舞いになっている。思い切って地方へ移住・帰省して、農業生活を送り易い環境が整ってきている。尤も、都市部から離れたくない人や、会社を辞めてまで農家へ転身する決心がつかない人もいるだろう。そんな人は、先ずは農業の実態を知ることから始めるのも一計だ。本気で農業を始めたいのならば、“農業版MBA”との呼び声高い農業専門コースがある。週末の土日に開講される為、平日勤務のビジネスマンでも通うことができる。もっとお手軽に農業を楽しみたいならば、アグリメディアの“シェア畑”や“1口オーナー制度”にトライしてみるのも手だ。ドイツのクラインガルテンは200年の歴史を持つ。日本人の生活に農業が“馴染む”には時間がかかるだろうが、それでも農業ブームは長く続くだろう。


キャプチャ  2016年2月6日号掲載




テーマ : 農政
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【丸分かり・激震中国】(12) 日本の食品&外食の善戦・苦戦…八角を入れてカレーを普及させたハウス食品

上海の地下鉄2号線の静安寺駅で降りると、地下で繋がっている久光百貨店に着く。2004年6月に開店したこのデパートは、『香港そごう』と中国企業の合弁会社が運営するが、地下の店内は、日本のデパートの地下食品売り場と見間違うような雰囲気だ。たこ焼きや日本式の食パンも売っている。日本からの輸入品も多く、日本人に馴染みの深い商品名が並ぶ。食品売り場の傍には、日本の商品の店や色々な飲食店が軒を連ねる。無論、客の多くは地元の中国人。中国の富裕層や中間所得層(ボリュームゾーン)の膨張と、日本の食文化が受け入れられていることを体感できる。2014年の中国の食品産業の売上高は2.02兆元(約36兆円)と、2010年の2倍に達した。外食産業の売上高は、2001年の4369億元から、2014年には2.78兆元(約50兆円)へと急成長。日本の外食産業の約2.3倍に上る。外食産業拡大の要因としては、食の外部化・多様化・高級化といった食文化の変化の他、外資系を含めた飲食チェーン店の増加や、大型連休による余暇時間の拡大等がある。

20160509 05
日本の食品産業は、日本の国内需要が減少する中で、中国を始め、アジア諸国への進出を加速させている。中国市場は競争が激しいものの、黒字の日系の食品メーカーが増えてきた。これらの企業は、輸出主体ではない。苦節10年間、現地で売れるまで我慢した後に、売り上げと利益が増加した企業が多い。その1社である『ヤクルト』本社は、“大人が子や孫に飲ませたい、手頃な価格の栄養ドリンク”としてのブランドが浸透。現地のヤクルトレディーも販売に活躍している。工場見学を広く受け付けているのも魅力だ。『江崎グリコ』も利益を拡大している。中国で一大ブランドになったポッキーが安くて美味しくて持ち易いと好評。グリコは年間契約でスーパーの売り場を購入しており、消費者のニーズに合わせて“ご当地ポッキー”“お土産ポッキー”等、頻繁に新製品を提供している。お菓子の販売では『明治』も奮闘している。『キユーピー』は当初、展開する商品をマヨネーズに特化したものの、欧米メーカーの類似品と競合して苦戦。その後、ドレッシング開発とファストフードの業務用製品の投入で高いシェアを獲得し、換回している。『日清食品』も、中国進出当初はカップ焼きそばのUFOと袋ラーメンを展開したが、台湾系大手メーカーの『康師傅グループ』と比べ価格が高過ぎて、売り上げが伸びなかった。その後、日本仕立ての細型カップスードルにシフトして、巻き返している。売れ筋はシーフード塩味。お洒落に食べたい中国女性のニーズにマッチしている。特記すべきは、カレー味を知らない中国で成功した『ハウス食品グループ』本社だ。2005年に中国でカレールーの販売を開始。赤字が続いたものの、「カレーを人民食に」という理念の下、“家庭”“子供”“健康”をキーワードに根気強く展開し、2012年に黒字化を果たした。主力製品であるバーモントカレー(中国語で“百夢多”)に、中国人の味覚に合う八角等の香辛料を加え、徹底的に現地化した商品戦略も功を奏した。更に、試食販売員の養成、スーパーやイベント会場での活動、カレー料理教室の開催、企業・工場の食堂や学校給食での提供等で只管食べさせ、認知度を高めるプロモーション戦略を展開。中国の1万5000店舗のスーパーや小売店にカレールーを広めた。

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テーマ : 中国経済
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潰れそうなあの店が潰れない秘密――閑古鳥が鳴く優良店の謎、“ここだけの技術”の旨み

閑古鳥が鳴く店内、時代遅れの外観。だが、潰れそうで潰れない──。街でそんな店を見かけ、不思議に思った経験は誰しもある筈だ。人口が減り、大資本による流通の寡占化が進む中、目新しい商売をしている訳ではない彼らが、何故生き残っているのか。そこには、成熟極まる市場で事業を永続させる為の新しい経営モデルが隠されていた。 (西雄大・宇賀神宰司)

20160506 01
今年度から10年計画での大規模再開発が決まり、一段と賑わいを見せるJR川崎駅前。ここに、一際異彩を放つ店がある。『辻野帽子店』(右写真)だ。創業は1930年代で、川崎駅前大通り商店街で帽子一筋の専門店としてやってきた。駅前で人通りが多いにも拘らず、入店する客は殆どいない。取材当日の午後、店を訪れたのは1人だけだった。賑やかな商店街だが、よく見ると混み合っているのはチェーン店が中心。「商店街の仲間の多くは店を畳んで、大企業に土地と建物を貸している。そりゃそうですよ。普通ならそっちのほうが儲かるもん」。辻野洋二郎取締役は、そう笑う。だが、それは決して自虐的な笑いではない。外観だけ見ると昭和からタイムスリップしたようなこの店、相当の優良店なのだ。昨年の売上高は約3000万円。「成長著しいとは言わない。でも、潰れることは先ず無い筈です」(辻野取締役)。閑古鳥が鳴く店内、時代遅れの外観。だが、潰れそうで潰れない──。街で辻野帽子店のような店を見かけ、不思議に思った経験は誰しもある筈。人口が減り、大手流通による寡占化が進む中、目新しい商売でもないのに何故生き残っていられるのか。その背景に、成熟市場で事業を永続させるヒントがあるかもしれないと考えた本誌取材班は、“シャッター商店街の個人店”から“離島の共同店”まで全国を取材した。そこから見えた“潰れそうで潰れない店”の秘密は、“ビジネスモデルが独特”で“地域と助け合っている”、この2つに集約できる。「何れも、顧客や地域との信頼関係をベースに、顧客の絶対数が少なくても商売が回る仕組みを構築している店が多い」と、商店街や個人商店事情に詳しい『船井総合研究所』経営改革コンサルティング事業部シニアアソシエイトの丹羽英之氏が言う。

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先ず、“ビジネスモデルが独特”から見ていこう。丹羽氏を始めとする専門家の意見を総合すると、客がいないのに破綻しない店のビジネスモデルは、大別して3つある。1つは、不動産収入等があるケース。2つ目は、外部から見えないだけで実は客はいるというケースで、店に客はいないが病院や動物園等が近隣にあり、そこと事実上の提携関係にある青果店等が当てはまる。以上の2つは、不動産にせよ地縁にせよ、“先代からの遺産”によるところが多く、一般企業の経営に参考にならないので深く踏み込まない。今回解剖するのは、3つ目の、極めて限られた顧客に高利益率の商品・サービスを提供している店だ。こう書くとありがちなパターンに思えるかもしれないが、ここに該当する“潰れそうで潰れない店”の商売は、そんじょそこらの高付加価値ビジネスではない。“顧客の限られ方”や利益率の高さは尋常でなく、客は年間数十人なのに利益率9割以上といった店もザラ。逆に言えば、それだけ高利益だからこそ少ない客で成立する訳だが、では何故そこまで利幅が取れるのか。その理由は2つある。1つは、競合相手が極端に少ないことだ。冒頭に登場した辻野帽子店はその典型的事例で、東京帽子協会によると、「同レベルのサービス・品揃えを提供できる店は、関東で3店しかない」。だとすれば、約1万㎢・人口1300万人に1軒」(=関東1都6県の人口4260万人、面積3万2420㎢に3軒)の超希少店となる。自ずと一般に流通していない商品も多く、それらを求め、帽子愛好家が全国から訪れる。その数、約500人。春夏2回訪れるとして年1000人。1日の来店者は約3人となる。確かに数は少ない。が、この3人は、好きな帽子を手に入れる為なら金に糸目をつけず、ほぼ確実に平均単価約3万円の帽子を来店する度に買っていく。この“単価3万円”“年間来客数延べ1000人”といったシミュレーションは、同店の年商や取材当日の来店客数とも整合が取れる。勿論、ただ珍しい帽子が欲しいだけなら、今の時代、通販で購入することも可能。この店に「遠くは北海道からも熱烈なマニアが訪れる」(辻野取締役=左写真)のは、品揃えも然ることながら、ここでしか受けられないサービスがあるからだ。フィッティング(帽子のサイズ調整・被り方指導)である。現在、帽子の多くはフリーサイズで売られている。だが辻野取締役は、「人間の頭の形は千差万別で、顔の左右非対称ぶりも様々。本来なら1㎝単位でサイズを合わせ、被り方を決める必要がある。フィッティング無しには、どんな人でも本当の意味で帽子は似合わない」と強調する。本気でフィッティングサービスを提供するには、見立てる技術に加え、大量の在庫が必要になる。だから、効率重視の大手流通業者はフィッティングなどしないし、フリーサイズの帽子しか扱わない。だが辻野取締役は、「それでは日本から真っ当な帽子文化が消えかねない」とばかりに、2階の倉庫に膨大な在庫を確保。500人の帽子愛好家も、そんな同店の姿勢を断固支持している。これが、辻野帽子店が潰れそうで潰れない最大の理由だ。

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テーマ : 経済・社会
ジャンル : ニュース

【儲かる農業】(11) 倍率200倍の人気企業に? 伝統的ブラック産業の変貌

機械化が進んだ今でも、農業には“3K”(きつい・汚い・危険)のイメージが付いて回る。だが、“普通の産業並み”の労働環境を旗印に、優秀な人材を集める農業生産法人も出てきた。

20160502 17
「働き方革命、我々は日本農業を変える集団です」――。昨年11月、早稲田大学で開かれた講演会で、『イオン』子会社の『イオンアグリ創造』の福永庸明社長が、就農希望の学生らを前に農業の働き方を改善することの必要性を力説していた。全国20ヵ所に計300haの農場を持つ同社は、昨年度から新卒採用を始めた。すると、47人の採用枠に対し、1万人もの学生が殺到してしまった。倍率200倍の超難関企業である。だが、この人気の“集中ぶり”は、農業への関心の高まりだけではなく、農業が抱える問題点をも映し出している。「農業に将来性を感じながらも劣悪な労働環境を回避したい学生が、同社に集中したのではないか」という読みだ。事実、多くの農業生産法人は人材確保に苦労しており、離職率も高いのが現状なのだ。その理由の1つが、農業が労働法の適用対象外であり、農繁期には休み無く働くことが当たり前の特殊な産業だからだ。経営規模を拡大し、高収益を上げる農家は、「春から秋にかけての農繁期は2~3日の休みだけで、馬車馬の如く働かなければ成長できない」のが現実だという。農産物は収穫のタイミングを逃すと、最悪の場合、商品にならなくなる。その為、やるべきことは日が暮れてでもやるのが鉄則だ。“儲かる農業”を実現するためとは言え、他産業でこの働き方を強いた場合は「ブラック産業だ」と言われてしまうだろう。そんな中、企業成長と労働環境の改善という“二兎”を追う農業生産法人が出てきた。

前出の福永社長は、「農作業の機械化だけが農業の産業化じゃない。従業員が幸せに働いていなくては」と話す。その為に重視しているのが、女性が働き易い職場にすることだ。例えば同社は、農場に女性専用のトイレを設置した。当然のことのように思えるかもしれないが、農業では珍しいことなのだ。社員の平均年齢が30代と若いことから、子供の体調不良時に休みを取得し易くする等、子育て世代に優しい人事施策も導入してきた。その効果もあってか、正社員126人中、女性は39人と3割を超える。同社で農場長を経験した大塚和美さんは、「重いキャベツを運ぶのは男性に負けるが、作業の丁寧さ・速さは女性のほうが優れている」と話す。現在は農場長のポストを離れ、安全性や環境等に配慮した農場運営の世界的な認証基準である『GLOBAL GAP(グローバルギャップ)』の実践をチェックする仕事をしている。大塚さんは、「会社の中で分業が進み、体制が整えば、出産等で社員が職場を離れても、別の社員がフォローできるようになる」と話す。勿論、殆ど休まずに働いて1000万円以上の年収を稼ぐのも、人によっては“幸せ”だ。だが、価値観の強制はできない。農業の労働環境が発展途上であることは見逃せない事実だ。農業の成長産業化は、“働き方革命”とセットで進められるべきだ。


キャプチャ  2016年2月6日号掲載




テーマ : 農政
ジャンル : 政治・経済

【丸分かり・激震中国】(11) 相次ぐ日系企業の失敗、合弁相手の発言力が増す

20160502 16
2015年は、日本企業が中国の生産拠点を閉鎖・縮小することが相次いで発表された年だった。『カルビー』は中国企業との合弁を解消し、51%の持ち分全てを合弁相手にたった1元(約18円)で譲渡。『パナソニック』は中国での液晶テレビ生産から撤退し、北京のリチウムイオン電池工場を閉鎖した。また、『エスビー食品』がカレールー等の生産を打ち切り、『サントリーホールディングス』は中国のビール大手『青島ビール』との合弁を解消する等、日系企業の失敗が後を絶たない。中国に進出した日本人の経営者やビジネスマンは、地方政府の役人の歓待を受けて「干杯、干杯(乾杯、乾杯)」と繰り返している内に、「中国と日本は異質の国である」ことをすっかり忘れてしまうことが多い。実際に中国で自動車製造会社等を経営したが、地方政府の役人の態度は中国進出前後で大きく変わった。誘致の段階では「皆さんのご要望には全て応えますよ」と頼もしかったが、進出後に停電が続いたことがあり、電力会社に改善を指導するよう地方政府にお願いに行ったところ、「民間同士のことだから、双方で解決してほしい」と断られた。彼らにとっては、自らの実績として評価される工場誘致に力を入れていただけだったのだ。政府による突然の規則変更や、法律を身勝手に解釈した要求に直面する。採用した中国人の役職者が、日本人駐在員と同額の給与を求めてくる等、驚くことには事欠かなかった。

ある中小の電気部品会社は、北京郊外に中国企業との合弁会社を設立した。総経理(社長)が労働ビザの延長申請をしたところ、「60歳を超えている」との理由で不受理となった。交渉の末、1万元(約18万円)をこっそり地方政府の担当者に渡し、要求通りに「来年は延長の申請をしない」との誓約書を提出して、何とか労働ビザを手にすることができたという。翌年、新しい総経理が赴任することになり、労働ビザ取得の申請書類を提出したが、「大卒でないから総経理には相応しくない」という理由で、労働ビザが発給されなかった。上位の市政府に抗議して解決したが、この手のチャイナハラスメントは日常茶飯事に起こっている。日系企業の撤退が増えている原因として、競争激化による収益の減少やコスト増等が挙げられる。最近では営業政策等、経営の根本方針で合弁相手との意見の対立が抜き差しならない状況になってきている。中国が改革開放政策を取り始めた頃、中国側出資者は日本企業や派遣される日本人に一目置いていた。しかし、世界第2位の経済大国になり、自信をつけたことで、「中国には中国のやり方がある」と企業経営に口出しするようになってきた。出資者の意見対立を抱えた企業は、早晩、市場から消えていく運命にある。日系企業の中国からの撤退傾向は益々強まっていくと予想される。中国の国内総生産(GDP)を始めとする経済指標の正確性が疑問視され、中国市場への不信感は増大しているからだ。更に、市場経済の経験が無いにも拘らず、中国共産党政府が市場に介入して混乱に拍車を掛けることも考えられる。中国売場は“割に合わない市場”となりつつある。 (元スズキ北京事務所首席代表 松原邦久)


キャプチャ  2016年2月2日号掲載

チャイナハラスメント [ 松原邦久 ]
価格:820円(税込、送料無料)





テーマ : 中国経済
ジャンル : 政治・経済

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