【2016年の世界を読み解く】(07) 人類が火星の地に降り立つ日――世界の官と民が連携して取り組む有人での火星探査の現状と、果てしない可能性

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映画『オデッセイ』で、火星に1人取り残された宇宙飛行士のマーク・ワトニー(マット・デイモン)。『アメリカ航空宇宙局(NASA)』は人間の創意工夫を注ぎ込んで、彼の救出に当たる(日本公開は2016年2月5日)。リドリー・スコット監督に依る手に汗握るエンターテインメントは、不可能に挑む人間の底力を照らし出す。同時に、そこでは宇宙探査の未来を垣間見ることができる。NASAは2030年代半ばまでに、「人間を火星に送り込む」という大胆な目標を掲げている。2015年10月に発表した『NASA火星への旅 宇宙探査の新たな段階を開拓する』は、その道筋を説明している。技術的な手順としては、『国際宇宙ステーション(ISS)』の実験や研究に続いて、ISSが活動する低軌道(高度500~2000km程度)より遠くまで人間を運ぶ。これに成功すれば、数日で地球に帰還できる宇宙空間を、深宇宙を想定した“性能試験場”と見做し、様々な実験ができるようになる。『オデッセイ』には1つ、事実と異なる点がある。「火星の有人探査は、NASAが独占する舞台ではなくなる」ということだ。今後は、火星に人間を送る為に、世界中から人や資源が集中し、民間の協力も得ていく。既に、世界中の宇宙機関が協力して、宇宙空間についての知識を深めている。ISSの開発と運用には15ヵ国が参加。太陽系の探査に必要な技術だけでなく、人間が宇宙に長期滞在する際の健康リスクを軽減する為の重要な研究も進んでいる。NASAは国際社会と協力しながら、火星の無人探査も続けている。2012年に火星に着陸した無人火星探査機『キュリオシティ』は、搭載している観測機器の共同開発に5ヵ国が参加。気象観測センサーは、スペインの『宇宙生物学センター』が建造した。これらの観測に依って、火星の環境をより正しく理解し、火星のどのような資源が今後の探査に利用できるかがわかれば、人間が火星に降り立つ際のリスクを減らせるだろう。NASAの新型宇宙船『オリオン』はスペースシャトルの後継機で、月より更に遠くまで宇宙飛行士を運ぶことを目指す。乗組員用のクルーモジュールと、ロケットエンジンや生命維持システム等を搭載するサービスモジュールがあり、後者は『ヨーロッパ宇宙機関(ESA)』が開発を手掛けている。

民間企業も、宇宙開発の一翼を担う。『スペースX』と『オービタルATK』は、無人補給船でISSに貨物を輸送する契約をNASAと結んでいる。『ボーイング』とスペースXが開発している宇宙船は、2018年にもISSに宇宙飛行士を運ぶ計画だ。3Dプリンターを使ってISS内で交換部品等を作成し、長期滞在を支える実験も進んでいる。私たちが火星への有人飛行を目指すのは、ただ技術的に可能だからではない。火星を知ることに依って、地球上の生命について更に多くを知ることができるからだ。科学的な観点では、火星は地球以外で生命体を発見できる可能性が最も高い場所。生命の維持に不可欠な水は、嘗て火星の表面に10億年近くの間存在していた。地球上の生命の進化についてわかっていることを基に考えれば、火星でも生命が誕生していた可能性はある。但し、火星の生命体は(存在するとすれば)、微生物レベルまでしか進化していないかもしれない。その痕跡を見つける為には、宇宙生物学者や地質学者を火星に派遣して調べる必要がありそうだ。2015年秋にNASAは、「火星の地表に今も液状の水が存在する有力な証拠を見つけた」と発表した。地表の環境が過酷になるに連れて生命体は地下へ潜り、今も生き永らえているのだろうか。私たちが火星を目指す理由には、純粋に科学的な動機を超えるものもある。「人間を火星に送り込む」という難題は、新しいテクノロジーと能力の革新を刺激するのだ。「NASAが宇宙開発に1ドル費やすと、アメリカ経済は約4ドル成長する」という試算もある。1962年にジョン・F・ケネディ大統領は、「人類を月面に立たせることや、その先の目標に挑むのは、容易にできるからではなく、困難だからだ。我々の最も優れた熱意と能力を結集させ、その真価を示せる目標だからだ」と語っている。これらの取り組みは、地球上の生命に確かな恩恵を齎してきた。宇宙開発で発達した多くの技術が、地球上で実際に使われている。ISSの浄水システムは、僻地で清潔な水の供給を助けている。オリオンと打ち上げ用の超大型ロケット『スペースローンチシステム』は、バッテリーの急速充電・先進的な製造技術・航空機構造の軽量化等に貢献している。NASAは今後も、宇宙開発を新たな高みへと進め、火星の神秘を解き明かす為に国際的な取り組みを率いていく。その決意の固さは、火星に取り残された宇宙飛行士のワトニーにも負けない。私たちの努力は、サイエンスフィクションをサイエンスノンフィクションに変えるだろう。 (NASAチーフサイエンティスト エレン・ストファン)


キャプチャ  2015年12月29日・2016年1月5日号掲載
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テーマ : 宇宙
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中国で『Uber』が爆発的成長、会社員も副業で稼ぐ――世界で月間1億回以上の乗車、空白を活用して市場や富を生む

個人の遊休資産や時間を他人の為に活用し、利益を得る――“シェアリングエコノミー”と呼ばれる新たな経済活動が、世界規模で猛威を振るっている。その2大巨頭、自家用車の相乗りサービスを手掛ける『Uber(ウーバー)』と、自宅の時間貸しサービスを担う『Airbnb(エアビーアンドビー)』の爆進が止まらない。岩盤規制で両者を阻む日本にも何れ、この潮流は押し寄せる。その最前線をリポートする。 (井上理・中尚子・齊藤美保)

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成都で業務用洗濯機の営業職を務める黄永洋さんは、古びたタクシーを横目に毎月、数十人の客を自家用車で運んでいる。

上海から飛行機で3時間半。人口が1400万人に膨れ上がった西部最大の都市・成都。業務用洗濯機の販売会社で営業のマネジャーを務める黄永洋さん(41)の生活は、今年4月以降に一変した。ドライバーの副業を始めたからだ。世界を席巻する『Uber』のドライバーである。Uberは“タクシー配車アプリ”と称されることも多いが、語弊がある。日本を含む各国で既存のタクシー・ハイヤーの配車も手掛けるが、世界規模で見れば、生み出す膨大な収益の殆どは、黄さんのような一般ドライバーと自家用車に依るものだ。「自家用車に相乗りする」という概念から、“ライドシェア(相乗り)”サービスと呼ばれる。Uberは、その新市場を開拓した世界最大手だ。黄さんが終業後や空き時間にドライバーとなるのは、週50~60時間。本業の月収は6000~7000元(約12万~14万円)だが、その6割に当たる4000元(約8万円)ほどの副収入をUberから得ている。副業にお咎めは無い。「成都の人間は昔からスローライフ。茶を飲んだり、麻雀をしたりして、暇な時間を潰していた。でも、Uberのドライバーを始めてから、だらだらと過ごすことはなくなった。お金も入るし、生活が良くなったと感じている」。客はスマートフォンのアプリで車を呼び、目的地を入力するかドライバーに直接伝える。1組で車を独占することもできるが、同じ方向に向かう他人が途中で乗り込む安いメニューもある。成都では全乗車の約半数が、この複数組の相乗りという。料金は地域に依って異なるが、1組で使うとタクシーに比べ3~4割安、相乗りだと6~8割安が目安。決済は、利用者が予め登録しているクレジットカードから自動的に引き落とされ、現金の授受は発生しない。今月の取材日、黄さんにスマホのドライバーアプリを営業状態にしてもらうと、数分で付近の大学から配車要請が舞い込んだ。呼んだのは、大学3年生の劉宇軒さん(21)。市街地のキャンパスから車で30分ほどの場所にある別のキャンパスへ行き、友達と食事をするという。タクシーで50元ほどかかる距離を、20元ほどの料金で移動した。「Uberは週に1~2回は使うけど、タクシーは高いから殆ど使わない」。今、黄さんのようなドライバーと、劉さんのような客が世界中で日々、爆発的な勢いで増えている。

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テーマ : 中国のニュース
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知らぬと損するフィンテック、もう銀行には頼らない――起業の壁を難なくクリア、融資申請なくても常時審査

農業革命・産業革命・IT(情報技術)革命に次ぐ第4の波。それが『フィンテック』だ。ビッグデータ解析技術・センサー技術・スマートフォン等の技術革新が、ブラックボックス化していた金融サービスを根本から変える。財務管理や決済手段にお金をかけずに済むようになる。欧米勢は果敢に新サービスを展開し、日本でも中小企業がそれを手に飛躍し始めた。フィンテック分野への投資額は、2020年に現在の約4倍、5兆円を超えるとの試算もある。この新潮流に乗らなければ、取り返しのつかない痛手を受けかねない。 (染原睦美・杉原淳一・飯山辰之介)

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吉祥寺の駅前から徒歩7分。週末の買い物客で賑わう商店街を抜け、閑静な住宅街を暫く歩くと、突如として長蛇の列が現れる。列の先にあるのは、時計店『Knot』(左写真)だ。店先の看板には取扱商品のブランドが掲げられているが、『ロレックス』や『オメガ』といった定番のロゴは見当たらない。この店が扱うのは『Knot』という自社ブランドだけ。その商品目当てに、時には数百人が並ぶ。今や、吉祥寺のちょっとした名物だ。Knotの時計の中心価格帯は1万円台で、堅調な高額消費の波に乗る高級ブランド時計とはカテゴリーが異なる。日本の工場や職人を直接口説き、中間業者を排除することで、高品質の国産でありながら手頃な価格で手に入る時計に仕立てた。更に、時計本体と組み合わせるベルトを別売り(3000~6000円程度)にし、その日の気分や服装に合わせて簡単に使い分けられるようにした。これが受け、品質に煩い中高年層だけでなく、携帯電話の普及で腕時計離れが進む若者をも顧客に取り込んでいる。Knotの設立は去年3月。創業者の遠藤弘満社長は元々、『スカーゲン』や『ルミノックス』といった輸入時計を専門に扱う会社を経営していた。商売は順調に広がっていたが、主力商品だったスカーゲンが2012年にブランドを他社に売却。買収した企業の経営方針の変更で、遠藤社長は主力商品だったスカーゲンが売れなくなった。残務処理に追われる毎日を過ごす中で、心に芽生えたのが「自分のブランドを作るしかない」という思いだ。他社の意向で左右されるビジネスに見切りを付け、独自の国産ブランドを立ち上げる。事業構想は纏まった。新会社を設立して、時計の試作品を作るまでにかかった数百万円は手元資金で賄った。しかし、本格的な販売に向けて商品を量産するとなると、資金が足りない。そんな時に遠藤社長が耳にしたのが、「アメリカでは、クラウドファンディングを通じて億円単位の資金調達に成功した企業も出ている」という話だ。

クラウドファンディング──。この耳慣れない調達手法は、会社の商品や事業内容に魅力を感じた個人から小口の出資金を集め、それを元手に事業を興すというものだ。クラウドファンディングは、その形態に依って大きく3種類がある。1つ目は、投資家が出したお金の内、一定の割合が当該企業への無償の資金提供になる“寄付型”。2つ目は、投じた金額が利息付きで返ってくる“投資型”。3つ目は、投資家になると割安に商品を購入できたり、優先的にサービスを受けられたりする“購入型”だ。「購入型なら資金調達は素より、商品に対する消費者の反応を探ることもできる」。こうした理由から、遠藤社長はクラウドファンディングを手掛けるウェブサイト『Makuake(マクアケ)』の門を叩いた。会社設立から間もない去年4月のことだ。渋谷にあるMakuakeの運営会社である『サイバーエージェントクラウドファンディング』のオフィスで、担当者に事業内容を説明。担当者は実現可能性を判断し、ゴーサインを出した。次の段階は目標調達額の設定と、「目標に届かなければ、案件自体が成立しないようにする」か「目標に届かなくとも、集まった資金を受け取るか」の選択。遠藤社長は目標額を100万円とし、目標未達でも案件を成立させるほうを選んだ。クラウドファンディングは、金融とITを組み合わせたフィンテックと呼ばれる新しい金融サービスの一種だ。ウェブサイトやSNS(交流サイト)を通じて、消費者でもある個人に広くビジネスモデルを説明し、そこから資金を募る。ITの発達で、スマートフォン(スマホ)やパソコンを介して直接個人と個人が情報をやり取りできる今だからこそ、成立する金融サービスだ。Makuakeは、ウェブサイト上にKnotの詳細な事業計画や商品内容を動画付きで掲載する。サイト上にはフェイスブックやツイッターの共有ボタンも設け、賛同する個人から資金を募り易いようにしている。遠藤社長の場合は、先ず知人が数万~数十万円程度の資金を拠出。更に、SNSを通じて発信された取り組みに賛同した個人が1人、また1人と出資に名乗りを上げた。「あれ? 桁を間違えたかな?」――Makuakeの門を叩いて3ヵ月後の7月22日。遠藤社長の事業構想には284人が賛同し、目標を遥かに上回る500万円が集まった。この内、2割を手数料としてMakuakeに支払い、400万円が手元に。量産の目途は立った。

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【本当の日韓大問題】(03) 大衆迎合・PV至上主義でメディアが反日・嫌韓を増幅

日韓関係が冷え込んでいる。その元凶の1つに、両国メディアに依る国民感情の“扇動”がある。反日・嫌韓報道が生まれる裏事情を探った。

9月26日の昼時、日比谷公園を見下ろす『ペニンシュラ東京』の宴会場には、日韓両国のメディア関係者が集まっていた。会場では、韓国紙の東京特派員や日本の全国紙の韓国特派員経験者らが、冷え切った日韓関係の改善策について議論を交わしていた。会の主催者は『駐日韓国企業連合会』。両国メディアに依って量産されている反日・嫌韓報道に歯止めをかけ、日韓関係の改善を促す狙いで催された。連合会の会長は、韓国の焼酎メーカー『眞露(ジンロ)』の楊仁集社長。売り上げが日韓関係に大きく左右されるとあって、冷え切った現状を看過できなかったのだろう。「皆様、これからは双方のポジティブな記事を書いていきましょう」。楊社長は、挨拶の場でこう述べたという。確かに近年、反日・嫌韓報道は増殖し続けている。本誌が行ったアンケートでも、両国のビジネスマンの7割以上が「メディアが日韓関係に悪影響を与えている」と回答した。何故、このような報道が急増したのか? その背景には、両国メディアが抱えている2つの問題が横たわっていた。

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1つ目は、自国の世論に追従する大衆迎合主義だ。例えば、韓国メディアは対日報道において反日が“定番化”しているのが現状である。慰安婦や竹島等の歴史・領土問題のみならず、日韓関係以外においても「親日的な報道は難しい」(韓国大手紙幹部)という。国民感情に反して日本に好意的な報道をすれば、「国民から“親日派”のレッテルを貼られ、不買運動が起こりかねない。誰も損をしたくない」(同)為、世論に迎合した反日記事を掲載するのである。特に、2011年の在韓日本大使館前への慰安婦像設置以降、両国政府に依ってそれまで棚上げされていた歴史・領土問題が蒸し返されるケースが増えた。その結果、「韓国国内で安倍政権への批判が強まり、日本叩きの報道が増えた」(韓国大手紙日本特派員経験者)という。反日報道の増加は、負の連鎖となって増幅されていく。複数の韓国大手紙日本特派員経験者に依ると、韓国メディアの間では「慰安婦像の設置以降、反日モノで他社に遅れると、自社だけニュースを落とした“特オチ”と見做される空気が醸成された」という。つまり、反日報道が“スクープ化”したのだ。こうして、反日ネタを探す傾向が強まり、紙面で日本批判の見出しが目立つようになったのである。一方、日系メディアも嫌韓という一部の国民の世論に迎合する形で、嫌韓報道を繰り広げている。これまで、嫌韓報道は日本のマスコミ界でタブー視されてきた。ところが、「李明博前大統領の竹島上陸や天皇謝罪要求を境にして、韓国政府の強硬な外交姿勢に国民が痺れを切らし、嫌韓モノが受けるようになった」(日系大手紙記者)ことで、日本側の嫌韓報道もエスカレートしていった。軈て、こうした嫌韓記事はオンラインでも支持を集めるようになり、日本のメディアにとって止められない“麻薬”となった。「嫌韓モノが金を稼げるコンテンツになり、ビジネス化した」(同)のである。

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ネットニュースでステマ広告が蔓延る理由…ネット広告の単価の安さ、記事として掲載を望むスポンサー企業の意向を指摘する声も

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ブロガーの山本一郎氏が4月末、「インターネット広告会社のサイバーエージェントが“ネイティブ広告(一般記事風の広告)”で、第三者を装いながら口コミ等で特定の商品や話題を好意的な反応を示す“ステルスマーケティング(ステマ)”を、広告のクレジット無しで行っているのではないか」と指摘し、問題が浮上。サイバーエージェントは5月12日にお詫びした。ステマが多い商品は化粧品・健康食品・ゲーム等、幅広い。7月30日には、Yahoo!ニュースが「編集コンテンツと誤認させて広告を届けるステマは景品表示法違反に問われる可能性もある悪質な行為」「広告としての表記の有無にかかわらず記事広告やタイアップ記事を配信することを従来から禁止しており、今後も契約違反が明らかになった場合には契約解除はもちろんのこと、法的措置を含む厳正な対処を行います」との見解を公表すると共に、マイナビニュース等のネットニュース3媒体との契約を“総合的な判断”で解除した。マイナビ広報部は、「チェックが甘かった面がある。現在はタイアップ記事では提供会社名を明示し、広告記事と編集記事の区別を明確にしている」と言っている。Yahoo!ニュースは9月3日にも、中国情報を中心としたサーチナの配信を終了、年内に2社の打ち切りを予定している。また9月4日、ヤフーは女性向け情報サイトを手がける子会社のTRILLで、広告記事を編集記事と見做す誤解を招くような表現があったことをお詫びした。

この問題については、週刊ダイヤモンドが8月22日号で、都内のPR会社大手のベクトルグループが「これまでのことは仕方がないから、今、まさに行おうとしている、電話をかけている、依頼しようとしている(社員の皆さん)、今は危険かもしれません」と、ステマ関与を残さないようにと受け止められる全社員向けのメールを7月30日に送信したことを報道。これについて、ベクトルグループの広報担当者は「ヤフーの見解を見た現場の社員が、『社内で同じようなことがやっているならば拙い』と考え、先走って全社員にメールを送ってしまった」と話している。「広告が記事として読まれたら、ネットニュースの信頼の根幹に関わる」と主張する山本一郎氏は8月29日のブログで、「博報堂の子会社が自動車会社のCMを礼賛するステマを展開している」と新たに指摘した。ネットニュースを配信している側でも、この自動車会社CMを取り上げたAOLオンラインジャパンが8月27日、「以前、ユーザー誤認を誘発するような形式(例:PR表記無し)で掲載したことがありました」とし、騒動が拡大を見せた。博報堂は、「子会社の社員がお得意先のPRになると考え、『可能であれば記事として使ってほしい』と自社の判断でAOL側に出し、掲載された。会社間の支払いのやり取りはなく、掲載されたものは広告ではなく記事だった」と言っている。ネットニュースにおけるステマが広がった理由は、単価がいい為。ネット広告の単価が下がる中、ステマは収入が圧倒的にいいという。月間100億ページビューを超え、影響力のある国内最大のニュースサイト『Yahoo!ニュース』――特に、トップに位置するヤフートピックスに掲載されるとPR効果が大きくなる。

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模倣品、カード詐欺…EC企業の知られざる死闘――無料化で“有象無象”が乱入、対策が売り上げ減になるジレンマ

2014年に12兆8000億円に国内市場規模が拡大した消費者向けEC(電子商取引)。だが、成長に伴い、模倣品販売やカード詐欺等の問題も深刻化している。消費者を如何に守るか。EC関連企業と、成長分野に巣食う闇勢力との攻防をリポートする。 (中尚子・西雄大)

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楽天のパトロールミーティング。膨大な情報から怪しい業者を炙り出す。

【知られざる死闘(1) 模倣品詐欺】
2015年9月中旬、『楽天』本社ビルの一室に約10人の社員が集まり、ある会議が始まった。通称“パトロールミーティング”。通販サイト『楽天市場』の出店企業の中から、模倣品販売等に手を染めている悪徳業者を炙り出すのが目的だ。会議室のスクリーンには、出店企業の基本情報が次々と映し出される。何を売っているのか、本社の所在地はどこか。会議の中盤、『シャネル』の関連商品を販売する店の代表者の名前が映し出されると、チームを統括する塩田明氏(仮名)の動きが止まった。「ちょっと待って。何か見たことある名前だけど、これって前に退店させたところじゃない?」。直ぐに、「模倣品を売っていた」として楽天市場から昨年退店させられた北海道札幌市の業者の情報と照合。すると、代表者の名字は違ったが、名前とIPアドレスが同じだったことが判明した。楽天ではこうして、不正行為をしている可能性が高い業者を発見すると、商品を自ら購入し、ブランド側に真贋鑑定を依頼する。偽物と認定された場合、その店は一発退場になるルールだ。楽天がこの方法で模倣品の排除を始めたのは2011年。現在は、月700件に上る新規出店者を中心に週2回のペースで監視を続けている。楽天の悪徳業者対策は、会議室でのパトロールに留まらない。「怪しい」と感じた業者については、申請してきた住所に直接赴き、建物の外から様子を窺うことも少なくない。悪徳業者には幾つかの共通項があるという。「申請した住所とは異なる届け先の伝票が貼られた段ボールが、周囲に散乱している」「窓に不自然な目張りがされている」「ポストに複数の企業名が書かれている」――。楽天としては、申請書に不備が無い限り出店を認めるのが原則だが、こうした怪しい業者は“ブラックリスト”に登録。オープン直後から重点的にマークし、不正行為を見つけ次第、対応する。

2014年に12兆8000億円に国内市場が拡大してきた消費者向けEC(電子商取引)業界。『Amazon』や楽天等の主力企業も順調な成長を続けているが、それに伴い、模倣品販売やカード詐欺等のトラブルも急増している。政府の模倣品・海賊版対策総合窓口に依ると、模倣品に関する情報提供や相談の件数は、2009年に前年比4倍弱の1016件に上り、以降、毎年1500件近くで高止まり。2014年は、その約8割がEC関連だった。全てのブランドや消費者が被害を報告しているとは考え難く、実際の被害は統計の数字を大きく上回るのは間違いない。「折角、順調に市場が育ってきたのに、早急に対策を講じないと消費者のEC離れが起きかねない」。『ローランドベルガー』で小売業のコンサルタントを担当する田村憲志朗氏は、こう警鐘を鳴らす。楽天以外のEC企業も、対策に乗り出してはいる。2013年に“eコマース革命”と銘打って出店料を無料にした『ヤフー』もその1つ。無料化に依り、2014年に出店数が4倍に増えた結果、「有象無象の輩が出店して、模倣品が一気に増えた」(業界関係者)。その後、24時間での監視体制や、出店されているブランド品のチェックを強化。「他社と同レベルまでは模倣品を減らせている」と、ネットセーフティー企画部の吉田奨部長は説明する。ただ、こうした対策では全ての模倣品を駆逐することはできない。それだけ、模倣品販売組織は複雑で狡猾だからだ。現在、国内におけるEC模倣品詐欺の中核には外国人犯罪集団・個人がいると見られている。模倣品の大半が海外製の為、仕入れルートの確保が容易な外国人が自ずと中心になってきた。そして、実際に詐欺を働く外国人集団・個人の周辺には、様々なサポートを手掛ける別の闇勢力が存在する。例えば、詐欺を働くには模倣品を仕入れるだけでは駄目で、ECへの出店が不可欠。その為には、登記簿謄本・住民票・印鑑証明書等が必要だ。こうした公文書や入金用の銀行口座を不正に調達し、外国人組織に販売すること等が、周辺勢力の主な“シノギ”になる。登記簿等は、ホームレスや帰国前の留学生・技能実習生等にカネを払って個人情報を入手し、新たな法人を登記するのが一般的な手口。ECモール側としては、一度退店させた業者の登記簿であれば再出店を防げる。が、全く新たな登記簿を次から次へと作られては手の打ち様がない。実際、在日外国人が利用する某掲示板には、こうした個人情報の売買を募る書き込みが所狭しと並ぶ。

模倣品詐欺の周辺勢力の中心は所謂、反社会的勢力になるが、「公文書の調達等には、一部の悪徳行政書士等の一般人も相当数関わっている」というのが専門家の見立てだ。海外から模倣品を調達し、仮に反社会勢力から高額で公文書や銀行口座を買い取っても、模倣品ビジネスの利益率は高い。例えば、2014年には『ニューバランス』のスニーカーの模倣品がECを通じて数多く出回ったが、仕入れ額は日本円で1足2000円程度と見られる。日本での販売価格は1万円程度で、粗利益率は8割。現実に2015年2月、兵庫県神戸市でニューバランスの偽物のスニーカー433足を販売目的で所持していたとして、無職の男が逮捕されたが、容疑者は2014年1~10月で約800万円を売り上げたとされる。リアル店舗で販売される偽物の多くは、中国の深圳や広州等で入手されているが、流通ルートが単純な為、製造元まで遡って摘発することが可能だった。一方、ECで流通している模倣品は、海外の製造元から直接買い付ける場合もあれば、中国のECサイト等から調達する場合もある。「販路が複雑過ぎて、製造元をとても辿れない」と、ブランドの模倣品対策を手掛ける『ユニオン・デ・ファブリカン』の堤隆幸氏は話す。事態の悪化を防ぐべく、ECはブランドや税関当局とタッグを組み、海外製の模倣品を水際で差し押さえようという動きも活発化してきた。但し、税関での摘発も万能ではない。リアル店舗での偽物販売では、一度に大量の模倣品を輸入することが多く、摘発し易かった。一方、ECで扱う模倣品はEMS(国際スピード郵便)で小口輸送されてくるケースも多い。EMSを1つずつ全てチェックする余裕は、税関にも無い。EC業界で着実に進む模倣品対策。だが、現在の状況は万全とは言えない。

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【広告戦争・デジタル空間の覇権を巡る人脈と金脈】(07) 寡占化する世界のデジタル広告市場

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アメリカで誕生したボードゲーム『モノポリー』。双六のような升目上の不動産を少しずつ買い占めて、多額のレンタル料を徴収し、最終的に他のプレイヤーを全て破産に追い込むゲームだ。世界のデジタル広告市場をこれに例えれば、モバイル時代の王者『Facebook』、それを追う『Google』という、何れもアメリカの巨大プラットフォーマーが升目を占拠し、勝敗を決めつつある風景が浮かび上がる。今年6月24日、Facebookの株価が2日連続で史上最高値を更新した。株価は前週末の約82ドルから約88ドルへと上昇。時価総額は2500億ドル弱(約30兆円)へと跳ね上がり、『ウォルマート』や『トヨタ自動車』を超えてしまった。ここにきて金融市場を大きく沸かせているのが、仮想空間の中で様々な体験ができる“仮想現実”(VR=バーチャルリアリティー)におけるコンテンツや広告事業の将来性だ。Facebookは2014年、VR技術を応用したゴーグルを手掛けるベンチャー企業『オキュラスVR』を20億ドルで買収。その他、メッセージングアプリを提供する『ワッツアップ』、お洒落な写真をシェアする『インスタグラム』、動画圧縮技術に長けた『クイックファイアー』等を買い捲り、友人同士のコミュニケーションの“交差点”に立とうとしている。テキスト・写真・動画……そして次は、友達の体験を3次元で疑似体験できるVRという訳だ。無論、VRは写真や動画とは違い、もう少し中長期的な話。写真も動画も、既にスマートフォンで手軽に共有することが可能だが、VRを誰でも手軽に作り出すデバイスが現時点で存在している訳ではない。ゲームや映画以外での実用化への道程は遠い。とはいえ、VR端末に注目しているのはFacebookだけではない。Google・Apple・Microsoft・サムスン電子・ソニーといった巨大企業が、未開拓の分野に挙って投資しているのだ。最先端の広告は、人々が集まるデジタル空間に場を移し、VRも有力候補ということだ。そうした次世代空間を牛耳るのは果たして誰か――。気付けば、そこには“ウィナーテイクオール”(勝者総取り)の光景が広がりつつある。

1997年に検索技術を中核に生まれたGoogleは、いつしか動画の世界トップシェアを誇る『YouTube』を手中に収め、バナー広告の草分け的な存在だった『ダブルクリック』を買収。PCに人々が集まる時代には、閲覧するブラウザに行動履歴が蓄積されたからこそ、マーケティングの通貨とも言える良質なデータを握って、個人に最適な広告を展開できたGoogleが飛躍してきた。しかし、時代はモバイルへとシフトし、人々はブラウザで検索するよりアプリを使うようになる。Googleもモバイル端末OSの『Android』を手にしたが、アプリだろうとPCだろうと、同じIDでログインするFacebookの価値が一層増している。無論、既存の広告業界プレイヤーも手を拱いてきた訳ではない。世界最大の広告代理店『WPP』は、「タイムマシンで昔に戻ることはできない」と悟ったからか、アメリカのデジタルマーケティング企業を2007年に買収して以降、デジタル化に一気に舵を切った。それもその筈。世界のトップ広告主である『プロクター&ギャンブル(P&G)』や『ユニリーバ』といった巨大企業は、独自にデジタルデータを抱えることでマーケティングの精度を上げ、広告代理店への支払いを削減する意向を明確にしつつあるのだ。インターネット広告の黎明期からこの業界に携わってきた、『デジタルインテリジェンス』代表取締役の横山隆治氏は、「FacebookやGoogle等のプラットフォーマー・広告代理店、そして巨大広告主の3者がデータ保有を巡り、三つ巴の鬩ぎ合いを展開している」と指摘する。翻って日本。歴史を振り返れば、広告代理店のビジネスは新聞の広告枠販売に始まり、テレビという圧倒的なパワーを誇るメディアと共に、揺るぎ無い地位と日本独自の商習慣を100年かけて築いてきた。支配者たちが富を分け合う寡占化した世界があったのだ。しかし、そこにも例外無くデジタル化とグローバル化の波は押し寄せ、牧歌的な時代は愈々終わりを告げようとしている。「世界のデジタル広告の利益の半分以上は、巨大プラットフォーマーのものになっている。昔のほうがずっと公平だった」と大手広告代理店関係者は振り返る。国境を超えたスーパーパワーの出現に依って、広告も他業界と同様に勝者総取りの世界へと向かい出した。極少数のグローバル企業だけが君臨する独占に依って、“ゲームオーバー”が告げられる――。これが、広告を巡る“戦争”の結末なのかもしれない。 =おわり

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池田光史・後藤直義・小島健志(データ担当)が担当しました。

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『ザ・アドテクノロジー』という本があります。そのタイトル通り、広告技術の基礎的な仕組みからその歴史を解説した1冊です。特集取材に当たり何度も読み返し、一部をノートに書き写しては、脳味噌に染み込ませようとしました。その執筆陣に入っている元Googleの社員で、現在は『アタラ合同会社』を経営する杉原剛さん・有園有一さんのお2人には何度も時間を割いてもらい、取り留めも無い疑問を受け止めてもらいました。人の欲求を見抜いて、そこに訴えかける広告ビジネスは、科学やデータとクリエイティブが複雑な商流の中で掛け合わさった世界です。そこを取材するヒントを下さった全ての関係者の皆様に、ここで感謝申し上げます。 (後藤直義)

ウェブサイトを閲覧したら、矢鱈似たような広告が目に飛び込んでくることがあります。私も最近、「やけに旅行絡みの表示が多いな」とは思っていました。元々関心があるテーマだったので、それほど不快には感じていませんでしたが、その裏側では私に広告を出したい企業が入札し、“私”を競り落としていたことを、今回の特集『広告戦争』で初めて知りました。どんな仕組みになっているかは中をお読み頂きたいのですが、0.1秒で売買が成立しているのだから、まさに瞬き並みのスピード。気付く筈もありません。ところで今、一番気になっているのは、「私の“値段”は一体幾らなのか?」ということです。 (本誌編集長 田中博)


キャプチャ  2015年7月11日号掲載


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【広告戦争・デジタル空間の覇権を巡る人脈と金脈】(06) 人工知能が生み出す新しいメディアと“金の卵”

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昨年12月、国内約450万人の月間ユーザーを抱える人気ニュースアプリ『スマートニュース』のオフィス内では、数学者の森田真生氏を招いたクリスマス講演会が開かれていた。そこでは、天才数学者のアラン・チューリング(1912~1954年)の功績や人生について、エンジニアやマーケティング担当者等が熱心に耳を傾けていた。チューリングといえば、人工知能の“父親”として名を残している人物だ。第2次世界大戦中には暗号解読の仕事に従事し、ナチスドイツが開発した暗号装置『エニグマ』の完全解読に成功。2014年に全米公開されたハリウッド映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』を始め、数多くの小説や映画のモデルにもなった伝説の数学者だ。勉強会だけではない。同社の社員たちは、その後もチューリングが執筆した原文等の読書会を定期的に開いている。更に、仕事場にオーダーメイドの本棚を設けるプロジェクトが進んでおり、そこに並べる書物として先ず、チューリングについて書かれた国内外の書籍や論文を取り寄せている。「社内では、半田鏝を使って暗号装置『エニグマ』のミニチュアまで作ってしまった」(同社社員)

何故、新興のITベンチャーがチューリングにここまで時間と情熱を注いでいるのか? そこには、大きく2つの理由がある。1つ目が、創業者である鈴木健共同CEOの強い思い入れだ。世の中を変える革新的なサービスを生み出すには、とりわけデジタル化の歴史の中で、偉業を成し遂げた人物への洞察が欠かせないと考えているからだ。2つ目が、スマートニュースのアプリが、人工知能で“武装化”したニュース配信と広告をビジネスの中核としているからだ。左図は、同社がインターネット上に散らばる無数のニュース記事を収集・配信している仕組みを表したものだ。ユーザーを魅了するコンテンツを人工知能に依って選び出すことで、より長時間アプリを使ってもらおうというのが基本的な考え方だ。スマートニュースのシステム運営に携わる人数はとても少ない。人工知能担当のエンジニアが5人おり、殆どの手順をコンピューターで自動化してきたからだ。彼らが構築したシステムが、毎日インターネット上で生まれた約1000万件のコンテンツを自動的に収集し、その数を“1万分の1”にまで絞り、その日のニュースラインナップとしてユーザーに届ける。ニュースはクラウド上のサーバーが片っ端から文字データとして読み込み、話題性や重要性に依ってスコアを付けていく。採点基準は非公開だが、『Facebook』の“いいね!”の数や『twitter』『LINE』等のインターネット上でどれだけ広く話題になっているか、また速報性はあるか等、複数の指標を加味してランキングしている。これに依って、「ユーザーが今読むべき」というコンテンツの優先順位が決まる。無論、悪質と判定したコンテンツはブラックリスト化されて外される。加えて、どの言語で書かれたかという“言語判定”や、ニュースのジャンルを分類する“カテゴリー判定”という機能でどんどん記事を仕分けていく。重複ニュースの除外、ユーザーがより頻繁にタップする記事の重要性を上げる処理をして、漸く上位約1000件のみスマートフォンの画面に流れ込むのだ。

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【広告戦争・デジタル空間の覇権を巡る人脈と金脈】(05) 皆さん、テレビCMって効果あるんですか?――業界BIG3が語る視聴率の真実

「デジタル広告時代に入り、テレビCMの効果はあるのか?」――。そんな広告主の疑問に、ヤフー・グーグル・電通のキーマン3人が答えた。

「我々がモルモットになって、新しいプランを提案します!」――。2012年秋、国内インターネット広告最大手『ヤフー』の宮坂学社長は、広告業界のイベントで“モルモット宣言”を行った。モバイルの普及と動画広告の浸透に依り、広告主は「デジタル広告費を幾ら確保すればよいのかわからない」という悩みを抱えていた。広告枠を持つ“媒体”に過ぎなかったヤフー自らが数百億円の予算を投入する“広告主”へと変貌し、テレビ広告とデジタル広告の予算比における最適解を探る“実験動物”になったのだ。それを一手に担ったのが、マーケティング&コミュニケーション本部本部長の友澤大輔氏である。

友澤「元々、リクルートや楽天等でデジタルマーケティングの仕事を行ってきました。ですが、最大手のヤフーがデータを出さない為、デジタル広告の効果を測ることが難しかったのです。2012年にヤフーに入社し、立場が変わりました。ヤフーのテレビCMを打ったり、サイトの広告枠に自社広告を載せたりしてデータを取ることができました。こうした“実験”を繰り返した結果、ある1つの解に辿り着いたのです。それが、テレビ広告7に対してデジタル広告3の予算配分こそが最適だという予算比です。実際、家電メーカーとブランド認知や来店意向に影響があるのかを実験したところ、何れも調査前に比べて2倍の効果が出たのです」

“テレビ7対デジタル3”という黄金比を発見したというヤフー。だが、広告代理店最大手の『電通』で長年この難問に挑んできた統合データ・ソリューションセンターメディアインテリジェンス開発部部長の松永久氏は首を傾げる。

松永「戦略に依って当然、比率は異なりますが、ブランドや広告を覚えてもらうこと(認知)を目的とするならば、デジタル広告の予算比は経験上、5~20%の範囲で配分されることが多いです。広告は、深く認知してもらうことが重要です。というのも、『○○といえば何か』とカテゴリー調査をすれば、特定のブランドが思い浮かぶ率とその売り上げには、高い正の相関関係があるからです。大画面で音を利用できるテレビは強い印象を与えることで、長い間ブランドを思い出させることができる為、ブランドの長期的な売り上げに繋がります。投資収益率も良く、“王様”の地位にあると言えるでしょう。他方、検索連動型広告等で顧客の獲得を主とする広告主の場合は、比率が逆転する時もあります」

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【広告戦争・デジタル空間の覇権を巡る人脈と金脈】(04) モバイルで嫌われる広告…クリエイティブに力はあるか?

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史上初の“実験”を前に、会議室はどこか緊張ムードに包まれていた。「今夜も、LINEで相談してくれたあなたの元に、パッソが駆け付けます」――。6月27日、『トヨタ自動車』の一風変わったデジタル広告が、8日間の期間限定で開始された。その名も、『ドライブ人生相談しずカー』。悩める女性がトヨタのLINE公式アカウントに相談を投稿すると、選ばれた人の元に“人生の先輩”であるタレントがトヨタ車で実際に駆け付けてくれるというもの。トヨタのテレビCM“実写版・ドラえもん”シリーズの連動企画で、今回は20~30代の若い女性をターゲットにしたトヨタの車種『パッソ』の特別仕様車の広告キャンペーンだ。“若者の車離れ”が叫ばれて久しい中、トヨタの悩みは深い。車に全く興味が無い人たちに対し、先ずは商品を好きになってもらうべく、トヨタはこの特別仕様車でもテレビCMを打って広く認知を図っている。ところが、最近では若い女性は特にテレビを見なくなってきている。彼女たちが代わりに何を見ているかといえば、スマートフォンだ。そこで、テレビでは届かなくなってきた層にスマホでリーチできるメディアとして、大手広告代理店も注目しているのがLINEの広告商品なのだ。2012年にLINEが開始した公式アカウントサービスは、多くのユーザーにリーチが可能で、大企業に好評を博している。トヨタの場合、無料スタンプの提供で繋がったユーザー数は約1700万人。ざっと『朝日新聞』(約740万部)と『読売新聞』(約950万部)を足したリーチ力を誇るから凄まじい。「媒体として魅力を感じている」と、『トヨタマーケティングジャパン』の長嶋久子氏の手応えは上々だ。更に今回は、2014年2月にLINEが発表した新サービス“ビジネスコネクト”を活用。従来のように、公式アカウントで1700万人に同じ情報を一斉送信するのではなく、広告主が自社システムと連携することで、位置情報等に基づきユーザー毎に個別のやり取りが可能となる。これをリアルタイムの『ドライブ人生相談』に応用するという前代未聞の試みだったが、相談件数は初日だけでも実に7万件を突破。そして、その現場を指揮していたのが、デジタルクリエイター集団『PARTY』のクリエイティブディレクターである中村洋基だ。デジタル空間で如何なるクリエイティブを発揮できるか、最前線で挑戦を続けている人物である。

デジタル化の荒波に呑まれつつある広告業界にあって、大手広告代理店の関係者たちは決まってこう言う。「ディスプレイ広告で覚えているものなんてありますか? クリエイティブのインパクトでテレビCMに勝るものは、デジタルの世界には存在しないんです」。デジタル広告は、兎角クリック率やコンバージョン率といった効果指標で語られることが多く、ブランド広告という意味ではテレビの力が健在という訳だ。効率的だがインパクトに劣るデジタル広告は、謂わば“クリエイテイブ無きサイエンス”。一方、効果はよくわからないが印象には残るテレビCMは、“サイエンス無きクリエイティブ”とも言える。しかし、テレビだけでは広くリーチし難くなってきた今、新たに台頭しているモバイルで質の高い広告を出し、ブランディングに活用することが、大企業が共通して認識する喫緊の課題だ。そうした中、クリエイターである中村の口から出てきたのは意外な一言だ。「効率を求めるなら、面白くはないけどアドテク(ノロジー)が一番いい。クリエイテイブを生業にしている人からすれば辛い時代ですね」。中村がそうした考えに至った背景には、電通時代に自ら只管クリエイティブを追求したバナー広告での経験がある。「兎角邪魔がられるバナー広告でも、もっと面白いことができるんじゃないか」――。中村が手掛けた斬新なバナー広告は数知れず、2006年には公共広告機構の『エイズ検査を受けよう』キャンペーンのバナー広告でカンヌ国際広告祭金賞を受賞。電通では、“バナーの中村”の異名を持つほどだった。ところが、「世の中はそんなに面白いものを求めていない」という厳しい現実を突き付けられる。「ヤフージャパンの調査で、面白いと思っていたバナー広告より、単純な表現の方が効果で勝ったんです」。以降、バナー広告を作る時には効率化しか考えなくなった。

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